02 片づけの第一歩は、人生と向き合うこと、自分を知ること

水谷:これまでアドバイザーとしていろんな人の手伝いをしてきましたが、皆さんそもそも自分の持ち物のことをよく知らないことが多いです。この収納に入り切るだろうと見積もって全然入らないということはよくあります。

持ち物の数をきちんと把握することはちょっと嫌なこと。たとえば、着ていない服や使っていない物もたくさんあって、キッチンのパントリーも、口に合わなくて放置している食べ物や買いすぎたストックでパンパンだったりと、見たくない現実ばかり……。

ですから、持ち物を洗い出す作業はダメな自分を直視させられる感覚になります。でも家を片づけたい、変わりたいという想いがあるなら、やはり自分と向き合う作業は必要になります。家を買うとか引っ越すとか、そういう機会はすごく良いきっかけになるので、家族みんなで少しずつ見直してみてほしいですね。

その作業をするとき、皆さんよく一番気になるところを優先順位の一番にあげるのですが、実はそこは最後にやった方がいいです。家族みんなの悩みになっている箇所を整理するのは精神的にとても苦労するので、最初から疲弊して途中で嫌になったり辞めたくなったり。だから、悩みにすらカウントされていない所から始めることがポイントです。たとえば文房具や小さな物から少しずつ始めて、整理の訓練をしていきます。

河﨑:私自身、ここは整理できるだろうと思って引き出しを取り出して、結構な時間を使って結局、減ったのはボールペン2本だけ、しかも本当に書けない2本だけということがありました(笑)。思った以上に全然物が減らなくて大失敗。

水谷:たぶん、その引き出しはご自身の中でハードルが高いカテゴリーのものだったのではないでしょうか。

河﨑:そうなんです。整理するまで自分では気づいていなかったのですが(笑)。

水谷:自分のことって慣れてしまっているので意外と分からないんですよね。そんなときのコツがひとつあります。皆さん、整理をしようとすると、いっぱいある物の中で、捨てられるものは何かな?と、ワーストの物を選ぼうとするのですが、実はそれだとなかなかうまく進まないことが多いんです。

ワーストの物って、たとえば河﨑さんのように、ペンの場合でしたら全く書けないペンだけですし、お洋服も捨てられるものと考えると、クタクタの部屋着や毛玉だらけのセーターぐらいしかないな、となってしまう。だからまずベストを決めるのが良いです。

ベスト5でもベスト10でも良いのですが、必需品やお気に入りの物はどれか、それが分かると、必要ではない物、よく分からない物が自然と決まっていきます。そこで初めてよく分からない物についても「じゃあこれはどうかな?」と判断できる段階に進めるようになります。ぜひこの方法を試してみてください。

整理収納アドバイザー水谷妙子さんと一緒に考える「収納と片づけ」の記事は3回シリーズで配信します。今後は「引っ越し時の片づけ」、「子どもの物の片づけ」をテーマにした記事をお届けします。お楽しみに。

撮影場所

Tomorrow’s Life Museum 関西内「小林さんち。」
実際に見てみる
https://www.sekisuihouse.co.jp/tlm/index.html

ライフスタイル型コンセプトハウス「小林さんち。」とは?

積水ハウスでは、子どもの生きる力を育む家を「子育ちの家」と呼んでいます。これまでの子どもを軸にした住まいづくりの研究成果を基に、子ども自らの成長を支え、生きる力を育む「子育ちの家」を具現化したのが「小林さんち。」です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

モンテッソーリ教師
あきえ先生

大人でも疲れていると片づけは難しいもの。意志力が未発達な子どもには、リビングなど身近な空間に整った収納環境が用意されていることがとても大切ですよね。