知っておくべき、14のシカケ

03 そのときどきで、その子に合う環境を見極める

――今児童期に入ってお子さんはどんなふうに成長されていますか?

美雨さん:うちの娘はモンテッソーリの保育園の後も自由な環境の教育を受けていまして、とても意思が強くて「私の人生は私のもの」という感じです(笑)。

あきえ先生:素敵ですね。今の環境がマッチしているから、そうやって自分を発揮できているんだと思います。

美雨さん:でも大人のアドバイスを何も聞かなくて困ることもあります(笑)。自分より人生経験のある人へのリスペクトをどうやって学んでいくかというのは課題だと思っています。私が親としてこうした方がいいよと言っても、それはママの意見でしょって(笑)。いや、でも、私はあなたのことをいつも見ているし、あなたより長く生きているから、それを踏まえてこう思っているよと説明するんですけど、 それで納得するときとしないときがあります。もう少し受け入れてほしいなと……。

あきえ先生:自分の自尊心を満たしながら、相手に対するリスペクトを持ってもらうということですよね。すごくよく分かります。うちも同じですよ(笑)。私の長女も8歳ですが、“あなたの意見を言っていいんだよ”といつも伝えていて、尊重されることが当たり前の環境で育ってきたので、常に主張する権利があると思っています。それが世間一般的にはちょっと強く見えてしまったり、間違った主張をしてしまったりするときもありますが、それも今は良い学びだと思っています。

とにかく自分の強みが生かせる環境に身を置くことがすごく大事。本人だけではまだ選べない年齢だと親がある程度見極めることになるので、日ごろの姿をよく観察して、その子に合う環境を選べるようにしてあげたいですよね。

美雨さん:あと、私は片付けが苦手なので、どうにか娘は片付けられるように育ててあげたいですけど、なかなか(笑)。

あきえ先生:実は、片付けられないのは、児童期の発達段階の特徴なんですよ。乳幼児期は秩序が大切なので、片付ける場所を決めておくとそこに片付けてくれますが、児童期に入るとやらなくなります。脱いだものはそのまま、カバンもそのまま……。だから、なんで?私の育て方がいけなかったのかな?とか思われる人もいると思いますが、そうではないんです。

美雨さん:へぇー、安心する(笑)。うちもランドセルをかける収納とか買っていますが、そこにランドセルが戻っていることは一度もないです(笑)。

あきえ先生:秩序のなかで安心感を得たい乳幼児期と違って、児童期はもう秩序はわかっているので、そこが乱れていても不安にならないんです。児童期は知的欲求がすごく深まる時期で、違うところに興味や意識が向いています。ただ、環境は整えておくことが大切ですね。

片付けるかどうかは子どもに託すとして、美雨さんのようにランドセルを片付ける場所を用意しておくと“ここにできる環境はあるよ”と言えるので、ある程度は促しながら “今日は手伝うね”とか“これだけは持って行ってね”と、分担するのがおすすめです。あとは、子どもか大人かは関係なく、家族でもキレイの基準は人それぞれなので、みんなが心地よく暮らせるように折り合いをつけていけたら良いですよね。

04 遠慮せずに助け合って、みんなで子育てしよう

――お2人が考える子どもにとって良い社会とはどんな環境でしょうか?

美雨さん:子どもが親以外の大人や多様な人たちと接することができて、大人が子どもの話をちゃんと聞いてくれている環境が大切だなと思います。大きい範囲のことで言うと、本当に子どものことを考えている教育や政府、知らない大人であっても自分のことを思ってくれる人がいるということを子どもが感じられる社会になったらいいなと思います。

あきえ先生:本当にそうですね。今、子どもの第三の居場所がどんどんなくなっていますよね。私たちが子どもの頃はわざわざ意識しなくてももっと近所付き合いがあって、家族や学校以外の大人も気にかけてくれているという実感があった気がします。でも、実際、私自身、子どもに祖父母以外の大人と触れ合う機会をあまりつくれていないなと思っていて。だから、もっといろんな大人と触れ合えるように、コミュニティのなかで育ててくということを意識していきたいなと思っています。そのためにも人が集える家を建てたいな(笑)。いろんな人とわちゃわちゃと子育てしたいですよね。

美雨さん:そうですね。それは親が用意してあげられる環境ですよね。私はありがたいことに本当にいろんな大人が娘を預かってくれて、きっとみんなの良いところをいろいろ吸収してくれているだろうなと思っています。

あと、自分の子どもを誰かに預けるとき、みんな迷惑をかけていると考えてしまう癖があると思うけど、申し訳ないとは思わないようにしています。子どもと触れ合うことで預かった側の人にもいいことあるかなって。だから、本当に“ありがとう”だし、大変なことあったら“ごめんなさい”だけど、絶対楽しい時間もあるし、子どもにとっても大人にとっても良い影響があると思うので、遠慮せずにみんなでどんどん預け合える環境をつくっていくべきだなと思います。

撮影場所:積水ハウス 駒沢シャーウッド展示場HUE
https://www.sekisuihouse.co.jp/liaison/region_lia02/reg13/hue/