対談

コロナ禍の今こそ知っておきたい、
クリニックの感染対策。
感染症の時代を乗り切るために、
クリニック建築ができること。

榮留 富美子様

EIDOME Consulting 榮留 富美子様 (感染管理認定看護師)

榮留 富美子様

積水ハウス
CRE事業部 医療・介護事業推進室
吉田 敏明 (一級建築士)

INTRODUCTION

新型コロナウィルス感染症の感染拡大が続く中、クリニックでの感染対策は大きな課題です。そうした状況に、設計・建築の技術はどのように貢献できるのでしょうか。積水ハウス・医療施設建築の専門部署で、多くのクリニックの設計に携わった吉田敏明(よしだ としあき)が、感染対策のスペシャリストであり、自衛隊中央病院で感染制御活動に携わってきた榮留富美子(えいどめ ふみこ)様を迎え、感染対策とクリニック建築のスペシャリストとしての視点で「クリニックの感染対策」について語り合います。

設計の工夫で、ヒューマンエラーを減らしたい。
「クリニック建築における感染対策」の指針
を設定。

吉田:
まず、感染対策のご専門のお立場から、今回の新型コロナウイルス感染症に対する基本的な対処がどういうものか、お話しいただけますか。
榮留:
感染症はウイルスや微生物への対策になるので、手洗いや換気など、いわゆる「標準予防策」を行なうことが基本になります。クリニックや病院に関しては、ウイルスを持ち込まない、持ち込まれても広げない、それを外に持ち出さない、これが基本です。
吉田:
人の行動に頼る部分が多いですね。
榮留:
そうなんです。すべての人に厳格な行動を求めるのはとても難しい。クリニックや病院でクラスターが起きた例がありますが、人の行動を管理しきれず、ヒューマンエラーが起きることに原因があると思います。
吉田:
それに対して、建築でできることは何か、どうすれば効果が出るのか、積水ハウスでは2020年早々にワーキングを設置して、検討を重ねてきました。医療・介護・福祉施設向けの設計運用マニュアル「感染対策編」をつくり、設計の基本を「3つの視点と5つの対策」にまとめ、推奨建材や空調・換気などのガイドラインとしています。
榮留:
感染対策の基本に則って、とてもしっかり考えられていると思います。

建物で考える感染対策:
3つの視点と5つの対策

建物で考える 5つの対策 建物で考える 5つの対策

3つの視点

  • 1.距離を「へだてる」
  • 2.感染源に「ふれない」
  • 3.病原体を「ふやさない」
吉田:
具体的には、「感染対策エリア」とそれ以外を明確にゾーニングし、それぞれの動線を分離して、感染の可能性のある人とそうでない人の交錯を防ぐということを、ひとつひとつの建物に丁寧に落とし込んでいきます。
榮留:
それはとても大事ですね。建物の平面計画によって物理的に分離できれば感染の機会を減らすことができます。「対策3」にある清掃性なども実は重要ですね。クリニックでは限られた数のスタッフで行なうことが多いですから。
吉田:
はい。掃除がしやすいとか、消毒液の場所がわかりやすいとか、そういう細かいところまで配慮することが、建物に関しても必要だと考えています。
榮留:
換気についても考えられていますね。今回の新型コロナウイルス感染症については、当初は社会的な規準がありませんでしたが…。
吉田:
そうなんです。積水ハウスは早くから換気についても社内基準を定め、それをガイドラインとして、感染対策エリアを負圧(マイナス圧)になるよう設計し、他のエリアに汚染された空気が流れてしまうリスクを低減しています。また、病院の様に前室を設けた完全な陰圧室を計画することも可能ですが、感染における様々なフェーズに多様な対応が求められるクリニックにおいては、平常時における感染エリアの使い方も考えて、どこまでの換気レベルを採用するのかの検討も重要なポイントになってきます。
榮留:
差圧をしっかり考えておられるのはとてもいいことだと思います。ところで、クリニックや病院は、意外と窓がない、あっても開かない場合も多いのですが、積水ハウスのクリニックは窓がしっかりありますね。空調だけでなく、窓の設計でも空気の流れを考えておられるのですか。
吉田:
はい。災害などで停電になった場合でも、窓を開けることで換気ができるように考えています。それに、自然光を取り入れることは居心地の良さにも繋がっていると思います。

