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生物多様性保全
生物多様性/森林減少及び土地転換なし(Deforestation and Conversion Free)へのコミットメント
積水ハウスは、「サステナビリティビジョン2050」*1において、2050年のチャレンジ目標として、No Net Loss(生態系の価値を損なわない)だけでなく、ネイチャー・ポジティブ(事業によって生態系の価値を高める)も目的として「事業を通じた生態系ネットワークの最大化」を掲げ、地域の生態系に配慮した造園緑化事業「5本の樹」計画と持続可能な木材調達「フェアウッド」に注力しています。
特に、木材調達においては、森林減少が世界的な喫緊の課題として認識されています。2014年の「森林に関するニューヨーク宣言」で「2030年までの森林減少ゼロ(ゼロ・デフォレステーション)達成」という考えが採択され、2021年のCOP26にて日本を含む140以上の国と地域によってあらためて合意されました。当社グループでも「フェアウッド」調達の考えに沿う森林減少ゼロの考えに賛同し、「サステナビリティビジョン2050」におけるグループ全社を対象とした2050年のチャレンジ目標の中で、森林減少・土地転換ゼロ(Deforestation and Conversion Free:DCF)の宣言を行っています。なお、当社グループではサプライヤー、2次サプライヤーも含めDCFとなる将来を目指しています。
生物多様性保全の推進
生態系に配慮した造園緑化事業「5本の樹」計画*2
全国で数多くの樹木を植栽している日本最大規模の造園業者でもある当社は、多くの住宅を供給するハウスメーカーの責任として、住宅事業を通じた生物多様性保全に向け、2001年から生態系に配慮した造園緑化事業「5本の樹」計画を進めています。
「5本の樹」計画とは、「3本は鳥のために、2本は蝶のために、地域の在来樹種を」との想いを込め、地域の在来種の中でも、特に鳥や蝶との関係が深く、庭木として利用可能な樹木を「5本の樹」と定めて、その樹木を中心に庭木の提案を行うものです。生物多様性保全とともに、生きものが庭に訪れることの生活者に対するメリットや、庭木の効果なども含めた提案を行っており、「5本の樹」計画でつくる住宅の庭が都市に質の高い緑地を増やし、生きものの生息や活動を支えて、生態系ネットワークを維持・復活させること(ネイチャー・ポジティブ)を狙いの一つとしています。生態系ネットワークは地域の、そして各国の生物多様性を豊かにし、生きもののみならず、住まい手も同時に自然の豊かさを享受することができる場所をつくり出します。
「5本の樹」計画は、2001年の取り組み開始から2026年3月1日で25周年を迎えました。これまで全国のお客様にご賛同・ご協力をいただきながら活動を継続してきた結果、2025年度の年間植栽本数は74.5万本に達し、累積植栽本数は2,143万本となりました。25周年という節目を迎えるにあたり、これまでの歩みへの感謝を胸に、2030年に向けたネイチャー・ポジティブの実現に向けて、取り組みをさらに加速してまいります。
*2 「5本の樹」計画
「5本の樹」から始まる一つひとつの小さな取り組みが、やがて大きな幸せを社会へと広げていく力へ育っていくという願いを込め制作した新たなロゴ。 地域の在来樹種を中心に、自然と調和した植栽を積み重ねることで、人と自然、そして地域社会のつながりを育み、生きものが集う豊かな生態系を次世代へとつないでいく。その積み重ねが暮らしを支え、地域に潤いをもたらし、未来の幸せへと循環していく――。人も自然も地域も、ともに幸せになれる未来への願いと決意を、このロゴに託しました。
造園緑化事業を通じた生物多様性保全
| 集計範囲 | 単位 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 | 目標 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
|
生物多様性に 配慮した植栽 |
積水ハウス(株) | 千本 | 19,840 | 20,691 | 21,436 |
22,000 (2025年度) |
生物多様性ビッグデータ*3の活用による定量的な実効性評価
