決算書の信用力を高める「書面添付」

税理士

中戸 勝

中戸会計事務所 所長

病医院の資金調達は資金提供者から直接に資金を調達する「直接金融」や、金融機関からの「間接金融」など、その選択の幅が広がってきています。しかし、いずれの場合でも中小企業白書が警告するように、資金調達の際、重要となるのは決算書の社会的信用です。今号では、決算書の社会的信用を裏づけ、補強する「書面添付制度」について解説します。

1.「書面添付制度」とメリットとは

書面添付制度とは、税理士法第33条の2第1項の規定による制度で、税務申告書の内容が適法であることを税理士が確認する書類(税理士が計算し、整理し、または相談に応じた事項を記載した書面)を税務申告書に添付する制度のことです。

■書面添付制度について

税理士が租税債務を確定させる極めて重要な効果を持つ申告納税方式の国税等の申告書を作成したとき、その税理士がどの程度の責任を持って作成したものか、どの程度内容に立ち入った検討をしたものであるかなどを明らかにするため、その作成した申告書について、その内容検討の程度、検討した項目および方法などを記載した書面を添付するものです。
この書面が申告書に添付されている場合、税務当局が病医院に対して税務調査を行うときには、その調査に至る前に、税務代理の権限を有する税理士に、添付書面の記載事項について意見を述べる機会を与えなければならないとされています。
つまり、税務の専門家である税理士が責任を持って計算し、整理し、または相談に応じた事項については、税務官庁もこれを尊重し、税務行政の円滑化と簡素化を図ろうとする趣旨から設けられた規定となっています(『税理士法逐条解説』日本税理士会連合会編)。税理士法第45条では、税理士が故意に脱税相談等を行った場合の懲戒規定が定められており、書面添付はこの第45条の裏側にある「真正の事実に基づいて、その業務を処理しなければならない」(『TKC会計人の原点』125頁)との原則を前提として行われるものでもあります。
この書面添付の信頼性を高めるため、病医院に対し、毎月及び期末決算時に巡回(巡回監査)し、会計資料や会計記録の適法性、正確性を確保するため、会計事実の真実性、実在性、網羅性を確かめています。これにより、決算書の信頼性が高まることになります。

書面添付をした税務申告書を提出することで、次のようなメリットがあります。
(1)書面を添付した税理士には、病医院の税務調査着手前に意見を述べる機会が与えられます。その事前の税理士に対する意見聴取により、不明な点などが解消された場合、従来の病医院の現場などで行われる実際の税務調査には至らないこともあります。つまり、院長先生にとっては、税務調査に対する負担が軽減されることにつながります。
(2)巡回監査と書面添付を実践し、病医院の経営内容を適正に開示することによって、金融機関の融資担当者からの信頼獲得につながります。融資の可否や利率の高低に影響を与えるなど、金融機関から、より有利な融資を受けることも可能となっています。
(3)健全な経営内容は、対外的な利害関係者からの信用が高まります。院長先生にとっても精神的に安心感が生まれます。

2.書面添付の手続

基本的に院長先生への負担は何もありませんし、料金も無料となっています。

書面添付を行うかどうかは、院長先生の意思と担当する税理士の双方に委ねられています。なお、TKC会員税理士が書面添付を行うかどうかは次の基準によります。
(1)巡回監査を完全に受けていること。
(2)原則として、決算月以外の通常月において2か月を越えたデータ処理の遅滞がないこと。
(3)財務五表以上が提供されていること。
(4)担当税理士が役員に就任していないこと。
(5)原則として、2年以上巡回監査を受けていること。
(6)「完全性宣言書」を毎決算期に提出していること。
(7)TKCの「TPS1000」を利用した税務申告書を提出していること。
また、TKC会員税理士は、次の書類によって書面添付の品質を確保しています。

●基本約定書
「基本約定書」は、TKC会計人と院長先生の双方が書面添付推進体制の確立に向かって不断の努力をしていくことを誓約し合う文書です。
●完全性宣言書
「完全性宣言書」は、院長先生がTKC会計人に対し、自院の会計記録等証拠物提供に関して、その網羅性、真実性などについて包括的に保証する書面です。契約自由の原則を濫用して不当に税負担を免れようとした事実のないことも宣言のなかに含まれます。
●データ処理実績証明書
「データ処理実績証明書」は、会計データの遡及的な追加・修正・削除の処理が一切行われていないことを、第三者機関であるTKCが証明する書類です。

その他、会計事務所が保存する書類として「書類範囲証明書」「棚卸資産証明書」「巡回監査報告書」「決算監査事務報告書」などがあります。

まとめ

新書面添付制度は、税務の専門家である税理士の立場をより尊重し、税務執行の一層の円滑化・簡素化を図る趣旨で設けられています。具体的に国税庁長官も「書面添付の活用に積極的に取り組んでいただきたい。これを税務行政側としては尊重していくということです。」と発言されています。現下の経済不況及び国の財政状況を踏えて今後の病医院の経営を考えた場合、税務調査からの精神的、経済的負担の軽減、金融機関からの有利な融資の格付けアップに資する書面添付は健全な病医院経営を行っていく上でますます重要になってまいります。
(2009年4月現在)

〜ドクターのための豊富なTKC税務講座一覧〜

他にも医業経営に役立つ情報が満載です。様々な税務講座をご用意しております。
「+」をクリックすると内容を一覧できます。

医院経営について

会計
戦略
税制
その他