実際のクリニックで、感染対策を実践。

動線を分けるエントランス

吉田:
こちらは最近完成したクリニックの事例ですが、1階に感染対策エリアを設け、1階の一般外来・内科小児科、2階の婦人科の3つにゾーニングし、それぞれの動線が交わらないように設計しました。
榮留:
エントランスから動線が交わらず、しかも迷わずにそれぞれの場所に行ける空間的な工夫がされていますね。誰もが理解できるようなサインなどと合わせて確実に誘導することはとても大事です。
吉田:
クリニックの場合はスタッフの数も限られているので、複数の出入り口を計画しても適切に管理することが難しくなります。そこで、あえてエントランスはひとつにして、入ったらすぐに動線を完全に分ける。さらに、感染疑いのある方は、ひと組ずつ感染対策エリアに入っていただく方法をご提案しました。建物内は、患者様が迷わず目的の場所に行けるシンプルな平面計画、また、ドクターとスタッフは患者様と交錯することなく、短い距離で目的のエリアに移動できる効率的な動線を計画しています。

感染対策エリアの待合室

榮留:
ドクターや看護師、事務スタッフ、患者様とそのご家族など、それぞれの行動パターンを考えて、クリニックで対応しやすいかたちで感染対策を考えて設計されているのがわかります。特に、小児科がある場合、小さなお子さんは感染症にかかるリスクが高いうえに、なかなかじっとしていない。ひとりで隔離しておくわけにもいかない。親御さんが安心して付き添える、ドクターも無理なく診察や検査ができる、そういう工夫がされているなと思います。
吉田:
空間の使い方も柔軟に変化できるよう考えています。平常時には、感染対策エリアは予防接種や健康診断の場所として使えますし、院内で対処できないくらいの感染状況になった時は、建物の外にテントを張って対応できるようにしています。いろいろなフェーズへの対応を想定してスペースを余らせない工夫も、クリニックでは大切だと考えています。
(※実例の詳細については、こちらをご覧ください)

動線を分けるエントランス

実際のクリニックで、感染対策を実践。

吉田:
こちらは最近完成したクリニックの事例ですが、1階に感染対策エリアを設け、1階の一般外来・内科小児科、2階の婦人科の3つにゾーニングし、それぞれの動線が交わらないように設計しました。
榮留:
エントランスから動線が交わらず、しかも迷わずにそれぞれの場所に行ける空間的な工夫がされていますね。誰もが理解できるようなサインなどと合わせて確実に誘導することはとても大事です。
吉田:
クリニックの場合はスタッフの数も限られているので、複数の出入り口を計画しても適切に管理することが難しくなります。そこで、あえてエントランスはひとつにして、入ったらすぐに動線を完全に分ける。さらに、感染疑いのある方は、ひと組ずつ感染対策エリアに入っていただく方法をご提案しました。建物内は、患者様が迷わず目的の場所に行けるシンプルな平面計画、また、ドクターとスタッフは患者様と交錯することなく、短い距離で目的のエリアに移動できる効率的な動線を計画しています。

感染対策エリアの待合室

榮留:
ドクターや看護師、事務スタッフ、患者様とそのご家族など、それぞれの行動パターンを考えて、クリニックで対応しやすいかたちで感染対策を考えて設計されているのがわかります。特に、小児科がある場合、小さなお子さんは感染症にかかるリスクが高いうえに、なかなかじっとしていない。ひとりで隔離しておくわけにもいかない。親御さんが安心して付き添える、ドクターも無理なく診察や検査ができる、そういう工夫がされているなと思います。
吉田:
空間の使い方も柔軟に変化できるよう考えています。平常時には、感染対策エリアは予防接種や健康診断の場所として使えますし、院内で対処できないくらいの感染状況になった時は、建物の外にテントを張って対応できるようにしています。いろいろなフェーズへの対応を想定してスペースを余らせない工夫も、クリニックでは大切だと考えています。
(※実例の詳細については、こちらをご覧ください)

