2024/11/29
知っておくべき14のシカケ
河﨑由美子
子ども部屋は、子どもたち自身が自分で管理する空間。広さよりも、まずは、子どもたちの世界観が広がっていく場所に。成長に合わせて空間を変化させ、その時に合った部屋づくりが自主性を育みます。
01 自分のテリトリーを広げながら、空間をシェアする感覚も養う
最初はべビーベッドや布団が居場所だった赤ちゃんのテリトリーが、だんだんと広がっていくのが成長です。点だった居場所が、この棚まで、あのベッドまでとコーナーレベルになって自分のテリトリーが広がっていきます。
その広がり方はそれぞれの個性や育ち方によって違いますので、家を建てるときに、子どもの部屋をどのように形作っていくべきか悩まれる方も多いです。私たちがよくアドバイスしているのは、家のスペースは限りがあるものなので、なるべくシェアして空間を無駄なく使うことを、おすすめしています。
たとえば2階は大きなワンルームにして、子どもが小さい頃には、将来の自分の個室になっていく場所に遊具を置いてそこで遊べるようにします。ポイントは、親もそのスペースに入って一緒に遊ぶこと。子どもを遊ばせる場所ではなく、大人も遊ぶ場所という認識をつくることがとても大切です。その考え方があると、個室として仕切ったときも、「親が子どもに部屋を貸している」「今だけ貸してあげるよ。ここは家族みんなの部屋だよ」という感覚が持てると、子どもの社会性や自立が促される環境になります。
子ども部屋がその子だけの場所になってしまうと、大人が立ち入れないエリアになってコミュニケーションが不足することもあるでしょう。家族で空間のシェアをすることが当たり前であれば、子どもが学校へ行っている間に親が子ども部屋をリモート会議の個室として使うことも自然にできます。「ここはみんなの机だよ。セミパブリックな場所だよ」と、大人は行動で伝えていきます。そして、子どもがそれを受け入れるように暮らしてほしいと思います。
また、ベッドだけはそれぞれの部屋に置き、机は1ヶ所に集めるのもひとつの方法。人で部屋を分けるのではなく、子どもが小さいときは特に機能で部屋を分けるのがおすすめです。子どもが大きくなってきたらコーナーや個室を専有できるよう、少しずつレイアウト変更していく方法は色々あります。
あきえ先生
子どもの成長に合わせて環境を整えるのはとても大切です。たとえ同じ年齢でも”その子”によってどのような環境が必要かは異なります。ひとりになれる空間が必要なのか、今はまだ必要ないのかなど。だからこそ、お子さんの様子を観察して、お子さんと相談しながらその子に適切な環境をつくっていきたいですね。
02 自分で選び、自分で決める小さな経験を繰り返すことが大事
家づくりにおいて子ども部屋になる場所であっても、子どもの意見を聞く方は少ないようですが、子どもも家族の一員として空間づくりに参加することで、家に愛着がわき、そこが「自分の居場所」になっていくものです。愛着があると、自ら掃除や片付けをする習慣も身につきます。
ひとつの提案として、子ども部屋のカーテンなどのインテリアを、子どもに選んでもらうのがおすすめです。これなら、新築時ではなくても実践できます。私たちの研究の中で2歳のお子様でも、自分の「好き」がわかっているお子様がいて、インテリアのコーディネートのようなことができるという結果が出ています。
また、子ども部屋を自分の部屋らしくするには子ども自身が自分で飾り付けをしたり、好きな物を置く場所を設けたりすることも大事です。車が好きならミニカーを10台並べられる場所をつくってみたり、自分で描いた絵を好きな位置に貼ったりするのもいいと思います。
子どもが自分で選び、その場所に置いたのなら、選んだ物を否定せずに尊重してくださいね。自分で決めるのが楽しい、自分で置いた好きな物に囲まれている……そんな環境に身を置いて自分の居場所が築かれていくことは、自主性を育てる糧になります。
あきえ先生
子どもにも尊厳があって、個人として尊重されるべき存在。子どもの「自己選択力」を育むことは、モンテッソーリでもとても大切にしている考え方です。乳幼児なら、最初は「どっちがいい?」と2択で聞いてみたりしながら、小さい頃から子どもが自ら選ぶことを習慣化させましょう。「自分で選び、自分でできる」ことの楽しさを繰り返し経験することで、自主性も育まれます。
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