2019年に、それまで評価できなかった全国に点在している小さな緑地の総合評価を行うため、琉球大学理学部久保田康裕研究室の協力のもと、生物多様性保全に関する定量的な実効性評価をマクロな視点で分析する共同検証を開始しました。積水ハウスが植樹した樹木本数・樹種・位置情報の蓄積データに加えて、株式会社シンク・ネイチャーが保有する生物多様性ビッグデータを活用することで、2021年には「5本の樹」計画による生物多様性への効果を、住宅地に呼び込む鳥や蝶の種数として定量的に表すことが可能となりました。
さらに、三大都市圏(関東・近畿・中京)における生物多様性の回復効果を多様度統合指数として定量的に実効性を評価するとともに、「5本の樹」計画を継続した場合の2070年までのシミュレーションを行いました*4。これにより、「5本の樹」計画が生物多様性の回復に貢献できること、今後計画を拡大することでさらに効果が大きくなることが分かりました。当社は、この検証結果だけでなく、20年間の活動を通じて蓄積したノウハウも広く開示し、多くの企業や個人の方々とともにネイチャー・ポジティブに取り組んでいきます。
当社の生物多様性保全への取り組みをさらに加速させるため、2023年7月には、「生物多様性ネットゲインと算出方法の標準化」を目指し、株式会社シンク・ネイチャーと共同で推進する連携協定を結びました*5。2024年6月にはお客様の庭における生物多様性保全効果を最大化できる樹木等を提案するツール「生物多様性可視化提案ツール」を共同開発し、試験運用を開始しました*6。これまでの生態系に配慮した「5本の樹」計画の質をさらに向上させ、2030年ネイチャー・ポジティブへの取り組みを加速していきます。
*3 世界の陸域・海域の30万種以上の生物分布データに基づく生物多様性の重要性をはじめ、150以上の自然資本・生態系サービスをカバーするデータ群
*4 ニュースリリース:お客様と共に20年、「5本の樹」計画で都市の生物多様性保全推進
*5 ニュースリリース:「生物多様性ネットゲイン(純増)」と算出方法の標準化に向け、積水ハウスとシンク・ネイチャーが共同推進を開始
ニュースリリース:積水ハウスとシンク・ネイチャー生物多様性可視化提案ツールを共同開発、試験運用開始~住宅の植栽提案でネイチャー・ポジティブの効果を可視化~
*6 生物多様性可視化提案ツール:2026年4月から全国の事業所での運用が始まることを機に、ネイチャーポジティブへの道しるべとなるよう思いを込めて、名称を“「5本の樹」コンパス”へ変更しました。
「5本の樹」計画の取り組み結果
「5本の樹」計画は、生物多様性の基盤となる樹の種類を10倍に
ビッグデータ分析結果 「鳥類にとっての効果」
「5本の樹」計画により住宅地に約2倍の種類の鳥を呼び込む効果
ビッグデータ分析結果 「蝶類にとっての効果」
「5本の樹」計画により住宅地に約5倍の種類の蝶を呼び込む効果
ネイチャー・ポジティブを定量評価
緑地の劣化が著しい三大都市圏(関東・近畿・中京)の2070年までの変動をシミュレーション
都市部緑化
生物多様性ビッグデータによると、住宅が立ち並び多くの人々が生活する都市部も、里山や森林などの自然エリアと同様に、生物多様性保全を考えるうえで重要なエリアであることが分かりました。緑地にできる面積が少ない都市部においては、質の高い緑地をつくることが重要です。積水ハウスは、これまでも地域の在来樹種を中心とした「5本の樹」計画によって、生物多様性保全に大きな効果を発揮する質の高い緑地を提供してきました。業界全体で取り組みを加速させるため、2024年9月には旭化成ホームズ株式会社、大和ハウス工業株式会社とともに3社共同で、株式会社シンク・ネイチャーの分析のもと、在来樹種による都市の生物多様性保全効果の実効性評価を行いました。その結果、それぞれの緑化コンセプトが結果的に生物多様性の多面的な要素を効果的に再生させることがわかりました。
まちづくり・分譲マンションにおける緑化の推進と環境保全
グランドメゾンThe山手Project
分譲マンション事業のエクステリアでも、「5本の樹」計画の手法を活かしています。マンションブランド「グランドメゾン*7」でも緑化を常に意識し、敷地面積に対する植栽面積の割合を示す緑被率を、概ね20%以上とすることを目標に事業を推進しています。2025年度に竣工した分譲マンション12棟の平均緑被率は15.7%、緑被面積は6,871m2でした。
