CEOメッセージ
イノベーション&コミュニケーションで
幸せをつくり、歩みつづける積水ハウスグループ
代表取締役兼CEO 社長執行役員
仲井 嘉浩
積水ハウスグループが、描く未来
私たちが描く未来。それは、住まいが人の幸せをつくり出している未来です。
たとえば2050年。住まいが健康を見守り、離れて暮らす家族をつなぎ、新しい体験や学びへと人を送り出していく。住まいの役割は、安らぐ場所、帰る場所から、人の幸せや豊かな感性を育む、よりアクティブな存在へと進化しているかもしれません。私は、住まいにはそこまでの可能性があると信じています。今は夢物語に聞こえるかもしれません。しかし振り返れば、戦後の日本において「安心して暮らせる家」もまた、当時の夢物語だったのではないでしょうか。それでも先人たちは、その実現のため積水ハウスを創業し、住まいの可能性を信じて挑戦を続けてきました。1960年の創業から30年間は「安全・安心」を、その次の30年間は「快適性・環境配慮」を追求してきました。そうした積み重ねがあったからこそ、私たちは今、「健康・つながり・学び」という人生100年時代の幸せにつながる新たな価値に挑戦することができます。
人々の命と財産を守る住まいがそうであったように、私たちが描く未来もまた、いつか当たり前の景色になっていく。その未来を、積水ハウスグループは実現していきます。
誰のために、存在するのか
では、積水ハウスグループは、誰のために存在するのか。長く続いている企業には共通点があります。それは、社会から必要とされる価値を生み出し続けてきたということです。積水ハウスグループの歴史も、まさにその積み重ねでした。お客様に喜んでいただけること。従業員が幸せに働けること。パートナーやサプライヤーの皆さまとともに成長すること。地域社会や株主の皆さまの期待に応え続けること。そのすべてがあって初めて、企業は必要とされ、存在することができます。
近年では、こうした考え方をマルチステークホルダー資本主義と呼ぶようになりました。しかし私たちにとっては、ごく自然な経営のあり方です。なぜなら私たちは、お客様と深く関わり続ける注文住宅を提供してきた会社だからです。そして住まいは、そこに暮らす方の資産であると同時に、社会資本でもあります。だからこそ、誰か一人のためではなく、さまざまな人々の幸せを願い、その期待に応え続けることを創業以来大切にしてきました。
果たし続ける、未来への約束
社会資本である住まいは、適切な維持管理ができるのは当然のこと、長く価値を保ち、美しくなければならないと考えています。耐震技術の進化も、住宅の長寿命化も、ユニバーサルデザインの開発も、経年美化の思想に基づくまちづくりも、その想いのもと、長い年月をかけて取り組んできました。
その歩みの中で、私たちは、美しく良質な住宅ストックを形成するクオリティ・ファースト、豊かな自然環境を守るグリーン・ファースト、そして子どもたちの幸せに貢献するキッズ・ファーストという3つの約束を育んできました。これらは、私たちが超長期にわたり果たし続ける未来への約束であり、住まいを通じてどのような価値を社会に届けていくのかという意志でもあります。子どもたちの幸せについて、これまで考え続けてきたことがあります。それは、子どもは未来の宝だということです。そして、今を生きる一人ひとりの子どもたちに、自分の個性を大切にしながら、感性豊かに、幸せに育ってほしいと願っています。そうした想いから、私たちは、2022年に始めたキッズ絵画コンクールや、2025年に開館したJUNOPARKなどの小さな活動を続けています。
私たちが子どもたちを幸せにするなど、おこがましいことだと思っています。しかし、自分らしく幸せに育っていくための一つの小さなきっかけになれたのだとしたら、これほどうれしいことはありません。それこそが、キッズ・ファーストに込めた想いであり、私たちが未来に向けて果たし続ける約束です。
変革を託された、2018年
私は、2018年に社長に就任しました。創業60年という大きな節目を前にしていた頃です。その時、私の中には一つの問いがありました。積水ハウスグループは、次の時代にどのような価値を生み出していくのか。積水ハウスには、長らく一つの成功モデルを皆で追いかけることで成長してきた時代がありました。そのことを否定するつもりは全くありません。しかし、従来のやり方だけでは前進できないという危機感がありました。
私は、社長に就任した意味を、その変革を託されたのだと受け止めました。ただそれは、積水ハウスグループが積み重ねてきた価値を受け継ぎながら、次の30年も社会から必要とされる企業であり続けること、そして描く未来を実現できる組織へ進化し、次の時代へつないでいくこと。そのための変革です。
