私のファミリー スイート 特別編 「ファミリー スイート」の原点へ。
ー 後編 ー

軽井沢時間旅行

イラストレーターであり、フラットハウス(平屋)の暮らしを追求するアラタさんと訪ねた1963年建築の軽井沢の「セキスイハウスA型」。そこで、アラタさんが手掛ける「ファミリー スイート」のイラストのコンセプト、フラットハウス暮らしを通じて、「住まい方」が生む「幸せな暮らし」について、ご自身のこだわりと思いについて語っていただきました。

「セキスイハウスA型」をモチーフにアラタさんが描く“幸せな暮らし”。キレイごとでなく、「暮らし自体を楽しむ」ことが存分に表現されている。

大人はもっと暮らし自体を楽しむべき

 イラストを描く上で心がけていることは、まず自分が楽しむこと。だってそうしないとそれが絵に出ちゃうから(笑)。随分前の話になりますが、違うんじゃないかなあというものを指示どおりに描いていたら、自分で見てもツマラナイ絵になったことがあって。あ、不本意がヴィジュアル化してるぞというかね、自己嫌悪に陥りました。あれ以来そうならないよう、すごく注意するようにしています。職種に拘らず不本意なことをイヤイヤやっていると、そういう仕事になると思うんです。続けていれば人生自体がそうなってしまう。だから僕はいつも職業は収入の多寡ではなく、好きなことで成すべきと言っています。

 先日、ある建築家に「アラタさんのイラストはキレイ過ぎていないところがいい。いろいろな営みをつじつまを合わせて生きているのが描かれている」といわれたのがとても嬉しかったですね。別段意識しているつもりもなかったのですが、同じ方向を向いている人には伝わっているんだなと。家を描くときの主眼は、ニンゲンという生物の営みを見せるということかな。人が遊ぶように暮らしている姿を描くのが好きなんですが、それはきっと僕自身がしていることの現れなのかもしれません。と同時に生活とは決してキレイだけではない、見苦しい部分もある、そういうところだって暮らしであるという、生活の煤のような部分も味わいとして表現したいと思っています。

アラタさんによる「ファミリー スイート」のイラスト。「ファミリー スイートは大空間を仕切らず自由に暮らすというサジェストだと思うんですが、僕はそこで個々の住人が暮らしをどう楽しんでゆくかにフォーカスしたいんです」と、アラタさん。

フラットハウスの魅力

 よく「フラットハウスの一番の魅力ってなんですか?」という質問をされるのですが、その答えは不定期開催のトークイベント『FLAT HOUSE meeting』で話していますので、お知りになりたい方はゼヒいらしてください(笑)。でもこうして見ているとその答え、お分かりになりますよね? では別の魅力のお話をしましょうか。それは自らでカスタマイズできるということです。釘一本打てないようなマンションやアパートとは違い、賃貸であっても自分で工具を握ってどんどんカスタムできるんですよ。

 とっかかりは築40年の平屋に住み始めた時にした室内塗装でしたが、和室をセルフでフローリング施工してから火が点いたというカンジです。ついには壁を抜いて間取りを変えたり、天井を抜いてヴォルテッドシーリングにしたり。海外製のビンテージライトや、解体される古家から救出して来た建具や古材のリユースなんてのはもう当たり前。外壁補修や塗装、デッキの製作、庭のインターロッキングなどエクステリアも自分でします。雨漏りがすれば足袋を履いて屋根上り。瓦をすべて剥がし、ルーフィングをやり直してまた瓦を並べ直す、という作業を夏の炎天下でしました。あれは本当にキツかったけど、そうして自らでやることで仕事や家の構造を覚えていくんです。予算や選択肢に従うのではなく、自分がやりたいことはあるものを使って思う存分やってみる、という感じですね。家の構造も判るし、なにより家に愛着が湧く。貸家か持ち家かなんてことは関係ありません。自分のであれ他人のであれ「自分が住む家」なんですから。

自身でカスタマイズしたフラットハウスの自邸。

「住みながら楽しくなる」暮らし

 住み手にイマジネーションを与えるのも家の役目だと思っています。出来上がったところにストンと収まって、そのままただ暮らすというのではあまりに寂しい。だって人生を賭すほどの高い買い物をしているんですから、もっと楽しまないともったいないでしょ。住みながらどんどん楽しくなっていくフラットハウスのような住まいづくり、それをたくさんの人に体験して欲しいということもあり、平屋の本を書き続けています。

 かくいう僕も20代の会社員時代はマンション暮らしでした。当時よく友人たちが住む福生の米軍ハウス集落に遊びに行っていたんですが、彼らの暮らしぶりが衝撃的でね。平屋全体を好き放題に使って暮らしている感じで、なんか歯止めがないんですよ。家とはこうあるべきというのが彼らには皆無(笑)。で、夜には集落の真ん中にある共有庭に近隣住人がお酒や食べ物を持ち寄って焚火をするんです。馬鹿騒ぎするようなことはありませんが、時々だれかがギターで歌ったりして空が白むまで飲んで語り明かす。この自由さには大いに刺激を受け、その後の自分の暮らし方にも少なからず影響しました。

