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持続可能な社会に向かうために住宅メーカーの本業を通じた社会的責任として、住まいの長寿命化、住環境創造をキーワードとした住まいづくりをめざします。
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次世代省エネ仕様の標準化などによる民生部門の環境負荷の低減に貢献します。
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グループ会社とも協力して新築施工現場のゼロエミッションを進めていきます。
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免震住宅をはじめとする安全・安心な住宅や緑豊かな街並みづくりによって、豊かな社会資本の整備に努めます。
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お客様をはじめとしたステークホルダー(利害関係者)に対して説明責任を果たします。
自然環境の破壊、犯罪、戦争など、さまざまな社会問題が深刻化する中で、社会は持続可能な方向への転換を迫られています。では、持続可能な社会の実現に向けて、積水ハウスがどのような社会的責任を果たすべきなのか?― 私は、
住宅をつくるという本業を通じて大きな役割を果たすことができる
と考えています。住まいは家族の原点であり、社会の原点、そして地球環境の原点であるからです。住まいを変えることによって社会を変えていきたいと思っています。その方向性のひとつとして当社は「住まいの長寿命化」を掲げています。
住まいを長寿命にすることで環境への負荷が少なくなるだけでなく、安心して暮らせる社会づくりにもつながる
からです。
当社は2003年に持続可能な社会に向けたビジョンを発表しました。それは、
「住まいの提供を通じて、地球生態系本来のバランスを基本としながら、すべての人々が快適に暮らせる社会の構築に寄与すること」
。このビジョンを実現するためには長期的なシナリオが必要です。私たちは、「エネルギー」「資源」「化学物質」の3つの分野で取り組みの柱となる指針を定めました。それらの指針に沿って、今、積水ハウスは動き始めています。
例えば、エネルギーの効率的な利用という側面では、2003年の8月に大手住宅メーカーでは初めて、すべての戸建住宅で「次世代省エネ仕様」を標準化しました。これにより、一般的な「新省エネ基準」の住宅に比べてCO
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の排出量が約35%も削減できる計算になります。また瓦型で家のシルエットを壊さない太陽光発電システムを標準搭載した「ダインズ・バリュー
」という新しい商品も発売しました。
また、資源の有効利用という観点から、2003年度には新しい試みを始めました。それは自社で施工・販売した戸建住宅をお客様から買い取り、リフォームした上で再び販売するという事業です。これまでは、不要になった住宅は壊され大量の廃棄物を出していました。しかし、時代に合わせて間取りを変更したり、断熱性を高めたり、高効率の設備を入れるなど、大幅なリフォームを施せば、まだまだ快適に住み続けることができるのです。新築するよりも廃棄物の量や施工に必要なエネルギーが大幅に削減できるだけでなく、住宅の有効な資産活用が可能となります。
2002年度に達成した工場でのゼロエミッションに続いて、2005年度中に新築施工時の廃棄物をゼロにすることも新たな目標に設定しました。新築に先立つ古い建物の解体に伴う廃棄物についてはこれからの課題ですが、効率的な機械解体の導入など着実に進めてまいります。
また人体や環境に有害な物質の使用を可能な限り削減していくために日々研究を重ねており、2003年7月着工分からはすべての戸建住宅で、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」の定める最高レベルを超えた「空気環境」を実現しています。
住まいが変われば環境が変わる。この信念をもって取り組みを続けていきます。
住宅は個人の資産であるとともに、社会の資本でもあります。積水ハウスは、良質な社会資本としての住まいを提供することに力を注いでいます。これは、
街との関わり、コミュニティづくりまでを考えた良質な住まいを提供することで、将来にわたって安心で快適な、良質な社会資本づくりにつながる
からです。2003年9月には、当社の免震住宅の性能を確認するため、実際の建物を用いて実験を行いました。これにはかなりのコストがかかりましたが、当社の開発した免震住宅の性能の高さが証明されました。耐震性能による安全性の確保を越えて、地震の揺れによる不安からさえもお客様を解放する「安心」な住まい。こういった性能がこれからの住宅に求められるのだと考えています。
防犯についても、標準仕様で基本性能を向上させたほか、ITと24時間有人警備によって街ぐるみで先進のセキュリティーを備えた大型分譲地も好評です。
安心して快適に暮らせる家であれば、愛着を持って長く住んでいただけ、世代を超えて住み継がれることで家族の絆やコミュニティーが育まれま
す
。
また今、少子高齢化問題などが社会不安として語られていますが、この面でも住まいが果たせる役割は少なくありません。私は、個人的には日本人の暮らし方の理想として、ある姿を描いています。それは3世代が同居する大家族の姿。それも夫が妻の実家で暮らす、いわば「サザエさん一家」が理想だと思っています。
この古いけれども「新しい大家族」の姿によってさまざまな社会問題が解決に向かうのではないか
と思っています。
例えば子どもの教育の問題。子どもはおじいちゃんやおばあちゃんの行動や言葉の中から、道徳の心や社会での基本的なルールを学ぶことができます。新しい時代の大家族からは、女性の社会進出や老人介護といった今日的な問題解決のひとつの糸口も見えてくるかもしれません。
この一例のように、当社が大家族のどの世代も快適に暮らせる一回り大きなゆとりのある住環境を提供することで、このような家族の姿を実現することができるのではないかと考えています。そして、ひいてはさまざまな社会問題の改善につながっていくのではないかと思います。
社会が変わり、家の機能が変わっても、家や、そして家族が私たちの心の拠り所であることに変わりはありません。
多様な欲求に応える魅力的な住まいづくりで新しい生き方、考え方を支え、これを通じて社会を持続可能な方向にリードする
。当社は強い志を持ってこれを進めてまいります。
本報告書では、私たちが2003年度に行った主な取り組みをまとめています。持続可能な社会に向かうためには、お客様をはじめとする多様なステークホルダーの方々とのコミュニケーションが重要です。本報告書で当社の考え方と取り組みをご理解いただき、またご意見をいただくことで、皆様とともに前進していきたいと思います。