成功する事業承継の要点
~③中小病院編~
「事業承継計画」の策定でスムーズな承継を

税理士

佐藤 正雄

税理士法人湧志会計 社員税理士

中小病院を事業承継する際の税務関係の手続きの留意点については、個人、法人クリニックと同様です。しかし、クリニックよりも規模が大きいことによる承継の課題は多々あります。その点をしっかり理解して、事前に事業承継対策を行うことが重要です。今号では、個人や医療法人が開設者となる中小病院の事業承継のポイントについて解説します。

1.中小病院の事業承継を成功させる要点

スムーズに承継するためには、「事業承継計画」を策定することが重要です。

中小病院の事業承継を成功させるためには、以下の3つのポイントを達成するように"事業承継計画"をつくり、計画的に以下のポイントをクリアしていくことが重要です。

■「事業承継計画」をつくる

後継者が決まったとしても、そこから10年ぐらいかけて、段階を踏みながら承継したほうがスムーズに進む傾向にあります。後継者が決まり、承継するまでの前半5年、承継してからの後半5年ぐらいの時間は、見ておいたほうがよいと思います。
前半期は、後継者に病院の現状をしっかり認識してもらう時間であり、引き継いでほしい理念などを伝えます。そして、理念に沿って実際にビジョンを明確化し、診療方針や経営方針を策定します。
事業承継後の後半期は、後継者の経営や診療の相談に乗るなど、前理事長はアドバイザーとして関わっていきます。その時、自分の考え方などを後継者に押しつけないように注意します。もし、押しつけられたとなると後継者は、反発したり落ち込んだり、トラブルに発展することもあります。特に親子間の承継の場合は、お互いに身内という甘えが出てしまい、承継の話し合いがうまく進まないケースがあるので、注意が必要です。

2.後継者を誰にするか?!

中小病院の事業承継では、後継者を誰にするかということが問題になります。

候補としては、(1)理事長の子ども(身内)、(2)院内の医師、(3)外部から医師を招へいするなどが考えられます。

後継者がいない場合は、譲渡や合併ということもあります。
ここでは、子どもに承継する場合、院内の医師に承継する場合、外部から医師を招へいする場合の3つのケースについて、それぞれのポイントを解説します。

(1)子どもに承継する場合のポイント

承継する子どもが1人の場合は、理念などを理解してもらうことからはじめます。2人以上が自院で勤務する場合は、それぞれの役割、立場を明確にし、院内に派閥ができないようにします。また、承継する子ども以外の相続人に残す財産を事前につくっておくことも重要になります。病院の出資を相続した場合は、出資金の払い戻しの請求があったときに支払える資金があるかをしっかり確認し、支払えないようなら承継する子ども以外には他の財産を渡します。
理事長は、後継者に過保護になりすぎず、また過剰な期待をかけすぎないことを意識し、計画的に後継者を育成していくことを心がけます。時には、現場の厳しさをたたき込むことも必要かもしれません。実務を知らない後継者にスタッフはついてきません。
そして、後継者には、はじめは「理事長のやり方をまねる」ということを徹底させることも大切です。最初から大きく変えると失敗するケースが多いのです。「いかに病院を守るか」を原点におくことが大切です。

(2)院内の医師に承継する場合のポイント

院内の医師に承継することが"ワンポイントリリーフ"の場合は、子どもが後継者として育つまでの教育係であるという考えのもと、教育者として適任の者を選ぶことが重要です。院内の医師が後継者になる場合は、病院に多額の借り入れがあるときは銀行の保証人になれるか、院長が退社する場合に出資の払い戻しができるか、または出資払い戻し請求権を相続人に出資してもらえるかなどを確認しておく必要があります。

(3)外部から医師を招へいする場合のポイント

まず、自院の現状を正しく認識してもらうことが必要です。承継後に「こんなはずではなかった」と思わせないように、自院の地域での役割、財務状況、組織体制などの現状をしっかり説明しておきます。
後継者を選ぶ際は、経営者であることを認識しているか、医師、看護師などの医療スタッフはもちろん、事務系スタッフなどとうまく連携が取れるか、相続に関連する問題は出ないか、借入の保証人などはどうかなどを確認することが重要です。

3.事業承継は第2の創業期

年々、病院数が減少していくなか、病院の事業承継は先代の後を単にそのまま引き継げばよい時代ではなくなりました。

これまでと同様のことをしていては病院も倒産する時代です。それだけ経営環境は悪化しています。後継者は、医者としての力だけではなく、経営者としての力量が問われます。人口が増加する高度成長期から今は少子高齢化で人口減少社会です。10年後の疾病構造は変化し、30年後には団塊の世代は亡くなり、さらに急激な人口減少社会が到来します。
新規創業者なら自分の想いのまま経営すればよかったのですが、後継者は先代の経営の上に、今後の生き残りをかけた新しいビジョンを描き第2創業と位置づけ、経営することが求められます。

まとめ

事業承継を進めるにも計画的に進める必要があります。経営理念から経営計画までの一貫した流れのなかに、「事業承継計画」も入れることが経営では大事です。
事業承継では後継者候補がいるのか、後継者が決まっているかにより計画は大きく変わります。
計画はいつまでにという時間と、数字で表すことです。
(2011年9月現在)

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