覚えておきたい相続税の要点
- 基礎知識編 -

税理士

田島 隆雄

田島会計事務所 所長

2008年5月に成立した「中小企業経営承継円滑化法」では、経営承継における株式の納税猶予制度が創設されましたが、残念ながら同法の適用に医療法人は該当しません。「相続」においては、万が一の不測の事態になれば、病医院経営や遺族の方々に多大な影響を及ぼすため、事前の対策が欠かせません。
今回から2回にわたり相続・贈与の要点を解説していきます。第1回目は、相続税とはどのようなものなのか、その概要を解説します。

1.「相続税」とは

富の集中化を防ぎ、国民の資産格差を是正するために設けられた制度です。

相続税とは、相続によって大きな財産を得た個人に課税して社会に再配分することで、富の集中化を防ぎ、国民の資産格差を是正するために設けられた制度です。相続税の対象は「個人(自然人)」となり、基本的に「法人」は対象となりません。

また、相続で取得した財産の合計金額が、定められている最低限度額(基礎控除額)以下であれば、相続税を課税されることはありません。
基礎控除額は遺族(法定相続人)の人数によって異なります。その内容は以下のとおりです。

たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、8,000万円が基礎控除額となり、それを超える相続金額(取得財産)が課税対象となります。

2. 相続税法に該当する財産とは

財産については、「金銭に見積ることができる経済的価値のあるすべてのものをいう」(相続税法基本通達11の2-1)と規定されています。

借入金や未払金など、いわゆる“負の財産”については、プラスの財産から控除されることになります。
財産の評価方法は原則、「当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による」(相続税法第22条)としています。実務上は「財産評価基本通達1(2)」の「この通達の定めによって評価した価額による」をもとに運用されています。

3. 納税額の計算方法

取得した財産の評価額が基礎控除額を超える場合、相続税が課税されます。

その税額計算を事例(下表)をもとにみていきます。

4. 相続財産を取得した相続人に対する税額の軽減措置について

相続人の個人的特殊事情に配慮した軽減措置として、次のような税額 控除の制度があります。

Q1.民法上、夫婦の財産は共有とされているはずですが、相続税法上では、どうして夫名義の財産は、夫のものとされるのですか。

A1.民法上では、夫婦の財産は共有とされています。そこで相続税法では、財産の2分の1までを相続した配偶者には算出された税額を軽減する制度(配偶者の税額軽減)が用意されています。また法定相続分についても配偶者、子どもという家族構成の場合、配偶者は2分の1の相続分と規定しています。

Q2.相続人が、小さい子どもや心身に障害などを持っている場合の相続税額に対する配慮はありますか。

A2.次のような控除があります。

Q3.夫は5年前、夫の母親の死亡で財産を取得し、相当額の相続税を納めました。夫が死亡し、その財産を再び相続することになりました。大部分は以前相続したものですが、相続税を納めなければなりませんか。

A3.課税の公平性から、相続税では10年以内の相次ぐ相続の場合、10年に対する2次相続の経過年数を加味し、一定税額を控除できる制度を設けています。それを「相次相続控除」といいます。

コラム Column
医療法改正による影響 ~残余財産の処分で大きな違い~

葬式費用は、相続の開始時には発生していませんが、国民感情を考慮し控除することができます。ただし、香典返しの費用は控除されていません。その代りに香典収入に贈与税はかかりません。

5. 「延納制度」と「物納制度」について

相続税は、金銭一括納付が原則になっています。

しかし、相続税は財産課税としての性格上、金銭が十分でない場合が想定されます。そこで、次のように延納、物納という制度を設けています。

まとめ

今回は相続の基礎的な解説を行いました。実際には、財産を誰が相続するのか。そのとき円満に決められるのかという事や、納税の為のお金はどのように調達されるのかなど、多くの課題が残されています。まず、現在の相続税額を試算してみることが大切です。そのことにより、もっと節税ができる方法があるのか、あるいは理想とする相続の仕方は何か、納税資金は十分かなど、事前に検討するとよいでしょう。
(2010年8月現在)

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