税務の専門家がポイントを解説 TKC税務講座

資産の早期移転を促進!贈与税の軽減措置を創設・拡充!

~特例贈与財産に係る贈与税率の緩和と相続時精算課税の見直し等の贈与税とその他の重要改正ポイント~

税理士法人 ファミリィ 代表社員・税理士 山本和義

[5] 財産債務明細書及び国外財産調書制度の見直し

改定内容

財産債務明細書 平成25年度税制改正において、財産債務明細書に記載すべき公社債、株式並びに貸付信託、投資信託及び特定受益証券発行信託の受益権の価額を、その年12月31日における時価(時価の算定が困難な場合には、時価に準ずるものとして見積価額)とすることとされました。
なお、財産債務明細書については、その後の平成27年度税制改正において、提出基準や記載事項の見直しなどの所要の改正を行い、財産債務調書として整備することとされました(平成28年1月1日以後に提出する財産債務調書について適用)。
国外財産調書 近年、国外財産の保有が増加傾向にあり、国外財産に係る所得税や相続税の課税漏れが増加していることから、国外財産に係る課税の適正化が喫緊の課題とされていて、国外財産に係る情報の把握のために、納税者本人から国外財産の保有について申告を求める仕組みとして「国外財産調書制度」が平成24年度税制改正で創設されました。
この調書は、その年12月31日において5,000万円を超える国外財産を有する居住者は、当該財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した調書(国外財産調書)を翌年3月15日までに税務署長に提出しなければなりません。
平成25年12月31日における国外財産の保有状況について、施行後最初の国外財産調書が提出されており、その総提出件数は全国で5,539件(国外財産の価額の総合計額は約2兆5千億円)でありました。
国外財産に関する納税義務の範囲の拡大が、平成25年度税制改正で行われたことから、国外財産調書によって国外財産の移動を確認し、課税の重要な資料になるものと思われます。

金融庁は、平成25年度税制改正要望において、「国外財産調書制度は、我が国税務当局の執行管轄権の制約があるなど国内財産と比べ把握体制が脆弱な国外財産に係る情報把握の強化を目的として措置されたものである。当制度においては、我が国税務当局の執行管轄権の制約がない「国内金融機関において管理される外国有価証券」についても、その報告対象とされている。制度の趣旨にそぐわない報告義務が課されることにより、投資家に過大な負担が生じる懸念があるため、国外財産調書の報告対象から、「国内金融機関において管理される外国有価証券」を除外する」よう要望していました。

そこで、平成25年度税制改正において、国外財産調書制度について、対象となる国外財産に国外にある金融機関の営業所等に設けられた口座において管理されている国内有価証券(注1)を加えるとともに、対象となる国外財産から国内にある金融機関の営業所等に設けられた口座において管理されている外国有価証券(注2)が除外されました。

  1. (注1)国内法人等が発行した株式、公社債その他の有価証券をいいます。
  2. (注2)外国法人等が発行した株式、公社債その他の有価証券をいいます。

平成26年1月1日以後に提出すべき国外財産調書について適用されています。

[6] 延滞税等の見直し

改定内容

延滞税等について、当分の間の措置として、次の措置が講じられました。

  1. 1延滞税の割合は、各年の特例基準割合(注1)が年7.3%に満たない場合には、その年中においては、次に掲げる延滞税の区分に応じ、それぞれ次に定める割合とします。
    1. (1)年14.6%の割合の延滞税・・・当該特例基準割合に年7.3%を加算した割合
    2. (2)年7.3%の割合の延滞税・・・当該特例基準割合に年1%を加算した割合(当該加算した割合が年7.3%を超える場合には、年7.3%の割合)

    また、納税の猶予等の適用を受けた場合(注2)の延滞税については、当該納税の猶予等をした期間に対応する延滞税の額のうち、当該延滞税の割合が特例基準割合であるとした場合における延滞税の額を超える部分の金額を免除することとしました。

    1. (注1)「特例基準割合」とは、各年の前々年の10月から前年の9月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の12月15日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。
    2. (注2)延滞税の全額が免除される場合を除きます。
  2. 2利子税の割合は、各年の特例基準割合(注1)が年7.3%に満たない場合には、その年中(注2)においては、次に掲げる利子税の区分に応じ、それぞれ次に定める割合とします。
    1. (1)(2)に掲げる利子税以外の利子税・・・当該特例基準割合
    2. (2)相続税及び贈与税に係る利子税(その割合が年7.3%のものを除く。)・・・これらの利子税の割合に、当該特例基準割合が年7.3%に占める割合を乗じて得た割合
    1. (注1)相続税及び贈与税の延納に係る利子税については、各分納期間の開始の日の属する年の特例基準割合をいいます。
    2. (注2)相続税及び贈与税の延納に係る利子税については、各分納期間をいいます。
  3. 3還付加算金の割合は、各年の特例基準割合が年7.3%に満たない場合には、その年中においては、当該特例基準割合とします。
  4. 4その他所要の措置を講ずる。

平成26年1月1日以後の期間に対応する延滞税等について適用されています。

<延滞税・利子税・還付加算金>
附帯税等の種類 内容 本則 改正前の特例 特例の見直し 参考:平成27年分
(特例基準割合1.8%)
平成25年
12月31日
まで
平成26年
1月1日以後
延滞税(注1)
税金が定められた期限までに納付されない場合

1納期限から2か月を経過する日まで

7.3% 4.3% 特例基準割合
+1%
2.8%

21 の期限の翌日から納付する日まで

14.6% 特例基準割合
+7.3%
9.1%

3事業廃止等による納税の猶予等の場合

1/2免除(7.3%) 4.3% 特例基準割合 1.8%
利子税
本税の延納および申告期限の延長等がなされた場合

1所得税の利子税

7.3% 4.3% 特例基準割合 1.8%
2






延納の場合(注2) 3.6%〜6.0% 2.1%〜3.5% 本則x特例基準割合÷7.3% 0.8%〜1.4%



農地等 3.6% 2.1% 0.8%
非上場
株式等
山林
3






延納の場合 6.6% 3.8% 本則x特例基準割合÷7.3% 1.6%



農地等 3.6% 2.1% 0.8%
非上場
株式等
還付加算金(注1) 還付金等に対して利息に当たる金額を加算して還付される 7.3% 4.3% 特例基準割合 1.8%
  1. (注1)地方税における延滞金及び還付加算金についても同様の見直しが行われました。
  2. (注2)相続税の主な延納利子税率は以下のようになります。
主な区分 延納
期間
(最高)
本則 改正前の特例 参考:平成27年分
(特例基準割合
1.8%)
不動産等の割合 対象 平成25年12月
31日まで
75%以上 不動産等に対応する税額 20年 3.6% 2.1% 0.8%
動産等に対応する税額 10年 5.4% 3.1% 1.3%
50%以上75%未満 不動産等に対応する税額 15年 3.6% 2.1% 0.8%
動産等に対応する税額 10年 5.4% 3.1% 1.3%
50%未満 立木に対応する税額 5年 4.8% 2.8% 1.1%
立木以外の財産に対応する税額 6.0% 3.5% 1.4%

※本サイトに掲載の内容は、令和2年7月現在の法令に基づき作成しております。

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