そこで私は、構造改革と組織風土改革に力を注いできました。構造改革では、ガバナンス改革や人事制度改革、組織再編や事業構造の見直しなど、最初の数年間で、時に大胆な決断を交えた変革を進めてきました。そして、私が最も大切にしたのが組織風土改革でした。もっとも、それは新しい価値観を持ち込もうとしたわけではありません。むしろ、企業理念「人間愛」に込められた考え方を、もう一度組織の中に取り戻すことでした。長い歴史の中で、私たちはその原点を忘れていた時代もあったからです。
「人間は夫々かけがえのない貴重な存在であると云う認識の下に、相手の幸せを願い、その喜びを我が喜びとする奉仕の心を以って何事も誠実に実践する事である。」その想いを原点として、仲間と力を合わせながら価値を生み出していく。その原点こそが、積水ハウスグループの力になると信じています。経営にとって変革とは、何かを変えることだけではありません。何を守り、何を変えるのかを見極めることでもあります。そして私は、その原点を組織の力にしていきたいと考えていました。
変革を生む、従業員の自律
組織風土改革を進める合言葉として掲げたのが、「イノベーション&コミュニケーション」です。その背景には、お客様に最も近い場所で働く従業員こそが、誰よりもお客様の幸せを考え、新たな価値につながるアイデアを持っているという確信がありました。私自身も、まだ経営に携わる前に、多くの仲間とともに新しい取り組みを生み出してきました。当時は寝る間も惜しんでアイデアを語り合い、チーフアーキテクト制度やシャーメゾン作品コンペなども生まれました。始まりは小さなアイデアに過ぎません。しかし、対話が制度となり、今日の美しい住まいづくりや高付加価値提案につながっています。
未来をつくるのは、現場で生まれるアイデアです。そして多くの従業員は、そのアイデアをすでに持っています。しかし会社として、長い間そのことに気づいていませんでした。従業員が自らの感性や価値観を軸に、アイデアを考え、声に出す。そして、そのアイデアを仲間と磨き上げ、上司が経営へ届け、組織全体の戦略や戦術へとつなげていく。その出発点となるのが、自分のことは自分で決めて、その決断に最後まで責任を持つことを意味する「自律」だと考えていたのです。
実は、その考えは、社長就任よりはるか前から持ち続けていました。2003年に始めたキャリア自律研修も、その一つです。研修では仕事から離れ、自分自身と向き合います。誰かに与えられた正解ではなく、自分の中にある答えを見つけてほしい。そうした想いで、自律の土壌を育んできました。
振り返れば、15年以上をかけてその土壌が育まれていたからこそ、「イノベーション&コミュニケーション」という合言葉も、自然に組織へ浸透していったのだと思います。当時、賛否の声がある中でも、信じて支え続けてくれた上司には今でも感謝しています。そして今、ようやく当時思い描いていた組織へ近づいている手応えを感じています。従業員には、これからもどんどん自律してもらいたい。会社もまた、自律しようとする従業員を惜しみなく支援していきます。
変革のタイミング
変革には、変えるべきことだけでなく、変えるべきタイミングもあります。どれほど正しいことでも、組織が受け入れる準備ができていなければ根付きません。変化を急がせるのではなく、その変化が力になるタイミングを見極めることも、経営の重要な役割だと考えています。
その一例が、プロジェクト手当制度です。営業や設計、現場監督など、お客様に向き合うチーム全体の価値創造を評価する仕組みとして、2026年に導入しました。私は2019年に、この考え方を社内ブログで発信しました。しかし、長らく個の力を重視してきた積水ハウスにおいて、その考えを自然に根付かせるには時間が必要でした。もし2019年に同じ制度を導入していたら、十分な理解は得られなかったかもしれません。しかし今は、多くの従業員がチームでお客様に向き合うことの価値を理解しています。だからこそ、この考え方を制度として形にするタイミングが訪れたのだと思います。
私にとって、この考え方を発信してから制度化するまでの7年間は、決して遠回りではありませんでした。変化に向けて組織の土壌を育み続けてきた時間でもあったからです。経営とは、制度をつくることだけではなく、その制度が自然に根付く環境を育むことでもあるのだと考えています。
問い続ける、組織のあり方
