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相続税半世紀ぶりの課税強化!  課税対象者は1.5倍に!?

~基礎控除引下げと小規模宅地等の特例の拡充等の相続税の重要改正ポイント~

税理士法人 ファミリィ 代表社員・税理士 山本和義

[7] 事業継承税制の適用要件の緩和

改正内容

非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、次の見直しを行うこととしました。

1 経営承継相続人等の要件のうち、非上場会社を経営していた被相続人の親族であることとする要件を撤廃する。
2 贈与税の納税猶予における贈与者の要件のうち、贈与時において認定会社の役員でないこととする要件について、贈与時において当該会社の代表権を有していないことに改める。
3 役員でもある贈与者が、認定会社から給与の支給等を受けた場合であっても、贈与税の納税猶予の取消事由に該当しないこととする。
4 納税猶予の取消事由に係る雇用確保要件について、経済産業大臣の認定の猶予期間(5年間)における常時使用従業員数の平均が、相続開始時又は贈与時における常時使用従業員数の80%を下回ることとなった場合に緩和する。
5 民事再生計画の認可決定等があった場合には、その時点における株式等の価額に基づき納税猶予税額を再計算し、当該再計算後の納税猶予税額について、納税猶予を継続する特例を創設する。
6 納税猶予税額の計算において、被相続人の債務及び葬式費用を相続税の課税価格から控除する場合には、非上場株式等以外の財産の価額から控除することとする。
7 株券不発行会社について、一定の要件を満たす場合には、株券の発行をしなくても、相続税・贈与税の納税猶予の適用を認めることとする。
8 相続税等の申告書、継続届出書等に係る添付書類のうち、一定のものについては、提出を要しないこととする。
9 雇用確保要件が満たされないために経済産業大臣の認定が取り消された場合において、納税猶予税額を納付しなければならないときは、延納又は物納の適用を選択することができることとする。
10 経済産業大臣の認定の有効期間(5年間)の経過後に納税猶予税額の全部又は一部を納付する場合については、当該期間中の利子税を免除することとする。

(注)納税猶予税額の全部又は一部を納付する場合の利子税は、「延滞税等の見直し」により、納税猶予期間中の利子税の割合が年0.9%(特例基準割合が2%の場合)に引き下がる。

11 経済産業大臣による事前確認制度を廃止する。
12 資産保有型会社・資産運用型会社に該当する認定会社等を通じて上場株式等(1銘柄につき、発行済株式等の総数等の100分の3以上)を保有する場合には、納税猶予税額の計算上、当該上場株式等相当額を算入しない。
13 適用対象となる資産保有型会社・資産運用型会社の要件について、次のとおり所要の見直しを行う。
  1. イ.常時使用従業員数が5人以上であることとする要件は、経営承継相続人等と生計を一にする親族以外の従業員数で判定する。
  2. ロ.商品の販売・貸付け等を行っていることとする要件について、経営承継相続人等の同族関係者等に対する貸付けを除外する。
14 納税猶予の取消事由である「総収入金額が零となった場合」について、総収入金額の範囲から営業外収益及び特別利益を除外する。

経済産業大臣による事前確認制度の廃止(上記⑪)については、平成25年4月1日より適用され、その他の改正については所要の経過措置を講じた上で、平成27年1月1日以後に相続若しくは遺贈又は贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。

<非上場株式等の贈与税・相続税の納税猶予制度の改正前後の要件等の一覧表>
改正内容 改正前 改正後 相続税 贈与税
経営継承相続人等の要件 後継者は、先代経営者の親族に限定 先代経営者の親族外継承を対象化
贈与者の要件 贈与時において役員でないこと 贈与時において代表権を有していないこと
経営贈与承継期間内に贈与者が役員になって給与を受けた場合 贈与税の納税猶予の取消事由に該当 贈与税の納税猶予の取消事由に該当しない(有給役員として残留可)
経済産業大臣の認定の有効期間(5年間)における常時使用従業員数 雇用の8割以上を「5年間毎年」維持 雇用の8割以上を「5年間平均」で評価
民事再生計画の認可決定等があった場合 相続・贈与から5年後以降は、後継者の死亡又は会社倒産により納税免除 その時点における株式等の価額に基づき納税猶予税額を再計算し、その税額の納税猶予を継続する(一部免除)
被相続人の債務及び葬式費用 特例非上場株式等の価額から控除 特例非上場株式等以外の相続財産から控除
株券不発行会社 原則として株券を発行し、担保(法務局に供託)に供すること 株券の発行をしなくても、納税猶予の適用を認める
雇用確保要件が満たされないために認定が取り消された場合 納税猶予税額を全額金銭納付する 納税猶予税額について、延納又は物納の適用を選択することができる (延納のみ)
経済産業大臣の認定有効期間(5年間)の経過後に納税猶予税額の全部又は一部を納付する場合 納税猶予期間を含む全期間における利子税を納付しなければならない 納税猶予期間(5年間)中の利子税を免除する
(注)
経済産業大臣による事前確認制度 制度利用の前に、「認定」に加えて「事前確認」を要する 「事前確認」制度を廃止する
上場株式等(1銘柄につき3%以上)を認定会社である資産保有型会社等が保有する場合 納税猶予税額の計算上、当該上場株式等相当額を含めて計算する 納税猶予税額の計算上、当該上場株式等相当額を含めず計算する
その1・適用対象となる資産保有型会社等の要件(常時使用従業員数が5人以上とする要件) 経営承継相続人等と生計を一にする親族を含む従業員数で判定 経営承継相続人等と生計を一につする親族以外の従業員数で判定
その2・適用対象となる資産保有型会社等の要件(3年以上継続して行う商品販売等における「資産の貸付け」の範囲) 制限なし 経営承継相続人等の同族関係者等に対する貸付けを除外
総収入金額が零となった場合 総収入金額は営業外収益及び特別利益を含めて判定 総収入金額の範囲から営業外収益及び特別利益を除外

(注)納税税猶予税額の全部又は一部を納付する場合の利子税は、「延滞税等の見直し」により、納税猶予期間中の利子税の割合が年0.9%(特例基準割合が2%の場合)に引き下げられます。

※本サイトに掲載の内容は、令和2年7月現在の法令に基づき作成しております。

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