横浜山手の歴史と自然を未来へつなぐ「グランドメゾンThe山手Project」。積水ハウスの東京マンション事業部が手掛けた本プロジェクトは、横浜山手の歴史ある街並みに調和しながら自然共生を重視した、低層マンション群(全6棟・74戸)です。敷地計画には「5本の樹」計画を採用し、地域の生態系に配慮した植栽を導入。鳥や蝶など生きものが集う緑豊かな空間を創出し、生物多様性の保全に貢献しています。前庭や屋外ベンチなど、訪れる人々にも開かれた設えを整え、まち全体の景観形成と自然との共生を実現しました。建物スケールや素材選定にもこだわり、かつて洋館が立ち並んでいた山手の趣を再現。歴史への敬意と地元愛を軸に、地域資産として次の100年にわたり愛される存在を目指しています。こうした取り組みが評価され、2025年にはグッドデザイン賞を受賞しました。当社は、ESG経営の理念に基づき、都市における自然共生型のまちづくりをこれからも推進していきます。
*7 グランドメゾン
経年美化のまちづくり
コモンシティ星田
積水ハウスは、2001年に「5本の樹」計画を開始し、生態系に配慮した在来種植栽を念頭に緑の質にこだわったまちづくりを進めています。2005年には、当社のまちづくりの中で培ってきた「5本の樹」計画をはじめとしたさまざまなノウハウを、持続可能性の考えに基づいて表現した「まちづくり憲章」*8を制定しました。
大阪府交野市、七夕伝説発祥の地に誕生した「コモンシティ星田」は、積水ハウスの歴史に残る大型分譲地として1991年にまちびらきを迎えました。総面積25.6ha、約840戸が暮らすこの街は、大阪府初のコンペ方式によるまちづくりで、無電柱化や緑化推進など当時革新的な取り組みを実現。四季折々の自然と調和した景観は、住民主体の「建築協定委員会」や「まちなみ保全委員会」による活動で今も維持され、経年美化を重ねています。積水ハウスグループは「ふれあいプラザ」を拠点に、自治会との連携や地域イベントへの参画を継続。近年は「星田10days」や「コモンシティ星田Cafe」を通じ、住まいの相談から歴史共有まで幅広い交流を深めています。「5本の樹」計画をはじめ、生態系・生物多様性・自然共生の理念を体現するこの街で、積水ハウスグループは住民とともに、成熟したまちの未来を見据えた活動を進めています。
*8 まちづくり憲章
グリーンフィールド開発に関連するコミットメント
「多摩ニュータウン東山」分譲地(東京都八王子)はグリーンフィールドを開発した事例で、環境アセスメントを進め「既存の森を残しつつ、残せない場所の木は移植する」「小さな苗木も大切に保管しまちの色々な場所に植える」など、当社「まちづくり憲章」のコミットメントに沿った地域の生態系の保全、育成に配慮した開発を行っています。
また、グリーンフィールドの中でも農地の場合、当社基準により宅地開発可能なグリーンフィールドを選定し、当社「5本の樹」計画に沿った街並みづくりを推奨し、地域の生態系や環境に配慮しています。
持続可能な木材調達の推進
木材調達方針と木材調達ガイドライン
当社では2007年より業界に先駆け「木材調達ガイドライン」を制定し、持続可能な木材「フェアウッド」調達を推進してきましたが、当社の姿勢をより明確にするため、「木材調達方針」の新設ならびに「木材調達ガイドライン」の改定を行い、2025年8月1日に公開しました。
木材調達方針においては、従来より表明していたフェアウッド調達の推進に加え、森林減少・土地転換ゼロ(Deforestation and Conversion Free:DCF)の2030年までの達成や人権侵害を一切認めない姿勢をあらためて明言し、これに合わせ「木材調達ガイドライン」10の指針に関しても、森林減少・土地転換ゼロに加え、FPIC*9の尊重など、より具体的な表現に改定を行いました。
合法であることはもちろん、持続可能性や地域の発展に貢献する木材を「フェアウッド」と定義しています。当社は、木材調達方針において「フェアウッド」調達を優先することを宣言しており、FoE Japanをはじめとした国際環境NGOや業界関係者とのエンゲージメントを通して、調達レベルの向上を図っています。例えば環境NGOとは、高リスク地域の最新情報を入手しリスク評価方法をアップデートするなどの活動を常に行っています。
フェアウッド調達の目的は、当社にとっての持続可能な再生可能資源の安定的確保に加え、日本有数の木材消費者の立場からサプライチェーンに対する継続した働きかけを行うことで、違法伐採の回避を超えた持続可能な林業経営によるポジティブ・インパクトを実現することです。これは、当社が掲げる「事業を通じて生態系ネットワークを最大化する」という生物多様性保全のチャレンジ目標にも沿うものです。
*9 FPIC(Free,Prior Informed Consent)自由意思による、事前の十分な情報に基づく同意
「木材調達方針」3つの基本方針(2025年8月1日改訂版)
