イクメン白書
2020
47都道府県の20代~50代のパパ・ママ9400人に聞く
育休の実態を徹底調査!









発表!イクメン全国ランキング
積水ハウスが独自設定した
男性の「イクメン力」を決める4つの指標
積水ハウスでは、右記の4つを男性の「イクメン力」の指標として設定しました。
これら4指標5項目をそれぞれ数値化して、47都道府県別にランキング化し、「イクメン力」を算出しました。
佐賀県イクメンランキング 1位
205点
夫が行っている家事・育児の数 | 5位 | 6.89個 |
---|---|---|
夫はイクメンと思うか | 1位 | 0.33 |
育休取得平均日数 | 10位 | 5.64日 |
家事・育児時間(週、平均) | 8位 | 15.63 時間/週 |
家事・育児への幸福度 | 11位 | 0.98 |
熊本県イクメンランキング 2位
192点
夫が行っている家事・育児の数 | 9位 | 6.76個 |
---|---|---|
夫はイクメンと思うか | 2位 | 0.33 |
育休取得平均日数 | 8位 | 5.81日 |
家事・育児時間(週、平均) | 19位 | 13.62 時間/週 |
家事・育児への幸福度 | 10位 | 0.98 |
福岡県イクメンランキング 3位
191点
夫が行っている家事・育児の数 | 3位 | 6.91個 |
---|---|---|
夫はイクメンと思うか | 12位 | 0.13 |
育休取得平均日数 | 24位 | 2.95日 |
家事・育児時間(週、平均) | 2位 | 16.54 時間/週 |
家事・育児への幸福度 | 8位 | 1.00 |
総合では九州勢がTOP3を独占!
「イクメン力」のなかでも各県で得意な部門が異なるようです。
夫の育休取得日数では「東京都」が1位と、他県をリードしていました。妻が評価する
イクメン県には総合上位県の顔ぶれが揃いましたが、
各県をあげての取り組みが成果をあげつつあると言えそうです。

日本人のイクメン意識
うちのパパはイクメン?
20代のイクメン意識は
50代の約1.4倍
家事育児参加意識への
世代間ギャップ
男性に「自分はイクメンだと思うか」女性に「夫はイクメンだと思うか」を聞いたところ、50 代では41.1%、20代では56.7%と約1.4倍の結果に。
若い世代の方がイクメン意識が高いが、2019年は50代34.2%、20代61.3%と約2倍の開きがあり、世代間の意識差は縮まってきているのかもしれません。

育休取得の実態
育休取得に賛成?
賛成
賛成
育休をしたい・してほしい?
取得したい
取得させたい
実際に育休を取得した満足度は?
男性の育休取得率
(昨年9.6%)
育休満足度
(昨年67.5%)
なぜ育休を取得しない?
職場で育児休業
制度が整備されて
いないから
職場が育児休業
制度を取得しにくい
雰囲気だから
職場で周囲に
迷惑をかけてしまう
と思ったから
男性の育休は、
どうすれば増える?(複数回答)
育児休業中の
給料・手当が
変わらない
育児休業後も
業務の調整がつく
直属の上司が
理解・サポート
してくれる
育休取得率は微増だが、
満足度は81.8%に向上!
男女ともに8割以上が制度に賛成。そして、実際に取得した男性の 満足度は81.8%に向上しており、育休の質的向上がうかがえます。しかし、「制度が未整備」「取りにくい雰囲気」など職場環境が育休取得を阻む大きな要因となっています。もっと取得を増やすには、制度だけでなく、周囲の理解も必要なようです。

