男性育休白書
2023

47都道府県の20代~50代のパパ・ママ9,400人に聞く
育休の実態を徹底調査!

RANKING
発表!男性の家事・育児力全国ランキング

積水ハウスが独自設定した
男性の「男性の家事・育児力」を
決める4つの指標

4つの指標

積水ハウスでは、右記の4つを男性の「男性の家事・育児力」の指標として設定しました。
これら4指標5項目でそれぞれ数値化して、47都道府県別に
ランキング化し、「男性の家事・育児力」を算出しました。

高知県男性の家事・育児力ランキング 1位

214

男性(夫)が行う家事・育児の数 1 8.0
男性(夫)の家事・育児関与度 15 0.51
育休取得日数 8 30.9
男性(夫)の家事・育児時間 1 19.3
時間/週
家事・育児幸福度 1 1.19

鳥取県男性の家事・育児力ランキング 2位

195

男性(夫)が行う家事・育児の数 5 6.8
男性(夫)の家事・育児関与度 19 0.45
育休取得日数 5 32.7
男性(夫)の家事・育児時間 6 15.9
時間/週
家事・育児幸福度 10 0.97

佐賀県男性の家事・育児力ランキング 3位

191

男性(夫)が行う家事・育児の数 13 6.5
男性(夫)の家事・育児関与度 7 0.57
育休取得日数 11 30.2
男性(夫)の家事・育児時間 2 19.0
時間/週
家事・育児幸福度 16 0.90
部門別ランキング3位までの都道府県と全国平均のスコア
※小数点第2位(ウエイト平均は小数点第3位)を四捨五入しているため、表示されたスコアが同じでも順位が異なる場合があります。

FACTS
育休取得の実態

育児休業、取得した?

2023

24.4%

男性の育児休業の取得率

2019

9.6%

男性の育児休業の取得率

2023

23.4日

男性の育休取得日数

2019

2.4日

男性の育休取得日数

育休を取得したい?
パートナーに取得してもらいたい?

2023

取得したい69.9% 取得してもらいたい64.7%

男性と女性の取得意向

2019

取得したい60.5% 取得してもらいたい49.1%

男性と女性の取得意向

結果

5年間で
男性の育休取得率・日数、
さらには意識も大きく変化
取得日数は約10倍に!

「男性育休白書」の作成を開始した2019年の結果と比較すると、男性の育児休業取得日数は平均で2.4日から23.4日と約10倍に変化しました。また、育休を取得したい男性も取得してほしい女性も過去最多となり、意識と行動の両方が変化していることが分かります。

TOPICS
改正育児・休業法の影響

2022年から「改正育児・介護休業法」が段階的に施行され、
施行まもなくと現在による職場の変化をマネジメント層に聞きました。

男性社員の育休を職場で促進している?

2023

43.0%

育休を促進している

2019

41.3%

育休を促進している

同様に働くパパ・ママ層に職場の変化を聞きました。

職場で男性社員の育休が促進されていると感じる?

2023

36.2%

育休が促進されていると感じる

2019

33.3%

育休が促進されていると感じる

結果

この1年で
育休の取得促進状況の変化は
緩やかだが、確実に

2022年は育休に関連する法改正が複数ありました。そのうちの一部が施行されていた2022年の本白書の調査時と、施行されてから一定期間がたった2023年の調査時で、育休取得促進状況が飛躍的に変化したわけではありません。それでも数%伸びており、緩やかに変化している様子が見てとれます。育休を取得したいと考えた際に、それを後押ししてくれる環境があると感じていれば、取得のハードルはぐっと低くなりそうです。

TOPICS
育休取得に関する気持ちの変化

育休の取得に不安を感じる?

2023

70.2%

不安を感じる

2019

77.0%

不安を感じる

育休の取得の何に不安を感じる?

2019年より減少した不安
職場で周囲に迷惑をかけてしまうのではないか(2019年より5.3%減少)、取得時の引継ぎがうまくいくかどうか(2019年より1.6%減少)
2019年より増加した不安
職場復帰後の引継ぎがうまくされるかどうか(2019年より2.4%増加)、復帰後のキャリアに悪影響があるのではないか(2019年より6.7%増加)

結果

育休取得の不安内容に変化
「復帰後」の業務やキャリアに
関心集まる

5年前と比べ、育休取得への不安は減少しています。不安の内容を詳しく見てみると、取得時に関する不安は減少し、復帰した後の不安が増加しています。法改正などもあり、育休取得促進の動きが活発化している中で、取得する未来を具体的に描く人が増え、復帰後の仕事への影響に対する関心が高まっているのかもしれません。職場に男性の育休取得者がいれば、「取得のその後」の体験談を社内で共有することなどが不安を軽減する1つの手段になりそうです。

IMPACT AT WORKPLACE
職場へのポジティブな影響

働くパパ・ママ層と、企業で働く上司や同僚・部下などの一般社員層800人、
およびマネジメント層400人に聞きました。

男性社員の育休取得推進の取り組みに、
企業風土の変化を感じる?