- 環境に配慮し、社会的に公正な「フェアウッド」の調達に努めます
- 2020年をカットオフ日*10とし、森林減少及び土地転換なし(Deforestation and Conversion Free)を2030年までに達成します
- サプライチェーンにおけるあらゆる紛争や人権侵害を一切認めません
「木材調達ガイドライン」10の指針(2025年8月1日改訂版)
- 合法性が担保され、デュー・ディリジェンスなどで伐採地までサプライチェーンが確認できる木材
- 高い保護価値(HCV*11)の毀損を伴わない森林から産出された木材
- 自然林の伐採により生物多様性毀損、森林減少を引き起こしている地域以外から産出された木材
- 絶滅が危惧されている樹種以外の木材
- 生産・加工・輸送工程におけるCO2排出削減に配慮した木材
- FPICを尊重し、サプライチェーン上で紛争や人権侵害が発生していない木材
- 森林の回復速度を超えない計画的な伐採が行われている地域から産出された木
- 計画的な森林経営に取り組み生態系保全に寄与する国産木材
- HCS*12の毀損や森林の他用途転換に由来しない木材
- 資源循環やカスケード利用に貢献する木質建材
*10 カットオフ日(Cutoff Date):森林減少や自然生態系の転換が許容されない起点となる基準。カットオフ日以降に森林減少や転換が起きた場合、方針や目標に反することとなる。
*11 HCV(High Conservation Value):社会的・文化的・環境的に重要な、高い保護価値
*12 HCS(High Carbon Stock):炭素貯蔵が極めて高い地域(泥炭地も含む)
木材調達におけるリスク調査と評価
積水ハウスでは主要木材サプライヤー(約60社)に対して「木材調達調査」を、以下のプロセスで実施しています。
2030年の自然林における森林減少ゼロの達成に向け、当社ではこれまで2023年度よりゼロ・デフォレステーション比率をKPIとして設定してきました。
しかし、近年の国際的なサステナビリティ基準の動向やステークホルダーの期待の高まりを踏まえ、2025年度からはKPIを「森林減少および土地転換なし(DeforestationandConversionFree:以下、DCF)比率」へと変更し、その進捗を管理しています。
Sランク、Aランク*13材比率に関しては、木材調達ガイドライン運用前(2006年度)の47%から上昇を続け、2025年度は97.1%となりました。一方で、DCF(森林減少・土地転換ゼロ)比率に関しては95.8%となりました。
「木材調達調査」によるリスク評価において、評価結果から環境面でのリスクが発見された取引先に対しては、個別に詳細なデュー・ディリジェンス*14(以下、DD)を行ったうえで、継続して評価基準や到達度に関するモニタリングを行っています。
また、DDの過程において重大なリスクが発見された場合は、関連部署と協議して適切に対応するとともに、調達先評価の結果により取引縮小などの措置を取ることを規定しています。なお、2025年度にリスクが高いと判定したサプライヤーはありませんでした。
*13 当社独自の「木材調達ガイドライン」の合計点で評価対象の木材調達レベルを高いものから順にS・A・B・Cの4つに分類。43点満点で、34点以上をSランク、26点以上をAランク、17点以上をBランク、17点未満をCランクとしています。「木材調達ガイドライン」10の指針の中で特に重視している①と④に関しては、ボーダーラインを設定。なお、本指標をネットポジティブインパクト、ノーネットロスの実現に向けた指標と認識し集計・開示しています。
*14 デュー・ディリジェンスとは、企業などに要求される当然に実施すべき注意義務および努力のこと。欧米諸国における違法伐採木材の取り扱い規制強化に端を発し、日本でも、「合法伐採木材等の流通および利用の促進に関する法律」(通称:クリーンウッド法)において、DDに関し言及されています。現在、ESGリスクも含めた木材調達DDを実施する企業が増えており、違法リスクを確認するための①情報収集、②リスク評価、③リスク緩和というプロセスで表すことができます。
「木材調達調査」(デュー・ディリジェンス:DD)の基本的なプロセス(毎年実施)
木材調達における生物多様性保全
| 単位 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 | 目標 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 木材調達量 | ㎡ | 237,061 | 230,691 | 223,373 | ー | |