家事育児と幸福度
家事育児に幸福を感じる?
育休取得
していない人
育休取得した人
1ヶ月以上育休取得した人
男性に家事・育児スキルはある?
家事スキル
幸福を感じる層
幸福を感じない層
育児スキル
幸福を感じる層
幸福を感じない層
仕事への影響はある?
生産性向上に役に立った
幸福を感じる層
幸福を感じない層
会社への愛着が増した
幸福を感じる層
幸福を感じない層
家事育児に幸福を
感じる男性は、
仕事の生産性や
愛社精神にも効果あり!
家事育児に幸せを感じる男性は、幸せを感じない男性に比べ家事・育児スキルが高く、仕事に対する生産性の 向上や会社への愛着など、会社へのロイヤリティも高くなっています。

家事育児と企業イメージ
育休制度が進む企業をどう思う?
企業イメージが
良くなる
生産性が高い
企業だと思う
就職したい
男性の育休制度が
充実している会社は、
社会的にも評価が高い!
男性社員の育休取得が進んでいる企業のイメージを聞くと、すべての項目で好評価。男性の育休取得は本人や家族だけでなく、職場や企業にもメリットがあり、社会にも貢献できる、 “四方よし”な制度と言えそうです。
調査概要
- ◼️実施時期
- 2020年7月14日(火)~7月22日(水)
- ◼️調査手法
- インターネット調査
- ◼️調査対象
- 全国47都道府県の小学生以下の子どもがいる20代〜50代の男女9400人
人口動態に基づきウエイトバック集計※構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計しても必ずしても100%にならない場合があります。
前野隆司
1962年、山口県生まれ。
1986年に東京工業大学 理工学研究科 機械工学専攻修士課程修了後、キヤノン株式会社に入社。
1993年に博士(工学)学位を取得(東京工業大学)し、
2008年から慶應義塾大学 システムデザイン・マネジメント(SDM)研究科教授に就任、
2011年より2019年までSDM研究科委員長兼任。
2017年から同大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼任。
男性育休普及と幸せについて
幸福学・幸福経営学の研究を行なっている、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司です。幸福学とは、幸せのメカニズムを探るとともに、人々を幸せにするための製品、サービス、組織づくりを行うための学問です。研究の一環として積水ハウスさんとも「住めば住むほど幸せ住まい」の共同研究を推進させていただいています。
この度のイクメン白書2020を拝読しました。調査結果によると、育児・家事に幸せを感じている男性ほど家事・育児に積極的で、家事スキルが高く、家庭内だけでなく仕事面にも良好な影響が及んでいることがわかります。また、家事・育児に取り組んでいる男性は女性以上に家事・育児に幸せを感じているという興味深い結果が出ています。さらに、イクメン力全国ランキングでも、積水ハウスの社員は全国平均を上回っており、国内でも極めて高いレベルにあることが見て取れます。これらの点から、同社の取り組みの先進性に強く共感します。
私が株式会社カラダノートさんとともに行った調査においても、家事を夫と妻が同じくらい行っている人が最も幸せで、夫または妻に偏っている人は幸福度が低下する傾向が見られました。このことから考えても、男性が育児休業を取得するなど、家庭生活への貢献度を高めることは、間違いなく家族の幸せに寄与するものと言えるでしょう。もちろん、幸せな社員は創造性も生産性も高いことが知られていますので、ワーク&ライフを含めたトータルな幸福度を高める効果もあるものと考えられます。以上により、幸せな活動であるイクメン休業制度を心より応援しています。
ただし、国際的に見ると、日本の現状は遅れているとも感じます。欧米では男女平等が日本以上に進展していますので、もはやイクメン白書を出す必要がないばかりか、もしかしたらイクメンという言葉自体、男女差別的な表現だという意見も出るかもしれません。男女平等の問題に限らず、すべての人の個性が尊重され、誰もが活き活きと生きることのできる社会が実現できることを心より願っています。様々な活動を通して、「わが家」を世界一 幸せな場所にするのみならず、会社を同率一位で世界一幸せな場所にするためにも、イクメン休業をはじめとした社員と社会の幸せのための取り組みを積極的に推進されている積水ハウスさんを心より応援しています。