企業風土の変化を感じる
企業風土の変化を感じる人の割合

自分も有給など休む機会があると思うので
お互い様だと思う?

お互い様だと思う
お互い様だと思う人の割合

育休取得によって職場や家庭でお互いを
思いやる気持ちが生まれたと思う?※自身または周囲に育休取得者がいると答えた人を対象

生まれたと思う
生まれたと思う人の割合

結果

育休の取得は
職場や家庭で互いを思いやる
気持ちも醸成する

育休の取得は、取得者本人やその家族だけではなく、職場の風土の変化につながり、周囲の人にもポジティブな影響を与えることが分かります。育休は取得するタイミングや期間を計画しやすい休業であり、欠員が発生する場合の準備や引き継ぎなどの経験にもなります。それだけではなく、取得をきっかけにそれぞれの事情に意識を傾けることで、互いを思いやるという気持ちの変化ももたらすようです。

調査概要

①47都道府県のパパ・ママ9,400人に聞く男性の家事・育児力実態調査

■実施時期
2023年6月9日(金)~6月20日(火)
■調査方法
インターネット調査
■調査対象
全国47都道府県別に、配偶者および小学生以下の子どもと同居する20代~50代の男女200人計9,400人
男性の家事・育児力ランキングについては人口動態12歳未満のお子さまとの同居率もウェイトバック値に加味しています。

②マネジメント層400人に聞く、男性社員の育休取得に対する意識調査

■実施時期
2023年6月9日(金)~6月20日(火)
■調査方法
インターネット調査
■調査対象
従業員10人以上の企業の経営者・役員、部長クラスの男女400人

③一般社員層800人に聞く、男性社員の育休取得に対する意識調査

■実施時期
2023年6月9日(金)~6月20日(火)
■調査方法
インターネット調査
■調査対象
有職かつ、マネジメント層を除く、一般社員クラスの20代~50代の男女800人

*本調査に記載の数値は、小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。

COMMENTS
男性育休白書で浮かび上がる
今どきの「男性の家事・育児力」

PROFILE

治部れんげ

治部れんげ

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。日経BP社にて経済記者を16年間務める。ミシガン大学フルブライト客員研究員などを経て2021年4月より現職。内閣府男女共同参画計画実行・監視専門調査会委員、日本ユネスコ国内委員会委員、東京都男女平等参画審議会委員、豊島区男女共同参画推進協議会会長、日本メディア学会ジェンダー研究部会長、日本テレビ放送網株式会社 放送番組審議会委員など。一橋大学法学部卒、同大学経営学修士課程修了。著書に『稼ぐ妻 育てる夫:夫婦の戦略的役割交換』(勁草書房)、『炎上しない企業情報発信:ジェンダーはビジネスの新教養である』(日本経済新聞出版社)、『「男女格差後進国」の衝撃』(小学館)、『ジェンダーで見るヒットドラマ―韓国、日本、アメリカ、欧州』(光文社)、『きめつけないで!「女らしさ」「男らしさ」:みんなを自由にするジェンダー平等』1~3巻(汐文社)等。

ゆっくりと確実な変化を後押ししてきた

私は2019年から「男性育休白書」や男性育休推進の取り組みに参加してきました。この取り組みの開始と同時期に公開されたユニセフの調査によれば、日本は世界で最も男性育休制度が手厚い国でありながら、取得率が低く、その大きな要因は組織文化、周囲への遠慮でした。

積水ハウスは、2018年秋から男性社員の1カ月以上の育休完全取得を導入しています。これは、日本の仕事文化を変える大きな挑戦だったと思います。特に、男性育休を阻む「抵抗」に関する言説は、最近1、2年で弱くなってきたことを感じます。大きな理由は15ページある通り、「育児・介護休業法」の改正です。今や多くの企業が男性育休を「取れたらラッキー」ではなく「取れないとまずい」と考えるようになりました。

今回の白書には、このような社会の変化が表れていると思います。男性の育休取得日数が2.4日から23.4日と約10倍になり、育休を取りたい男性も、配偶者に取ってほしいと考える女性も増えています(12ページ)。

変化は、若い世代で顕著です。昨年冬、勤務先の東京工業大学で私が担当している「未来社会論」という授業に、育休を取得した積水ハウス男性社員の方と人事関係者の方にお越しいただきました。ジェンダーや働き方の観点から、望ましい未来の社会を考える、という趣旨の授業です。

この白書でも繰り返し提示してきたように、今の20代は、男性も育児休業を取り家庭生活にコミットしながら働きたいと考えています。大学の授業で男性も育休が取れる、という事例や制度を伝えると「子どもが好きだからぜひ取りたい」「男女平等がいいから自分も育児をしたい」という反応が男子学生から当たり前のように返ってきます。

また、自分一人で頑張って、家事も仕事もやらなければと思い込んでいた女子学生に対し、授業にゲストで来てくださった積水ハウスの女性管理職の方から「あなた一人でやらなくてもいい」と伝えていただいた場面もありました。カップルや家庭内のジェンダー平等を、実際にビジネスパーソンから話していただくことは、大きな変化のきっかけになるのです。

