掃除機をかけたり、テーブルや窓を拭いたり、
水回りを磨いたり…。
掃除は他の家事と比べて行なう場所も使う道具も
さまざまだから、ついつい億劫になりがち。
いつもキレイにしておきたい気持ちと、労力との
ギャップにストレスを感じることも少なくありません。
実際に皆さんは掃除とどう向き合っているのでしょうか。
積水ハウスでは、暮らしの多様な変化を捉えるために
長年にわたって生活定点調査を行なっています。
今回はその中から掃除にスポットを当て、
リアルな掃除事情や取り組み方の変化などについて
ご紹介しましょう。

生活定点調査とは

積水ハウスは30年以上前から暮らしのトレンドやニーズなどを把握し、これからの生活スタイルやより暮らしやすい住空間を研究・提案するため、多岐にわたる調査を実施しています。
そのひとつが特定のテーマを長期間追跡し、一定の期間ごとに同じ質問などを繰り返して行なう生活定点調査です。
現在は11のテーマに対して10年ごとの調査を継続的に実施。暮らしの幸せの追求、〝住めば住むほど幸せ住まい〟研究の一環として取り組み続けています。
今回ピックアップしたテーマは「掃除」。2014年と2024年の調査結果を比較しながら、10年で変化したポイントやこれからの掃除の在り方、空間づくりの工夫などをご紹介します。掃除について、ご家族で話し合うきっかけにしていただければと思います。

掃除に積極的な既婚男性が増加中

すでに2014年の時点で女性の社会参画は一般的でしたし、男性の家事参加や家族での家事分担の兆しはありました。そして10年を経た2024年、その考え方がさらに広まり〝みんなで家事〟の生活スタイルの定着が進んでいます。今回の生活定点調査〈掃除編〉でも男性家事参加の傾向が顕著に表れました。
既婚男性が掃除に関与することが増えた点は想像のおよぶ範囲ですが、特に着目したいのが掃除に取り組む姿勢の変化です。〝住まい全体の掃除を担当している〟〝決められた場所の掃除を担当している〟という掃除に積極的・主体的に取り組む男性回答が、10年前に比べて約10ポイント上昇。これまでは〝お手伝い感覚〟だったのが、〝自分ごと・わが家ごと感覚〟へと意識が大きく変化してきていると言えます。
掃除機やフローリングワイパーなどは家事ビギナーでも扱いやすく、他の家事に比べて取り組みやすいのが掃除。〝家事を始めるなら掃除から〟という男性が増え、掃除を起点にますます〝みんなで家事〟スタイルの定着が期待できそうです。

アラ30が最も掃除に主体的

既婚男性の主体的な取り組み意識が高まっているとお伝えしましたが、その傾向が顕著なのがアラ30世代です。〝住まい全体の掃除を担当している〟〝決められた場所の掃除を担当している〟を含む主体的な取り組みでは2014年から約16ポイント上昇。ほぼ2人に1人(49.8%)に達しています。
同時に既婚女性の回答で〝自分が掃除の中心人物、主担当〟という捉え方が最も低下しているのもアラ30世代。掃除を男性に任せる・男性が主体的に掃除をするという生活スタイルが、若い世代を中心に今後の潮流のひとつとなりそうです。
この結果は、社会でも家庭でも男女が同じように関わるのが当然という意識が高い世代であると同時に、共働きや未就学の子どもを持つ世帯が多いことが影響していると考えられます。
実際に家族形態別の調査結果を見ると、未就学の末子を持つ親子世帯の男性の主体的関与度は10年比較で約18ポイントもアップ。子どもが幼い家族では家事を夫婦で協力し合うことが大切になり、それが象徴的に表れたと言えるでしょう。

自然光に包まれたキッチン。収納や動線の工夫によって、心地よさと機能性を兼ね備えています。(GM BASE FUKUOKA)

高齢世代でも進む役割分担の意識

主体的に掃除に関与する男性の増加は、掃除の役割分担が進んでいることにつながります。お手伝い感覚・サポーター感覚で掃除に関わるのではなく、自分の役割・家族のルールとして掃除を担う意識が高まってきています。
その役割分担意識は、やはりアラ30世代で最も顕著ですが、高齢世代でも高まる傾向です。特に夫婦2人暮らし世帯にフォーカスすると、アラ30世代の15ポイントアップに次いで、高齢世代で約8ポイントアップ。子どもたちが独立し、定年後に夫婦2人で暮らすなか、掃除の役割分担が進んでいると考えられます。
今後は高い役割分担意識を持ったアラ30世代がアラ40・アラ50世代へとライフステージを重ね、今のアラ50・アラ還世代が定年を迎えて夫婦2人暮らしなることで、全世代を通して役割分担が定着していくのではないでしょうか。

(GM BASE FUKUOKA/福岡県)

男性の掃除担当は「浴室」が定番

ところで男性はどこの掃除を担当しているのでしょうか。トップは「浴室」で、10年前と変わらず男性定番の掃除場所です。次いで「洗面室」「リビング」「トイレ」の順になります(個室を除く主な空間)。
全体的に水回りの掃除担当の割合が高いのは、場所が独立していて掃除のタイミングに融通が利きやすいので、男性にとって担当しやすい場所だからだと言えそうです。
また、10年比較で着目したいのが「リビング」「ダイニング」の担当割合の増加。共に8ポイント以上アップしており、暮らしのメイン空間の掃除にも男性の意識が高まっています。
最近は料理が得意で日常的にキッチンに立つ男性も増え、近い将来にはLDKを含めた住まいの掃除を家族で上手に役割分担する生活スタイルが広まりそうです。