イクメン白書で浮かび上がる今どきの「イクメン」
治部れんげ
1997年一橋大学法学部卒。日経BP社にて経済誌記者。2006~07年、ミシガン大学フルブライト客員研究員。2014年よりフリージャーナリスト。2018年、一橋大学経営学修士課程修了。メディア・経営・教育とジェンダーやダイバーシティについて執筆。現在、昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。東京大学大学院情報学環客員研究員。日本政府主催の国際女性会議WAW!国内アドバイザー。東京都男女平等参画審議会委員(第5期)。豊島区男女共同参画推進会議会長。朝日新聞論壇委員。公益財団法人ジョイセフ理事。UN Women日本事務所による広告のバイアスをなくす「アンステレオタイプアライアンス日本支部」アドバイザー。
著書に『炎上しない企業情報発信:ジェンダーはビジネスの新教養である』(日本経済新聞出版社)、『稼ぐ妻 育てる夫:夫婦の戦略的役割交換』(勁草書房)等。2児の母。
「イクメン白書」から見えてきた今どきのイクメン像
今回の調査結果で興味深かったのは、佐賀、熊本、福岡という九州三県がトップ3位を独占したことです。これまで「九州男児は保守的」とされてきたイメージを覆す画期的な内容だと思いました。もしかしたら「九州男児」に対するイメージ自体が特定地域と性役割の強さを結び付ける「ジェンダーバイアス」なのかもしれません。
私は数年前、熊本県庁の企画で地元大学生向けにワークライフ・バランスに関する講演をしました。そこに参加した大 学生100数十名の7~8割が「将来、家庭を持った後も共働きを続けたい」と言ったのです。大学生は男女共に、子どもを持ったり家を買ったりしたら、男性ひとりで家計を支えるのは難しい、という現実的な見通しを持っていました。そのため、共働き、家事育児分担を当然と考えていたのです。
若い世代の意識は大きく変化しています。昨年の本調査を関西の大学で紹介したところ男子学生達から「そんなことができると思わなかった」「僕も育休を取りたい」という感想が寄せられました。また、都内の女子大で積水ハウスの男性育休について話したところ「うれしくて泣きそうになった」という声がありました。男女共に育休を取れる会社、社会は次世代の大きな希望になるのです。
これからいかに男性育休を日本で広めていくか。本調査の「イクメン力」を5項目に分けて各項目3位まで順位を算出した部分が参考になります。14の異なる都道府県がランキング入りしていることから、要素分解すると得意なことが各県で違うことが分かるからです。
この結果を踏まえ、各県が得意分野を掘り下げて調査・情報共有することを提案したいです。例えば東京都は、男性の育休日数を増やす方法、佐賀・熊本県は妻からの夫に対する評価が上がるポイント、鳥取県は夫の家事育児時間を増やす方法、高知県は夫が家事育児で幸せを感じる背景などについて強みがあるようです。
特に「1カ月以上」の男性育休をいかに増やせるか、今後のカギになるでしょう。本調査によれば男性育休の不満第1位が「期間が短すぎる」です。当面は「1カ月」を目標に取得を推進することが、社会を変える現実的な方法になるでしょう。
OECDとEU加盟国を対象としたユニセフの調査"Are the world’s richest countries family friendly? :Policy in the OECD and EU"(Chzhenほか,2019)によれば、日本の法律は、男性に対して最も手厚い育休制度を保障しています。これは、男性が使える有給の育児休業が長いことを意味します。つまり、日本には充実した制度があり、課題は「職場の雰囲気」や「人員不足」ということです。
本調査から、男性育休に賛成する人が 8割もいるのに、実際の取得に賛成する人は男性6割、女性5割というギャップがあることが分かります。制度と実情の乖離(かいり)という課題を持つ日本では、企業や雇用主が男性に育休取得を後押しすることが効果的です。また、女性も「家事育児は自分の仕事」という思い込みから自由になり、配偶者に任せるようにしたいものです。