開業資金と運転資金

税理士

三浦 康弘

三浦康弘税理士事務所 所長

多額の開業資金については、いくら必要でどうやって手当てするかの資金計画の作成が必要となります。その際、運転資金の計画を誤り失敗するケースが見受けられます。経営者としての第一歩とも言える資金計画のポイントを解説します。

1.設備資金

開業資金を2つの側面からとらえます。

開業資金を大きく分けると、「設備資金(イニシャルコスト)」と「運転資金(ランニングコスト)」の2つに分けられます。診療科目ごとの開業資金の見積もりにつきましては、「借入と返済」を参照ください。

「設備資金」とは、建物や医療機器などのハード面を中心に、主に開業までにかかる予算を指します。また、「設備資金」は、さらに次の3区分に分けられます。

これら「設備資金」は、見積もり比較などにより、ドクターご自身でも計算しやすく、また頭の中でも整理しやすい数字と言えます。

2.運転資金

この見積もり金額が開業後の経営状態を左右します。

「運転資金」は、当面のテナント家賃や人件費、リース料や水道光熱費、福利厚生費や交際費などの開業後にかかる費用をまかなうための予算です。

社保・国保・後期高齢者医療ともに診療報酬が支払基金から入金されるのは、請求してから2か月後となります。そのため、開業後2か月の収入は自費(検診・予防接種等)を除けば、窓口収入(患者本人負担分(1~3割負担))のみとなります。
さらに、開業月の診療報酬は2か月後の月末近くの入金(例えば、4月分の診療報酬は5月の月初に請求し、6月末頃に入金されます。)となりますので、最初の入金があったときには、実質3か月分(上記の例でいうと4,5,6月分)の支出は既に手元資金から無くなっていることになります。

ただし、開業時のほとんどのケースで「運転資金が最低3か月以上必要とわかっていても、何か月分以上がセイフティであるのかが見当つかない。」というご相談を受けます。
確かに、事業計画上、「運転資金」は「月々にかかる固定費」×「月数」という表現が使われますが、収入が低い時期にも「お金がない」状態にしないための予算ですから、実際には「黒字化するまでの赤字の合計」こそが、真に必要な金額であると言えます。

下表のケースでいえば、初年度と2年度の赤字合計16,800千円が運転資金として必要な金額となります。当初の事業計画段階で3か月分の支出である9,100千円((医業経費22,000千円+借入金返済2,400千円+生活費12,000千円)×3/12)と見積もっていた場合、黒字化する前に資金不足に陥ってしまいます。
下表では分かり易く単純な例を示しましたが、実際の事業計画では、年毎ではなく月毎の収支計画表により合計額を計算します。

※患者1人5,000円、1か月20日間の診療を行ったとして計算しています。

まとめ

事業計画において「運転資金」を甘く見積もり、借入金額を設定し間違えてしまうことがあります。開業後に慌てて追加融資を手当てすることになったり、予期しない生活資金からの持ち出しにならないように、税理士等の開業コンサルタントにご相談ください。
(2008年11月現在)

〜ドクターのための豊富なTKC税務講座一覧〜

他にも医業経営に役立つ情報が満載です。様々な税務講座をご用意しております。
「+」をクリックすると内容を一覧できます。

医院経営について

会計
戦略
税制
その他