|
持続可能な木材調達比率 (SA材比率) |
% | 97.2 | 97.1 | 97.1 |
97.5 (2025年度) |
|
| DCF(森林減少・土地転換ゼロ)比率*15 | % | 89.8 | 92.5 | 95.8 |
93.0 (2025年度) |
|
| 伐採地別割合 | 国産材 | % | 26.12 | 28.37 | 31.87 | ー |
| 東アジア*16 | 7.54 | 8.06 | 8.07 | ー | ||
| 欧州 | 33.55 | 31.67 | 32.16 | ー | ||
| 南洋*17 | 12.75 | 12.31 | 11.37 | ー | ||
| 北米 | 9.59 | 7.73 | 4.61 | ー | ||
| 再生材*18 | 10.18 | 11.70 | 11.75 | ー | ||
| その他*19 | 0.27 | 0.15 | 0.17 | ー | ||
*15 指標以外の目標設定として、国際的なサステナビリティ基準やステークホルダーの期待を踏まえ、木材調達方針に掲げております、従前のゼロ・デフォレステーション比率から、2030年の天然林における森林減少及び土地転換なし(Deforestation and Conversion Free:DCF)比率を、2025年度よりKPIとして設定し、進捗を管理しています。
*16 日本を除く
*17 インドネシア、マレーシアなど
*18 再生材:パーティクルボードなど、建築廃材等から再生した木質建材
*19 アフリカなど
木材調達におけるデュー・ディリジェンスの徹底
積水ハウスではデュー・ディリジェンス(以下、DD)を「事業の将来性を支える持続可能な木材を確保するプロセス」であると考え、厳格なDDを通して持続可能な木材調達を実施しています。
DDに関しては、1次サプライヤーの低リスク材のみを対象としている企業も少なくない中、当社は2次よりも上流のサプライヤーも対象とし、リスクが払拭できない場合は伐採地を訪問し、確認、調査を行っています。これは国際的に要請されているDCF(森林減少・土地転換ゼロ)を実現するために、サプライヤーと追跡プロセスを共有し継続して改善に努めていくことが重要と捉えているからです。
海外オンサイトデュー・ディリジェンスの実施
木材調達における高リスク地域に対するオンサイトDDの実施は、「木材調達方針」では判断できなかったリスクの把握や現地状況の確認だけではなく、サプライヤーや環境NGOなど多様なステークホルダーとのエンゲージメントを強化するうえでも有効であると認識しています。2025年度は、2024年度のインドネシアでの内装部材用原材料のDDに引き続きタイおよびベトナムにて内装部材用原材料のDDを行いました。伐採地や原材料の製造工場の訪問により、森林減少・土地転換ゼロに加担していないことを確認したほか、サプライチェーンにおける人権侵害に関するヒアリングを行い、人権侵害が行われていない事を確認しました。
森林認証(CoC認証)の取得
当社では「フェアウッド調達」を推進する手段の一つとして、森林認証制度の活用を行っており、生産調達部門において、FSC®*20、PEFC*21、SGEC*22のCOC認証を取得しています。
認証の詳細(FSC認証 FSC®-C195799)
| 認証取得組織 | 生産調達本部・東北工場・関東工場・静岡工場・山口工場 |
|---|---|
| 認証番号 | SGSHK-COC-350922 |
| 認証取得日 | 2024年1月19日 |
| 認証機関 | SGS Hong Kong |
*20 FSC(Forest Stewardship CouncilⓇ:森林管理協議会):責任ある森林管理を世界に広めることを目的とする国際的な非営利団体
認証の詳細(PEFC認証)
| 認証取得組織 | 生産調達本部・東北工場・関東工場・静岡工場・山口工場 |
|---|---|
| 認証番号 | FAM-PEFC-COC-039 |
| 認証取得日 | 2022年5月15日 |
| 認証機関 | 合同会社もりの審査 |
*21 PEFC(Programme for the Endorsement of Forest Certification Schemes):持続可能な森林管理のための「政府間プロセス基準」をもとに、世界各国の認証制度と相互承認を行う国際認証組織。
認証の詳細(SGEC認証)
| 認証取得組織 | 生産調達本部・東北工場・関東工場・静岡工場・山口工場 |
