鉄骨建築のヒミツ vol.04魅惑の大空間建築

前回までの超高層ビルとタワーの紹介では、ともに「より高く」を目指して発展してきた技術の歴史を振り返りました。建築において追求されてきた構造技術のもう一つの目標に、「より広く」があります。間に柱を建てずどれだけ広い空間を実現できるかというテーマです。

大空間建築の成り立ち

古代から中世にかけて、大空間は主に神殿や寺院として建てられました。これらの建物は、石などの材を積み上げてつくる組積造という構造方式です。それにより、2世紀に建てられたローマのパンテオンでは直径が43.2m、6世紀に建てられたイスタンブールのアヤソフィアでは直径が32.7mというドーム空間が誕生しました。しかしそれ以降は、近世になってもこれらを超える規模の大空間は現れません。組積造による空間の限界がこのあたりにありそうです。

その限界を超えたのは近代になってから。これらを成り立たせたのが、19世紀になって広まり始めた鉄骨造という新しい構造方式でした。鉄鋼の大量生産が可能になり、建築の可能性が大きく広がりました。

近代の発展とともに広まる構造

工場編

AEGタービン工場(ドイツ)
出典:Wikipedia

鉄骨造による大空間は、どのような種類の建物として建てられたのでしょうか。一つはまず、大きな機械を入れて動かす工場です。初期の鉄骨造による代表的な工場建築には、フランスのムニエ・チョコレート工場(1872年竣工)や、ドイツのAEGタービン工場(1909年竣工)などがあります。

もう一つは鉄道の駅です。英国のセントパンクラス駅(1868年竣工)やヨーク駅(1874年竣工)など、この時代に建造された駅舎は鉄骨のアーチで架構をつくっています。一見、レンガ造りのような東京駅の丸の内駅舎(1914年竣工)も、実は鉄骨が入っていて、それが主構造になっています。また、航空機の格納庫も鉄骨造で建てられました。巨大な飛行船を格納するハンガーとして米国で建てられたグッドイヤー・エアドック(1929年竣工)は、柱間が99mもあります。

駅舎編

セントパンクラス駅(イギリス)

ヨーク駅(イギリス)

東京駅(日本)

たくさんの人が集まる博覧会の展示会場も、鉄骨造によって実現した新しい大空間でした。1851年のロンドン万博で建てられた水晶宮は、鋳鉄と木材の複合構造で563×124m、東京ドーム約1.5個分の展示空間を生み出しました。
また1855年のパリ万博・工業宮殿は柱間48m、そして1889年のパリ万博・機械館は柱間115mの大空間を達成し、当時の人々を驚かせました。

万博会場編

1889年パリ万国博覧会 機械館(フランス)
出典:Wikipedia

1970年大阪万国博覧会 お祭り広場大屋根(日本)
出典:Wikipedia

工場、鉄道の駅、航空機の格納庫、博覧会の展示会場は、いずれも近代になって生まれた新しい施設タイプです。それらの出現と鉄骨造という新しい構造は、切っても切れない関係にあります。新しい時代の幕開けとも言えるでしょう。

スペースフレームで自由な屋根

トラス構造の一例

鉄骨造建築の大空間を支える梁やアーチを見ると、多くは細長い部材を三角形に組み合わせた形で構成されています。この架構の方式を「トラス」と呼びます。トラスはもともと木造の構造システムとして始まったものですが、鉄骨とも相性がよく、大きな柱間もこれで実現が可能になりました。鉄橋にもよく使われているので、おなじみの架構方式かと思います。

トラスを立体的に展開していくと、スペースフレーム(立体的な骨組み)になります。同じ太さ、同じ長さの鋼管材を、ボール型のジョイントでつないでいくことにより、自由な形、自由な大きさの屋根をつくれるシステムも開発され、さまざまな建物で採用されるようになりました。

この構造方式で史上最大と言われているのは、昭和45年(1970)大阪万博のお祭り広場大屋根です。イベントを開催するシンボルゾーンの上に架けられたもので、幅108m、長さ290mの構造体が、6本の柱で支えられていました。そのごく一部が大阪・吹田市の万博記念公園に今も残っています。

スポーツの熱狂を包む大空間

アストロドーム(アメリカ)
出典:Wikipedia

現在、最も注目を集める大空間の施設タイプといえば、スポーツ施設でしょう。小中学校の体育館も、ほとんどが鉄骨造ですが、何万人もの観客を集めるプロスポーツのための屋内スタジアムの屋根架構もほとんどが鉄骨造です。

この分野で画期的だったのは、1965年に米国ヒューストンに完成したアストロドームです。直径200mの広さに鉄骨トラスの屋根を架けた世界初のドーム球場は、当時のオーナーが古代の地中海世界にあった7つの驚異的建造物を指す「世界7不思議」を意識して、「世界で8番目の不思議」と自慢したほど画期的なものでした。日本で初めてのドーム球場は東京ドームで、これは屋内の空気圧を高めることで屋根を支える空気膜構造であり、鉄骨造ではありません。しかし、その後に続々と完成した福岡ヤフオク!ドーム(1993年竣工)、 京セラドーム大阪(1997年竣工)、 ナゴヤドーム(1997年竣工)、札幌ドーム(2001年竣工)は、いずれも鉄骨造です。

ドーム編

福岡ヤフオクドーム(日本)

京セラドーム大阪(日本)

ナゴヤドーム(日本)

札幌ドーム(日本)

これらはスポーツの試合だけでなく、コンサートやイベントにも使われ、一都市の人口にも匹敵する人の数を集めて情報を伝えるメデイア装置としても使われるようになりました。「より広く」の目標に向かって進化してきた鉄骨造は、建築の可能性をこうして広げてきたのです。

磯 達雄(建築ジャーナリスト)

1963年埼玉県生まれ。名古屋大学工学部建築学科卒業。日経BP社で「日経アーキテクチュア」誌の編集部に勤務。退社後は編集事務所フリックスタジオを共同主宰。専門誌から一般誌、webまで幅広い読者層の媒体にて建築に関するさまざまな記事を執筆。主な著書に『昭和モダン建築巡礼』『ポストモダン建築巡礼』『菊竹清訓巡礼』『プレモダン建築巡礼』など。桑沢デザイン研究所・武蔵野美術大学非常勤講師。

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「IS」の由来
「IS」とは英語のbe動詞で、「存在」を表現する言葉。
同時に、鉄骨軸組工法を統合した究極のシステム「Integrated System」と なるようにとの願いをこめて作られました。