(GM BASE FUKUOKA/福岡県)

暮らしの中で掃除をルーティン化

夫婦や家族での役割分担が進んでいますが、掃除そのものにかかる労力や負担が減るわけではありません。普段の暮らしの中で掃除をいかに効率よくこなすかが肝心で、その工夫も10年で変化してきています。
まずは掃除のタイミング。LDKの掃除で調査したところ、2014年では「平日朝」「平日昼」「休日昼」が上位3位でしたが、2024年には「平日昼」が減って「休日朝」に置き換わりました。これは共働きで仕事と家事を両立する家族が増えた影響と考えられます。
また、掃除のタイミングを〝特に決めていない〟という人が減少したのも特徴です。家族みんなが時間を確保しやすい休日を掃除のタイミングに設定。普段の暮らしの中に計画的に掃除を組み込んで、ルーティン化することで効率よくこなそうとしている工夫が窺えます。

こまめにサッと掃除は10分以内に

10年前との比較では、ルーティン化とは別の生活変化も見られました。それは普段の掃除の頻度と所要時間の違いです。
まず掃除頻度が高くなり、週に2~3回以上掃除する人が増加。 さらに10分未満で掃除を済ませる人が6割以上に上っています。普段の掃除は〝こまめにサッと10分以内に〟というスタイルが主流になっています。
このスタイルは休日にシフトされがちな掃除の負担軽減にもなり、家族時間の充実にもつながると考えられます。

(フォレストプレイス香椎照葉ザ・テラス/福岡県)

掃除に効率的なLDKワンルーム

〝こまめにサッと10分以内に〟の掃除スタイルは今後も広まる傾向ですが、その効率性はLDKの空間構成の影響を大きく受けることがわかりました。
一般的にLDKの空間の構成は、L+D+K(LDKそれぞれが独立)・L+DK(リビングだけが独立)・LD+K(キッチンだけが独立)・LDKワンルーム(LDKがつながったワンルーム)の4パターンに分類され、家族の暮らし方などに添って計画されます。
2024年調査でこの4パターンについて掃除との関係を調べたところ、LDKワンルームで暮らす人が最も掃除を高頻度・短時間で済ませていることが多いという結果になりました。
〝こまめにサッと10分以内に〟の掃除スタイルを実践するには、LDKワンルームが効率的。家族のコミュニケーションを育みやすいというメリットに加え、これからの掃除のしやすさを高める空間づくりです。

子ども部屋掃除の親依存が長期化

住まい全体を見渡せば、LDKや水回りなどの家族共用の場所以外に個室の掃除も必要です。それぞれが自室を掃除するのが一般的だと思いますが、10年の調査比較で驚きの事実が判明しました。
それが子ども部屋の掃除。子どもの成長に伴い掃除担当が親から子どもへと移る流れは変わらないのですが、10年比較で特徴的なのが移行時期の変化です。
2014年には高校卒業後に子ども自身の掃除担当率が親を上回っていましたが、2024年では社会人になっても半数は親が担当しているという結果に。掃除の親依存が長期化する傾向です。
学校や塾、習い事などで日々忙しい子どもをサポートしたい親心が強まっているとも推測されますが、〝みんなで家事〟を考える上では検討すべき課題かもしれません。

(フォレストプレイス香椎照葉ザ・テラス/福岡県)

コードレスが掃除機の定番に

掃除を効率よく行なうには、掃除道具の整え方も重要なポイントです。普段の掃除でリビング・ダイニングで最も使われているのは、やはり掃除機。10年の歳月でコードレスタイプが大幅に増え、コード有りタイプと同じくらいの割合になりました。
ロボット掃除機も増加傾向で、特に共働き世帯での使用率は全体に比べて高まりつつあります。
逆にフローリングワイパーや粘着カーペットクリーナー、ハンディモップなどは減少傾向ですが、細かな部分や丁寧な掃除には有効な道具。掃除の仕方に合わせて上手に使い分けられていると考えられます。
また、ハウスクリーニング(掃除代行)の利用も夫婦・ファミリー世帯では増えており、2014年に6.4%だった利用率が2024年には11.1%に上昇。末子未就学の子どもを持つ家族では8.5%から20.5%と倍増を超えています。
道具やアウトソーシングを上手に使いこなすのが、これからの掃除スタイルになりそうです。

効率を高める掃除道具収納

日々の掃除を支えてくれる掃除道具を、いかに使いやすく収納しておくか。効率よく掃除するには、道具類の収納が大きな鍵を握ります。
特に〝こまめにサッと10分以内〟の掃除を実践するには、使う場所の近くに収納し、パッと取り出しやすくしておきたいもの。調査でも掃除機をリビング・ダイニングに収納している人が増えています。
そこでおすすめなのが、積水ハウスが提案している「リビクロ(リビングクローク)」。リビングまわりに集まる様々な物と一緒に掃除道具をすっきりと目隠し収納できます。
また、掃除道具をメインにしたコンパクトな収納「お掃除リビクロ」も有効。どちらもリビング付近にいつも使う掃除道具をまとめておけるので、家族の誰もがパッと取り出せてサッと使えるのが魅力。道具をわざわざ取りに行く手間もなく、気づいた時に気軽に掃除しやすくなります。
これらは独自の住生活研究から生まれた住まいづくりのアイデア。戸建て住宅をはじめ、そのノウハウはグランドメゾンのプランニングにも活かされています。

(グランドメゾン上原レジデンス/東京都)