|---|---|
| 認証番号 | FAM-SGEC-COC-039 |
| 認証取得日 | 2022年5月15日 |
| 認証機関 | 合同会社もりの審査 |
*22 SGEC(Sustainable Green Ecosystem Council:緑の循環認証会議):日本独自の森林認証制度として発足。2016年PEFCと相互承認
サプライチェーン・エンゲージメント
2025年度に改定を行った「木材調達方針」ならび「木材調達ガイドライン」に関して、社内外のステークホルダーに広く理解いただくため、2025年8月に説明会を実施しました。目標達成に向け共に進んでいくサプライヤーにおいては、67社に参加いただきました。
基調講演に国際環境NGO FoE Japanから講師をお迎えし、木材調達における最新の情報を共有したほか、当社の方針、ガイドラインの説明を行い、関係者間の理解を深めました。
当社のフェアウッド調達の目標達成に向けてサプライヤーとともに取り組みを推進していくにあたり、デュー・ディリジェンスを含むサプライチェーンマネジメントの手法だけでは解決が難しい問題に直面することが多々あります。そのような場合には、例えば「デュー・ディリジェンスの基準を満たす材料への変更を検討する」などの技術的な議論を含めて、当社とサプライヤーが一体となって組織横断的に対処し、目標達成に向けて取り組んでいます。
その他の取り組み
生物多様性に寄与できる企業緑地と「自然共生サイト」認定取得
「新・里山」「希望の壁」を西側から望む
積水ハウスが本社を構える梅田スカイビル(大阪市北区)の北側にある、2006年にリガーデンした「新・里山」(約8,000㎥)では、「5本の樹」計画の考え方に基づいた在来樹種を中心に500本を超える中高木と、200種類以上の低木・草花を植栽し、緑地をつくっています。
空間形状の多彩さが生態系の豊かさを支えると考え、棚田や畑なども配し、失われつつある日本の原風景「里山」を都心部に再現しています。多種多様な植物が成長したことで緑量も増え、40種以上の野鳥や50種以上の蝶などをはじめとする多くの生きものが訪れ、住み着き、育っています。都会ではあまり見られない猛禽類の飛来も確認されています。
計画だけでなく、管理面においても生態系に配慮しています。例えば、雑草や落葉をすぐに撤去する従来の消費型管理ではなく、里山で行われてきた自然に負荷の少ない循環型の管理を行うことで、土壌生物も豊富になり、食物連鎖の幅を広げることで、たくさんの生きものが生息する緑地をつくっています。
また、「新・里山」の東側には建築家・安藤忠雄氏の発案で高さ9m、長さ78mの巨大な緑化モニュメント「希望の壁」が2013年に完成。都市で拡大しつつある垂直方向への空間緑化の手本となるべく、「5本の樹」計画選定樹種を中心に、約100種類2万本以上の多彩な植物で緑化壁を覆っています。開花時期や葉の色づく時期の異なる植物の計画的配置により、四季に応じて変化する表情を楽しむことができ、「新・里山」とともに生態系の価値を身近に感じることのできる場として、市民やオフィスワーカーに親しまれています。
2023年10月には「新・里山」が、2024年9月には「総合住宅研究所」および隣接する住まいの体験型ミュージアム「Tomorrow’s Life Museum関西」が「自然共生サイト*23」に認定されました。この2か所の認定緑地は、「OECMs*24」として国際データベースに登録されています。また「新・里山」を含む「新梅田シティ」が2025年3月に「TSUNAG-優良緑地確保計画認定制度*25」の最高ランクである、トリプルスターを獲得しました。これらの成果は、当社の企業緑地における「5本の樹」計画が生物多様性保全に貢献していることが認められた結果であり、日本における30by30目標の達成にも寄与する取り組みであると考えています。
*23 自然共生サイト:2022年12月に生物多様性条約第15回締約国会議(CBD-COP15)において、2030年までの新たな世界目標である「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択され、この中で、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする目標(30by30目標)が盛り込まれました。その目標達成のための日本での取り組みが「自然共生サイト(環境省が認定する「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」)」です。