クリニックごとに最適な設計・感染対策を。
専門部署がある強み。

榮留:
このような感染対策が早い段階からできた理由はなんだと思いますか?
吉田:
積水ハウスでは、医療・介護事業推進室という専門部署を設けていて、私自身もその中で、医療施設を設計しています。また、構造・性能・設備などの専門チームが、私の設計の裏付けとなる建築技術を適宜提供してくれるので、一体となり質の高い医療施設建築を提案できています。この組織体制が、積水ハウスの強みになっていると思います。榮留先生はよくご存知ですが、クリニックというのは診療科目によってまったく設計が異なります。
榮留:
診療機器や設備、必要な空間も、診療科によって違いますね。
吉田:
そうなんです。積水ハウスの中には、各診療科目に精通した設計士が揃っています。また、全国の支店には地域の事情に詳しい営業・設計スタッフもおり、全社で連携してひとつひとつのクリニックを計画しています。たとえば、東京のドクターが故郷に帰って開業するというようなケースでは、東京と建築地両方の支店のスタッフが対応することもあります。
榮留:
専門家集団ということですね。
吉田:
はい。ドクターは、医療に関してはもちろんプロフェッショナルですから、私たちも常に信頼して任せていただけるプロ集団でありたいと思っています。ドクターのご要望は伺いながら、その通りにカタチにするわけではなくて、プロとしての私たちの考えを盛り込んで、将来も見据えた、よりドクターの想いに寄り添えるご提案をします。たくさんのドクターに選んでいただいているのは、そういうところかもしれないと思います。感染対策についても同じで、時間とともに新しい情報が入ってくるので、常に見直し、アップデートしています。
榮留:
ウイルスそのものも、この1年の間にかなり変化しましたから。今回の新型コロナウイルス感染症はワクチンのメドがたちましたが、20年、30年の間には、また違うウイルスが出てくることも考えておいた方がいいですね。感染症には終わりがないと思います。

感染対策の安心をベースに、
質の高い医療空間をつくる。

榮留:
人間は、いろんな原因で体調を崩します。そのときに、身体的な病気はもちろんですが、メンタルも具合が悪いわけです。そういう状態で訪れるのがクリニックですので、心身ともに安心して診ていただける場所であってほしいですね。
吉田:
患者様にとっての安心は大切ですね。積水ハウスは住まいづくりで「人に寄り添う建築」を実践していますが、医療施設建築でも基本は同じ。積水ハウスの建物は、断熱性や耐震性といった基本の品質が非常に高い。それを当然のスペックとして、確実な感染対策、診療しやすい空間や心身ともに安心できる環境づくりに注力できるのも強みだと思います。
榮留:
クリニック建築の感染対策のニーズは、今後もますます増えてくるのではないでしょうか。
吉田:
はい、すでにたくさんのお話をいただいています。感染状況はまだまだ変化するでしょうし、建築の側でも感染対応の資材や機器、システムが次々と誕生しています。それらの効果を見極めつつ、榮留先生をはじめ専門家の方々のお力も借りながら、質の高い医療施設建築をご提案していきたいと思っています。
榮留:
この1年あまり、未知のウイルスに向き合い、資材も不足するなど、クリニックのドクターも大変な努力をされてきたと思います。感染対策がしっかり施された医療施設があって、いいドクターがいて、さらには、いい医療を提供するための資材が潤沢にある、そんな環境が整ってほしいですね。
吉田:
感染症が蔓延する時期でも、クリニックが無理なく機能できるよう、これからもお手伝いしていきたいですね。その意味で、クリニックのBCP(事業継続計画)対応は重要だと思っています。BCP対応の設計ができること、設計したものを建築としてしっかり実践できること。積水ハウスは、そうしたところでも率先して社会に貢献していかなければいけないと思っています。本日はありがとうございました。
榮留 富美子 榮留 富美子

榮留 富美子

陸上自衛隊の看護師として、臨床現場、看護教育、部隊カウンセラーとして勤務。感染症管理認定看護師の資格を取得後、自衛隊中央病院で専従として感染制御活動に携わる。現在は、EIDOME Consultingを設立。日本感染症学会教育委員としての活動や、教育機関、企業のアドバイザーとして活躍。

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