こうしたことを考える中で、ある本をきっかけに、歴史や哲学、アートなど、人間や社会を深く理解するためのリベラルアーツについて考えることが増えました。私は歴史について語れるほど学んでいるわけではありません。ただ、その過程で感じたのは、歴史を学ぶことは、過去の出来事を知ることだけではないということです。その背景にある時代や人々の考え方に目を向けることで、自分が当たり前だと思っている価値観や常識も、時代や環境によって大きく変わり得ることに気づかされます。
専門性を磨くことはもちろん大切ですが、人や社会を多様な視点から理解する力も、これからますます重要になっていくのではないかと思います。今私たちが目指しているのは、自律した従業員がそれぞれの専門性を磨き、その力をグループの総合力として発揮できる組織です。ただ、それが未来永劫続く正解だとは思っていません。時代にはその時代にふさわしい組織のあり方があり、変化にはその変化に適したタイミングがあります。
歴史がそうであるように、その時代に何が必要なのかを問い続け、変わり続ける。その連続が、次の時代を切り拓いていくのだと思っています。
磨き続ける、コアコンピタンス
変わり続ける一方で、守りながら進化させてきたものもあります。それが、技術力、施工力、顧客基盤というコアコンピタンスです。私は、戦略とは自らが持つ強みを起点に描くものだと考えています。先人たちが長い年月をかけて築き上げてきたコアコンピタンスは、積水ハウスグループの揺るぎない強みであり、これからの成長を支える重要な基盤でもあります。
そして、その強みは受け継ぐだけでなく、磨き続けてこそ真の強みとなります。先人たちから受け継いだコアコンピタンスを活かしながら、さらに進化させ、新たな価値へとつなげていく。それもまた、今の私たちに託された役割だと考えています。
だからこそ、これまでの3年間では、組織再編や分社化を進めながら、それぞれの事業や組織の専門性を高め、その力を十分に発揮できる体制づくりを進めてきました。そして今、それぞれの専門性を磨く段階から、それらを掛け合わせる段階へ入っています。そうした意味で、私は今年度を「グループ連携元年」と位置付けています。お互いの専門性を理解し合い、できることを持ち寄りながら新たな価値を生み出す。その方向性を示したのが、2026年から開始した第7次中期経営計画です。
未来を見据えた、新たな中期経営計画
2026年2月、第7次中期経営計画がスタートしました。第6次中期経営計画では、「国内の安定成長と海外の積極的成長」を基本方針に掲げ、国内では請負型・ストック型ビジネスを中心とした安定成長と、米国をはじめとする海外事業基盤の拡大を進めてきました。
私はかねてより、3年間のお約束は3年間の合計で必ず達成するという思いで経営に取り組んでいます。第6次中期経営計画の最終年度となる2025年度には、売上高・営業利益ともに過去最高を更新し、3年間累計の売上高・営業利益ともに計画を上回る結果となりました。第7次中期経営計画においても、その約束を果たしていきます。その成長を支える基本方針が、国内の「グループ総合力による積水ハウス経済圏の深耕」と、海外の「ゲームチェンジに向けた成長基盤の構築」です。
グループ総合力と、積水ハウス経済圏
当社はこれまでに、274万戸を超える住宅を供給してきました。その一戸一戸には入居者様やご家族が暮らし、その先にはさらに多くのつながりがあります。私たちは、この広がりを「積水ハウス経済圏」と定義しました。これまでもカスタマーズセンターや賃貸住宅管理事業に加え、近年はシャーメゾンアプリやPLATFORM HOUSE touchなど、デジタルでのお客様との接点強化も進めています。
こうしたお客様とのつながりに、より深く、より長く価値を提供していく。そのために、第6次中期経営計画では、積水ハウス不動産や積水ハウスシャーメゾンPMの分社化、積水ハウスサポートプラスの設立などを通じて、各社の専門性を高める基盤を整えてきました。第7次中期経営計画では、その専門性をグループの総合力へと進化させ、積水ハウス経済圏を深耕していきます。
私は、これからの成長は顧客基盤の「広がり」と「深さ」の掛け合わせによって生まれると考えています。「広がり」は、住宅の供給を通じて着実に実現していきます。しかし「深さ」は違います。お客様を知り、より長く寄り添い続けようとする意志がなければ生まれません。だからこそ、第7次中期経営計画では、その深さをより重視していきます。お客様との関係が深まるほど、新たな価値を生み出す機会も増えていきます。今は住まい周辺のサービスが中心ですが、住宅の維持管理やリフォーム、賃貸管理、資産形成や相続、さらには健康、子育て、学びといった領域まで視野に入れながら、その可能性はまだ大きく広がり続けると考えています。
