税務の専門家がポイントを解説 TKC税務講座

資産の早期移転を促進!贈与税の軽減措置を創設・拡充!

~特例贈与財産に係る贈与税率の緩和と相続時精算課税の見直し等の贈与税とその他の重要改正ポイント~

税理士法人 ファミリィ 代表社員・税理士 山本和義

贈与税については、被相続人の高齢化が進んでおり、高齢者の保有する資産を現役世代により早期に移転させ、その有効活用を通じて「成長と富の創出の好循環」につなげるため、平成25年度税制改正において次の贈与税等改正が行われました。

  • 20歳以上の子や孫等が受贈者となる特例贈与財産に対する贈与税率の緩和と一般贈与財産に係る贈与税の税率構造の見直し
  • 相続時精算課税について、贈与者の年齢要件を65歳以上から60歳以上に引き下げ、受贈者に孫を加える
  • 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置の創設

など

[1] 贈与税の税率構造の見直し

改定内容1. 特例贈与財産

特例贈与財産とは…
その年の1月1日において20歳以上の者が、直系尊属(父母、祖父母、養父母等)から贈与を受けた財産をいいます。

生前贈与による財産の有効活用の観点から、特例贈与財産に係る贈与税の税率構造が緩和されました。一方、最高税率などについては、相続税の最高税率の引上げに合わせて、50%から55%へ引き上げられました。
この改正により、20歳以上の者が直系尊属から生前贈与を受けた場合には、大半のケースで贈与税の負担が軽減されることになりました。

<特例贈与財産に対する贈与税の速算表>
改正前 改正後
平成26年12月31日まで 平成27年1月1日以後
基礎控除及び
配偶者控除後の
課税価格
税率
(%)
控除額(万円) 基礎控除及び
配偶者控除後の
課税価格
税率
(%)
控除額(万円)
200万円以下 10 - 200万円以下 10 -
300万円以下 15 10 400万円以下 15 10
400万円以下 20 25 600万円以下 20 30
600万円以下 30 65 1,000万円以下 30 90
1,000万円以下 40 125 1,500万円以下 40 190
1,000万円超 50 225 3,000万円以下 45 265
4,500万円以下 50 415
4,500万円超 55 640

改定内容2. 一般贈与財産

一般贈与財産とは…
特例贈与財産以外の贈与財産をいいます。

一般贈与財産に係る贈与税の税率構造については、相続税の最高税率の引上げに合わせて、次のように見直されました。

<一般贈与財産に対する贈与税額の速算表>
改正前 改正後
平成26年12月31日まで 平成27年1月1日以後
基礎控除及び
配偶者控除後の
課税価格
税率
(%)
控除額(万円) 基礎控除及び
配偶者控除後の
課税価格
税率
(%)
控除額(万円)
200万円以下 10 - 200万円以下 10 -
300万円以下 15 10 300万円以下 15 10
400万円以下 20 25 400万円以下 20 25
600万円以下 30 65 600万円以下 30 65
1,000万円以下 40 125 1,000万円以下 40 125
1,000万円超 50 225 1,500万円以下 45 175
3,000万円以下 50 250
3,000万円超 55 400

改正内容1及び2は、平成27年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されています。

税率構造の見直しによりどのくらい贈与税が増減税になったのか

<贈与税の税率構造の見直しによる増減税額の試算>
基礎控除を控除する前の贈与金額 改正前
(平成26年12月31日まで)
改正後
(平成27年1月1日以後、
特例贈与)
改正後
(平成27年1月1日以後、
一般贈与)
贈与税額
(千円)
負担割合
(%)
贈与税額
(千円)
負担割合
(%)
贈与税額
(千円)
負担割合
(%)
200万円 90 4.5 90 4.5 90 4.5
300万円 190 6.3 190 6.3 190 6.3
400万円 335 8.3 335 8.3 335 8.3
470万円 470 10.0 440 9.3 470 10.0
500万円 530 10.6 485 9.7 530 10.6
520万円 580 11.1 520 10.0 580 11.1
600万円 820 13.6 680 11.3 820 13.6
700万円 1,120 16.0 880 12.5 1,120 16.0
800万円 1,510 18.8 1,170 14.6 1,510 18.8
900万円 1,910 21.2 1,470 16.3 1,910 21.2
1,000万円 2,310 23.1 1,770 17.7 2,310 23.1
1,500万円 4,700 31.3 3,660 24.4 4,505 30.0
2,000万円 7,200 36.0 5,855 29.2 6,950 34.7
3,000万円 12,200 40.6 10,355 34.5 11,950 39.8
4,000万円 17,200 43.0 15,300 38.2 17,395 43.4
5,000万円 22,200 44.4 20,495 40.9 22,895 45.7

(注)負担割合とは、基礎控除前の贈与金額に占める贈与税額の割合をいいます。

[2] 相続時精算課税の見直し

改正内容

若年世代への資産の早期移転を一層促進する観点から、相続時精算課税の適用要件について、贈与者および受贈者が次のように拡充されました。

改正前 改正後
適用時期 平成26年12月31日まで 平成27年1月1日以降
贈与者 65歳以上の父母 60歳以上の父母又は祖父母
受贈者 20歳以上の子である推定相続人 20歳以上の子である推定相続人
又は20歳以上の孫

平成27年1月1日以後の贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されています。

※本サイトに掲載の内容は、令和2年5月現在の法令に基づき作成しております。

積水ハウスの土地活用実例見学会に参加する