譲渡所得にかかる税金の基本

税理士

石川 誠

石川会計事務所 所長

譲渡所得とは、資産の譲渡にともない発生する利益のことで、これに対する税金は、事業所得や給与所得などとは分離して計算するなどの留意点がありますので、しっかりと理解することが大切です。
今号では、譲渡所得にかかわる税のポイントについて解説します。

1.資産を譲渡したときの利益を譲渡所得といい、税金がかかります。

事業用の商品などの棚卸資産、山林、減価償却資産のうち一定のものなどを譲渡した場合は、別の所得として課税されることになります。

資産の譲渡による所得であっても、譲渡所得ではなく、事業所得や雑所得、山林所得として課税されるものがあります。たとえば、事業を行う者が商品、製品、半製品、仕掛品、原材料などの棚卸資産を譲渡した場合の所得は事業所得となります。したがって病医院で患者に薬を出す(譲渡する)ことは、棚卸資産の譲渡にあたりますので事業所得となります。
不動産所得や山林所得として課税されるものや、事業とはいえないまでも雑所得を生ずる業務を行っている場合、その資産を譲渡した所得は雑所得となります。
また、生活用動産の譲渡による所得は課税されません。たとえば、家具、什器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。しかし、貴金属や貴石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は課税されますので注意が必要です。

■譲渡所得の対象となる資産

土地、借地権、建物、株式等、特定の公社債、金地金、宝石、書画、骨とう、船舶、機械器具、漁業権、取引慣行のある借家権、ゴルフ会員権、特許権、著作権、鉱業権、土石(砂)などが含まれます。

なお、人にお金を貸したときの貸付金や売掛金などの金銭債権は除かれます。

2.譲渡所得の計算の仕組み

土地や建物、株式等の資産とそれ以外の資産では異なりますので注意してください。

【土地や建物、株式等以外の資産の譲渡】

ゴルフ会員権など、土地や建物以外の資産の譲渡による所得は、事業所得や給与所得などの他の所得と総合し、一般の累進税率を適用して税額を計算します。このとき譲渡した資産の購入から売却までの所有期間が5年を超えるものを長期譲渡、5年以下のものを短期譲渡といいます。短期譲渡の譲渡所得は次のように計算します。

譲渡所得の特別控除額は50万円(譲渡益が50万円より少ないときはその金額)です。なお、長期譲渡の場合は、譲渡所得の金額の2分の1の金額を他の所得と合計することになります。

【土地や建物、株式等の譲渡】

土地や建物の譲渡による所得は、他の所得と分離し、特別の税率を適用して税額を計算します。この場合、譲渡した年の1月1日現在で所有期間が5年を超えるものを分離長期譲渡所得、5年以下のものを分離短期譲渡所得といいます。

分離長期譲渡所得の場合、原則として譲渡益に対し15%の税率で所得税と5%の住民税が課税されます。分離短期譲渡所得の場合、原則として譲渡益に対し30%の税率で所得税と9%の住民税が課され、長期譲渡所得よりも税負担は重くされています。

株式等の譲渡益については、平成15年分以降は、他の所得と区分して税金を計算する「申告分離課税制度」となっています。 また、特定口座制度(証券業者等が年間の譲渡損益を計算)が設けられており、特定口座での取引では、源泉徴収選択口座かそれ以外の口座(簡易申告口座)を選択することができます。 さらに、源泉徴収選択口座内における年間取引の譲渡損益については、確定申告不要又は確定申告を選択することができます。

3.よくある譲渡ケースと税金について

よくあるご質問について解説します。

Q ゴルフ会員権を売りたいのですが、その税金の計算の仕組みを教えてください。

A ゴルフ会員権を売却したときの所得は、譲渡所得として事業所得や給与所得などの所得と合わせて総合課税の対象となります。
この場合の所得金額の計算は、その会員権の所有期間に応じて次のとおりとなります。

ゴルフ会員権を売ったことで生じた損失は、事業所得や給与所得など、他の所得と損益通算することができますので、手持ちの会員権であまり使わないものは譲渡することを検討する必要があります。ただし、ゴルフ場経営法人が破産した場合など損益通算できない場合があります。

Q 医療法人の出資持分の払い戻しや譲渡にかかる税金はどのように計算されるのですか。

A 医療法人(持分あり)の社員(出資者)が退社する場合、出資持分に応じた残余財産の払い戻しを受けるわけですが、これに替えて出資持分を第三者に譲渡する方法もあり、この場合、医療法人の出資持分は税法上有価証券に準じた取り扱いとなるため、税法上は非公開会社の株式の譲渡と同様に課税されます。つまり、他の所得とは総合せず、申告分離課税により譲渡所得の20%(所得税15%、住民税5%)が課税されます。

なお、社員の退社にともなう持分の払い戻しにおける払い戻し額と出資額との差額は配当所得としてみなされ、他の所得と合算されることになります。このときの払い戻し額は退社時点での現在価額(時価)となっていますが、評価方式についてはケースバイケースですので専門家にご相談ください。

Q 株式投資で損をしたのですが、他の所得と相殺することはできますか。

平成15年1月1日以後に上場株式等を証券業者などを通じて譲渡したことにより生じた損失の金額のうち、その年の株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上控除しきれない金額については、確定申告することにより、翌年以後3年間にわたり、株式等の譲渡所得等の金額から繰越控除できます。
しかし、申告分離課税とされる株式等を譲渡したことにより損失が生じた場合には、他の株式等の譲渡益と通算することができますが、配当所得の一部を除いて他の所得、たとえば給与所得や事業所得などと通算することはできません。申告分離課税は土地や建物の譲渡と同じように、他の所得と区分して、確定申告を通じて税額が計算されるため、このように呼ばれます。

Q 譲渡所得の申告はいつすればいいのですか。

A 譲渡所得の申告は、資産を譲渡した日の属する年の翌年の2月16日から3月15日の間に行う必要があります。
資産を譲渡した日とは、原則として、売買など譲渡契約に基づいて資産を買主などに引き渡した日をいいますが、売買契約などの効力発生の日に譲渡があったものとして確定申告することもできます。
契約の効力発生の日とは一般的には契約締結の日をさします。 契約締結の日によっては所有期間の「短期」と「長期」の扱いが異なり、税額に大きく影響することがあるので注意する必要があります。

まとめ

医療法人制度は平成19年4月に改正があり、それ以降は持分のある医療法人は設立できなくなっています。したがって、基金による法人設立の場合はみなし配当や譲渡所得とは関係が無くなっています。
とはいえ医療法人のほとんどは持分ありの経過措置医療法人ですので、社員の退社に伴う払戻しは病医院経営の資金繰りに重大な影響を与えます。払戻しを出資額を限度にする方法や、持分無しへの変更は専門家である税理士にご相談のうえ判断するようにして下さい。
(2012年1月現在)

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