扶養の範囲と通勤手当

税理士

三浦 康弘

三浦康弘税理士事務所 所長

パートタイマーの職員採用の際によく言われる「扶養の範囲」と「通勤手当」の注意点をご紹介します。

1.扶養の範囲

キーワードは103万円と130万円

「扶養の範囲内で働きたい」といった場合の扶養の範囲とは、年収103万円と年収130万円の2種類があります。
前者は夫の所得税上の扶養の範囲であり、後者は夫の所得税上の扶養の範囲は外れるけれども、社会保険(公的年金や健康保険)上の扶養の範囲であるということです。
この2種類について、院長も本人も気がつかないまま年末になって扶養の範囲を超えてしまいトラブルになるケースもありますので、職員採用の際には特に注意したいところです。
実務上は、夫の配偶者控除と社会保険の被扶養者であること以外に、本人や世帯での所得を減らす要因があるので、その点についても考慮しなければならないでしょう。
●本人の所得を減らす要因
・雇用保険・住民税・所得税・健康保険の保険料・公的年金の保険料
●世帯の所得を減らす要因(上記以外)
・家族手当(配偶者手当又は扶養手当)

2.所得を減らす要因

手取額ベースで計算しましょう。

<本人の所得を減らす要因>

●雇用保険
1週間の所定労働時間(医院で定めた労働時間)が20時間以上で、かつ半年以上引き続き雇用されることが見込まれる場合、雇用保険の被保険者となり、給料から雇用保険料が天引きされます。

●住民税
年間の給与収入が100万円を超えると、本人に住民税がかかります。

●所得税
年間の給与収入が103万円を超えると、本人に所得税がかかります。

●健康保険の保険料及び公的年金の保険料
年間の給与収入が130万円を超えると、健康保険の保険料及び公的年金の保険料を自分で負担しなければならなくなります。月給11万円(年132万円)で働く場合(政府管掌)、年間約15万円(平成21年7月現在)ほどの負担となります。

<世帯の所得を減らす要因>

●家族手当
配偶者手当や扶養手当等の名称は色々ありますが、年間の給与収入が103万円を超えると、夫の扶養から外れるとともにこの手当がなくなる企業があります。月に2万円前後となるため、下図で見比べるとわかるように家計に与えるインパクトは大きいといえます(月2万円の家族手当として計算)。

●配偶者控除
妻の給与収入が103万円を超えると夫の配偶者控除38万円がなくなりますが、代わりに配偶者特別控除38万円が使えるようになります。この配偶者特別控除は一定額ではなく、妻の給与収入が141万円になるまで徐々に控除額が減っていくことになりますが、夫の所得の急激な減少は緩和されることになります。

※1.雇用保険は、本人負担分を1000分の4で計算。
※2.夫の家族手当は月2万円、妻の年収103万円でなくなるとして計算。
※3.健康保険の本人負担分は4.1%(介護保険非該当)。
※4.厚生年金保険料は7.675%として計算
※5.夫の所得税率は20%として計算。

3.通勤手当

非課税所得ですが、無制限に決めて良い訳ではありません。

扶養の範囲を超えないようにするため、非課税通勤手当を利用して調整しているケースが見受けられますが、その設定については注意が必要です。
通勤のために交通機関を利用している場合には、その運賃が非課税となります。ただし、自転車や車で通勤する場合には、その通勤距離により非課税の枠が決まっています。よって、最低片道2km未満の通勤距離であるにもかかわらず通勤手当を支給している場合には全額課税の給料となってしまいます。

まとめ

パートタイマーの採用といえども、時給と勤務シフト以外なにも考慮しなくて良い訳ではありません。繁忙期の年末近くになって現場が混乱しないように計画的な採用を心がけましょう。
(2009年10月現在)

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