その鍵となるのが、グループ総合力です。各社が持つ知見や機能を掛け合わせ、お客様の暮らし全体に寄り添いながら高付加価値を提供していく。それこそが、「グループ総合力による積水ハウス経済圏の深耕」であり、私たちが描くこの3年間の成長の姿です。
ゲームチェンジへの道筋
海外事業においては、この3年間をゲームチェンジに向けた重要な期間だと位置付けています。私たちが目指しているのは、事業規模の拡大だけではありません。日本で培ってきた品質や技術である「積水ハウステクノロジー」によって、市場の常識を変える存在になることです。
その中核となるのが米国戸建住宅事業です。2026年1月には米国のビルダー4社を統合し、SEKISUI HOUSE U.S., Inc.として新たなスタートを切りました。米国事業は、6つのリージョンに分けて展開しています。米国は広大で、気候や風土、暮らし方、慣習も地域によって大きく異なります。当然、求められる住まいの価値も一様ではありません。だからこそ、米国全体に一律の商品を展開するのではなく、それぞれの地域に根差ざした商品を開発し、シャーウッドとNew 2×4の2ブランドを展開していきます。
SEKISUI HOUSE U.S., Inc.の発足に合わせて開催した決起大会では、この3年間で2ブランド戦略の基盤を築き、その先の第8次中期経営計画で大きく飛躍していく。そのシナリオを全員で共有しました。私も決起大会に参加しましたが、そこで感じたのは、戸惑いではなく、2ブランドで全米をあっと驚かせようという強い意志でした。その実現に向けて、まずは設計品質、施工品質、部材品質を米国で徹底していきます。なかでも施工品質は、ゲームチェンジャーとなるための一丁目一番地です。その品質を支える商品開発、価格戦略、用地取得、販売手法、人財育成まで一つひとつ磨き込んでいきます。
先行するシャーウッドのモデルホームに続き、2027年春にはNew 2×4として初めてとなるモデルホームをオープンする予定です。さらに2028年には、日本で培ってきた高耐久技術などを取り入れた次世代のモデルホームも計画しています。この2つのモデルホームの成功を足がかりに、積水ハウステクノロジーとその価値を米国市場へ広げていきます。
世界に届けたい、ここにしかない価値
私たちが事業を展開しているシドニーでも、その土地に合った商品が見えてきています。シドニーには、強い日差しの中で光と影を使い分け、風を感じながら暮らす文化があります。南半球で日本と同じくらいの緯度にあるからか、その感性は、大きな樹の下にいるような心地よさを住まいに取り入れた木造戸建住宅シャーウッド「KOKAGE LOUNGE」の考え方とも通じるものがあります。
米国6つのリージョンそれぞれに最適な商品があるように、シドニーにもシドニーに合った価値があります。その土地に向き合い続けてきたからこそ生まれたこうした出会いもまた、私が海外事業において大切にしているplanned happenstance(計画された偶然)の一つなのかもしれません。
どの技術を、どの市場に、どのような形で届けるのか。私たちは今、本当の意味で積水ハウスらしい価値を提案していく段階に入っています。
描く未来へ、歩み続ける
未来はいつの時代も、誰かが信じることから始まります。積水ハウスグループもまた、住まいの可能性を信じ続けてきました。安心して暮らしていただきたい、快適に過ごしていただきたい。そんな想いから描いた未来を、一つひとつ形にしてきました。だから私は、積水ハウスグループには、今描いている未来の幸せも形にできると信じています。
では、そんな積水ハウスグループとは、どのような人の集団なのか。そう問われたら、私は、お客様の幸せを真剣に考え続ける人たちの集団だと答えます。近年、私たちは、これから先も積水ハウスグループらしくあり続けるために、何を目指し、何を大切にするのかを改めて見つめ直してきました。そして、2024年にはありたい姿を示すSEKISUI HOUSE_SHIPを、2026年にはインテグリティ・コードを制定しました。私が考えるインテグリティとは、自分自身に誠実であろうとする高邁な倫理観です。ありたい姿に高い倫理観が伴って初めて、真の積水ハウスらしさが生まれるのではないでしょうか。
未来は、ある日突然実現するものではありません。研究を続け、技を磨き、仲間と対話し、一歩ずつでも歩み続ける。そうした積み重ねが、夢物語と思われた未来を現実へと変えていくのです。
企業理念「人間愛」を守り続けながら、イノベーション&コミュニケーションで描く未来へ。
その歩みを続ける積水ハウスグループに、これからもどうぞご期待ください。
