「子どもがいるとどんなに頑張って片づけても、またすぐに散らかってしまう」、「育児に家事に仕事に、毎日が目まぐるしくてなかなか整理整頓する時間がない」など……片づけの悩みが尽きないという子育て中の人は多いのではないでしょうか。
そんな人たちの悩みを少しでも解決したいという想いで、子育て世帯に向けたライフスタイル型モデルハウス 「小林さんち。」 に整理収納アドバイザーの水谷妙子さんをお招きして、積水ハウスの河﨑由美子と空間づくりに欠かせない収納と片づけのヒントを語り合いました。

水谷妙子

3児の母。無印良品にて生活雑貨の商品企画・デザインを13年間担当。仕事で機能的なものづくりをする一方、実は片づけが大の苦手で、子どもが産まれてからますます家の中が整わず悩むなか、「暮らしの仕組みづくり」という整理収納の考え方と出逢う。その考え方に救われたことをきっかけに、整理収納アドバイザーとして独立。2020年7月に初著書『水谷妙子の片づく家 余計なことは何ひとつしていません。』、続く11月に2冊目の著書『水谷妙子の取捨選択 できれば家事をしたくない私のモノ選び』を出版。
http://taekomizutani.com

01 大切なのは「ラクにできる」ということ。無理せず片づけられる環境をつくる

河﨑:水谷さんは、「小林さんち。」に初めてのお越しいただきましたが、ここの収納をご覧になっていかがでしたか?

水谷:いろいろ見せてもらいながら、“自分だったらこうしたいかも”とか、“うちならこの収納はこれに使えるな”とすぐにいろいろ想像が膨らみました。SNSなどを見てもいまいちピンとこないですが、実際に空間を見てみるのは画面や紙で見るのとは全然違う情報量があるんだなと実感しましたね。

河﨑:そう言っていただけて、とても嬉しいです。まさに、「自分はどうだろう」と考えてもらうのがこのモデルハウスの目的で、普通の展示場よりも物の量がすごく多くなっています。実際に住んでいることを感じてもらえるように、収納の中にもリアルな物をたくさん入れています。

説明しなくても、どういうものがどのくらいの量を収納できるのかが一目で分かるように工夫しています。“さっきまで小林さんがここにいたんだ”と感じてもらえるようなリアルさを大切にしています。

水谷:確かに収納の中を見て、生活感をすごく大切にされているんだなと感じました。空間に生活感があることってとても大事だと思います。

河﨑:オーナーさまの満足度調査をすると、収納の満足度がどうしても100%にならなくて、もっとリアルな収納の提案をしていかなくてはと思ったんです。注文住宅の場合、皆さん自分の思い通りに作っているはずなのに収納の満足度だけが低くて。

その原因を調べてみると、不満は主にリビングの収納でした。オーナーさまの中には「リビングには今ある収納家具か気に入った家具を置くつもりなので、収納はなくても大丈夫です」とおっしゃる人が多くて、そのような声を受けて設計士が関与しなかった結果、「リビングに物をしまう場所がない」「自分で購入した家具がうまく入らなくて困っている」といった不満が寄せられるようになりました。ですから、今は収納まできちんとプランに含めて間取りの提案をするようにしています。

水谷:家を建てるとき、本来はどういう暮らし方をしたいか、自分の暮らしにあった収納とはどういうものかをまず考えなければいけないけれど、家を建てると決めたら、完成に向けてどうしても短期間で設計段階に入らないといけないですよね。

そして、建物そのものやデザインに目がいって、収納に対して今こういう問題があるからこんな収納が必要というところまで想像ができない。そんなことを考える余裕がなかなかないですよね。

河﨑:そうですね。家を建てるときは特に収納以外に考えなくてはいけないことがたくさんありますからね。ですから私たち住宅メーカーがリビング収納を提案して、そこに収納しやすいような空間をつくっていくことが住まいを提供する側として必要なことだと感じたんです。

でもリビングにクロークを作るなら、1〜2畳くらい部屋が狭くなります。リビングはできるだけ広い方がいいという人が多いので、そこで悩まれるオーナーさまも多いのですが、「クロークのスペースを取ったら、少しリビングが狭くなってもスッキリするんですよ」とお伝えしています。

リビングに2畳くらいの細長い収納を作るだけで、収納問題が一気に解決します。「ちょうどいい場所に収納スペースがあればそこに片づけますし、ちゃんと元に戻したくなる」という人間の基本的な行動特性をうまく利用して片づけやすい家になるように考えています。

私たちとしては、収納しやすくなるように配慮された家に住めば、片づけが苦手な人も自然と片づけられるように変われるのではないかと思って、そのお手伝いをしたいと考えています。

水谷:住宅メーカーさんがそこまで考えてくれているのは有り難いことですね。私は、へとへとに疲れて帰ってきた状態で「もう何もしたくない!」というときでも片づけられる収納があることが大切だと思っていて。自分がラクできるように、5分あればスッキリできる環境をつくっておくことをおすすめしているのですが、積水ハウスならすでにその環境を備えることができますね。

収納の仕方についても、ボックスに細かく品目ごとに分けてキッチリ詰めるのではなく、ざっくりと分けてポンと投げ入れてもOKなボックスを作っておけば十分だと思っていて。私は「それくらいゆるくていいんですよ」と発信していきたいです。

SNSで完璧に整った収納の家とかを見ると自己嫌悪してしまう人もいるかもしれませんが、SNSで発信している人たちはいわばアスリート。みんながみんなアスリートにはなれないですし、なる必要もないので比べる対象ではありません。