*24 OECMs(OtherEffectivearea-basedConservationMeasures:保護地域以外で生物多様性保全に資する区域):法的根拠のある公的な保護区とは異なる“代替的な保護区施策”のことを意味します。国立公園のように、国が主導して国有地に設置する公的保護区は、保全専用の土地を確保するランドスペアリング型の保全と呼ばれます。しかし、国土の30%以上を保護区にしようとすると、国有地だけでなく民有地も関係してくるので、保全に特化した土地利用や私権制限は実現性がありません。例えば、林地や農地を放棄して保護区にすることや、都市部の私有地を接収して保護区にすることは現実的ではありません。そのため、保全と様々な土地・海域利用との共用を図るランドシェアリング型の保全が注目されています。
*25 TSUNAG-優良緑地確保計画認定制度:都市緑地法に基づき、民間事業者等による良質な緑地確保の取り組みを、国土交通大臣が緑地の「質」と「量」の観点から評価・認定する制度です。日本の都市緑地が世界各国と比較して充実度が低く減少傾向にあること、緑地が持つ機能に対する期待が高まっていることなどを背景に、民間事業者における緑地整備等の取組を促進し、良好な都市環境を形成することを目的として2024年に創設されました。
国産材活用の取り組み
国内の林業に目を向けると、多くの森林が本格的な利用期を迎えている中、さまざまな理由から森林の次世代への更新が進んでおらず、十分な活用ができていない状態が続いています。
国内の林業活性化のためには、森林の次世代への更新を促進する需要の増加と付加価値を生むブランド化の両輪で進める必要があると考え、木造住宅「シャーウッド」に使用する構造材を中心に国産材化を展開しています。
また当社では、単に国産材を用いるのではなく、地域ブランドとして展開しています。お客様のお住まいの地域の木材を採用することで、地産地消、地域経済の活性化に貢献しています。
現在はスギ・ヒノキ・カラマツを展開し、累積出荷棟数も8,500棟を超え、「シャーウッド」を語るうえでなくてはならない構成要素に成長しました。
さらに、当社では、森林認証を取得した企業として、国内における森林認証製品の普及、発展を進めるという主旨に賛同し、2024年度より森林認証促進協議会に加入しました。
産地の焼印を刻印した「シャーウッド」の柱
イニシアティブへの参画
当社は、生物多様性保全の世界的な動きに早くから参画してきました。2008年には、生物多様性条約第9回締約国会議(COP9)で、「ビジネスと生物多様性イニシアティブ」の「リーダーシップ宣言」に先進的日本企業9社のうちの1社として署名しました。
この取り組みの創設メンバーとして当社は、生物多様性条約の3つの目的(「生物多様性の保全」「生物多様性の構成要素の持続可能な利用」「遺伝資源から生じる利益の公正・衡平な配分」)に同意し、この方針のもと、事業の中で生物多様性保全活動の推進*26を継続しています。また、2021年6月に発足したTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)の趣旨に賛同し、2022年2月にTNFDフォーラムへ参画、2024年1月にはTNFD早期採用企業(TNFD Early Adopter)として公表されました。さらに、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で採択された世界目標「30by30」*27達成のために発足した「30by30アライアンス」にも参画し、OECMs登録につながる国内認定「自然共生サイト*28」へも積極的に協力しています。
これらの取り組みは、環境事業部会が管轄し、ESG経営の推進体制*29に基づき、各部門・国内外のグループ会社と連携をとり、先導・推進しています。また、進捗報告や課題・改善提案のフィードバックを通じて、全従業員の理解・浸透を図ります。
*26 生物多様性/森林減少・土地転換ゼロ(Deforestation and Conversion Free)へのコミットメント
*27 30by30:2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャー・ポジティブ)というゴールに向け、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする世界目標
*28 環境省「自然共生サイト」
*29 ESG経営推進体制図