最後に、この白書の特徴である都道府県ランキングは、4年間を通じて西高東低の傾向が続いていました。高知県の取り組みについては、官民共同の取り組みについて知事の解説がありますので、他の県でも参考になると思います。そして、今回は岩手県の男性育休取得平均日数が43日と長かったことも興味深いです。県で独自の取り組みがあったのか、要因を知りたいと思いました。

日本全体を見ると、男性の育休取得率は17%と過去最高ですが、まだ2割に達していません。今後、父親の育休が当たり前の社会を作るための様々なヒントが白書にはつまっていると思います。

PROFILE

中里英樹

中里英樹

甲南大学文学部教授。専門は家族社会学。1996年-1997年インディアナ大学社会学部non-degree graduate student。2006-07年、2011-12年南オーストラリア大学Centre for Work and Life客員研究員。2008年より現職。2000年頃から子育て期のワーク・ライフ・バランスを研究し、2012年から育児休業の国際研究ネットワークに参加。現在は、スウェーデン、ドイツ、オーストラリア、韓国などとの比較を交えて、父親の育児休業取得に関する研究を行っている。男女共同参画関連の審議会委員や市民・企業向け研修講師等の活動も行う。近著に『男性育休の社会学』(さいはて社)、「〈わたし〉からはじまる社会学―家族とジェンダーから歴史、そして世界へ』(共編著、有斐閣)などがある。

男性育休の次のステップ
キャリアのジェンダー平等を
視野に入れた
育休取得のあり方に向けて

男性育休を取り巻く状況の急速な変化

本白書に示された2023年の調査における男性の育休取得率は24.4%です。この結果は、小学生以下の子どもがいる男性本人、または同様の女性のパートナーの中に、2023年の調査時点で育休の取得を経験した人が4人に1人いることを示しています。

つい最近(2023年7月末)に厚生労働省が公表した「令和4(2022)年度雇用均等基本調査」の取得率は17.13%です。調査対象の選び方や取得率の計算の仕方が違うので、この2つの調査を単純に比較することはできません。ただ、厚労省の調査が2021年の10月までの1年間に子どもが生まれた従業員についての調査であるのに対し、本白書の調査は今年の調査実施日までに子どもが生まれた人も含んでいるので、より最近の変化を反映していると見ることができます。そして、その割合がこの3年間で急速に上昇しているのです。これは、2021年の「育児・介護休業法」の法改正と2022年4月からの段階的な施行により、職場での取得の周知と意向確認が義務付けられたことや、取得率の公表も見据えて、企業の中で男性の取得を促す取り組みが広がっていることをうかがわせる結果です。

さらに、平均取得日数が2022年調査の8.7日から2023年の23.4日に大幅に延びていることも、注目に値します。法改正には取得期間を直接伸ばすような働きかけが含まれている訳ではありませんが、積水ハウスの「男性社員1カ月以上の育児休業完全取得」に見られるように、ある程度長期の取得を促す取り組みをする職場が増えていることが背景にあると思われます。

「男性も育休取得が必要」という認識へ

このような変化の一方で、育休を取得しない男性の方がまだはるかに多く、この調査でも「給料・手当の減少」「職場での周囲への迷惑」「引き継ぎがうまくいくかどうか」「復帰後のキャリアへの悪影響」など、男性の育休取得をめぐる不安がうかがえます。このような課題はさまざまな研究でも指摘されてきたもので、こうした理由で男性の取得は難しいという意識は根強く残っています。

しかし、このような不安や問題は女性が取得する場合でも生じるはずです。それでも女性の場合、1年以上にわたって取得することを前提として、実際にそのように取得する、あるいはそれが困難な職場の場合、離職を選択してきたというのが現実でした。ということは、実は女性と比較して男性の取得率や期間が違うのは、「取らなければいけない」という必要性があるかどうか、それを感じているかどうかの違いが大きいのではないでしょうか。

本白書で示された変化の中で、わたしが特に注目したのは、「パートナー男性に育休を取得してほしい」と考える女性の割合の増加です。これまでは、パートナーの仕事の状況、取得した場合の家計への影響、そもそも取得したところで家事・育児の負担は減らないのでは、といったことを考えて、女性の側もパートナーの育休取得を積極的に望んでいないところがありましたが、それが変化してきたのです。

2022年10月からの「産後パパ育休」の導入で、出産後に両親が共に子育てをスタートする機運が高まっています。この時期の育休は、「それで終わり」ではなく、家事・育児の全体を男性が経験し、パートナーの職場復帰時などの再度の育休取得を含め、2人のキャリア・人生を一緒に考え始め、男性も「自分が取らなければならない」という必要性に気付く機会となるのではないでしょうか。

企業としても、男女を問わず社員が家族を含めてキャリアを考えるのをサポートしていくことが、男性の育休取得率アップや「1カ月以上の育休取得」の促進に続く次のステップとなるでしょう。