 そのあとワンルームマンションの自宅に戻ると、自分はなんとつまらない生活を選択しているんだろうと考え込んじゃうんですよ。都市で暮らす多くの人々の生活は、便利だけを追い求める正にツマラナイ選択。日々箱から箱に移動するだけの「ボクシーライフ」です。マンションという箱からビルのオフィスという箱へ、お得意さんもビルの中ならば昼飯晩酌もビルの中。別に望んでそうしているんじゃないのに、気がついたら箱の中ばかりにいる。そんな暮らしから抜出したいという気持ちが日増しに募って行ったんです。そしてある日ついに脱出するんですが、この辺りのことは拙著『FLAT HOUSE LIFE1+2』で書いていますのでゼヒご一読ください。

暮らしの根本設計は「まちづくり」から

 ここ数年「“まち”をつくりたい」という欲求が俄然強まりました。というのも、結局人々の暮らしの根本は「家」、それが集まる「まち」です。まちは本来瞬時にしてできあがるものではなく、丁寧に時間をかけ育てるようにつくる類いのもの。そこに住む住人自身がつくるものです。今のこの国は、ばーんと壊してどーんとビル建てて「素敵なまちです」というものばかり。このやり方はせっかくある森林を伐採して、偽木を植え直して森だといっているような行為に映る。町と共に育った「サムシング」をまったく無視しているんです。

 欧州の旧市街と呼ばれるエリアはそれとは真逆で、長い時間を経て育てられた街をみんなが大切に住み継いでいるイメージ。街が持つ美しさや安堵感に魅かれて外から来る人、代々住んでいる人が建物自体を心から愛しているから、過疎化や限界集落化など無縁なんです。そりゃあ文化にも厚みが出るはず。以前回ったフランスやイタリアの田舎町には鉄筋のマンションなんか一本もなく、どこも古い建造物の中で一定数の老若男女が朗らかに暮らしていました。なぜあれが日本ではできないんだろうと、帰国後ひどく考え込みましたね。欧米建築がカッコイイからとかではなく、ああいう長期間使うことのできる質の良い「まち」をこの国の中にもつくりたいんですよ。

軽井沢の家は木々を経て隣家が点在。「借景も、距離感もいい」と、アラタさん。

「心から住みたい」 と思う住まい方を

 先ほど話した「箱から箱の暮らし」は 僕ら日本人が持つ「幸せバイアス」の具象化なんじゃないかと思うんです。誰かが号令をかけたわけでもないのに、みんなが主体性なく「便利」「ラク」というキーワードで進路選択しているうちに、気がついたら「箱から箱の暮らし」になっていた。その人数が多くなれば箱をどんどん増産し、箱が増えればそれが幸せの雛形のように思う人がまた増えるというループ。そこにはまっている人々からしたら余計なお世話かもしれないけれど、心のどこかでは何かおかしいとは思っているんじゃないかと。でもその暮らしに疑いを抱こうとしない。こういう現象をスコトーマ(心理的盲点)というのですが、ここらで一度立ち止まって自分の本心に訊いてみた方がいい。

 例えば、職場に近いからという理由で住まいを選ぶことは、住居選びとしては「アリ」になっていますよね。でも仕事がなくてもそこに住みたいのかと問われれば、そうでもない。ならば一旦暮らしをほどいて心から住みたいと思うところに住んでみたらいい。そしてそこで何ができるかを考え仕事を選び直す、あるいは職をつくる。それをやってみて欲しいんです。僕はその理論実験も兼ねて九州と東京都下の二拠点で生活をしていますが、どちらにも仕事をつくって暮らせています。 実際にやってみるとそれまで時間もお金も随分と余計に稼いで余計に費やしていたんだ、ということに気付くと思います。で、その余剰は思ったより膨大。もしみんながそういう暮らし方に少しずつでもシフトしてゆけたなら、この国の社会構造も少なからず変わっていくと思いますよ。

イラストレーター・文筆家
アラタ・クールハンドさん

東京都出身。挿絵、ロゴタイプの制作、パッケージデザイン、広告、音楽ヴィジュアルなど手描きのグラフィックを中心に、企画や執筆、講演など幅広く活動。 2009年に、東京都下周辺の古い平屋ばかりを紹介した『FLAT HOUSE LIFE』(現在は『FLAT HOUSE LIFE1+2』として合本再発)を発刊。その後、一冊に平屋一軒というよりマニアックな『FLAT HOUSE style』シリーズを自費発刊するなど編集者としても手腕を発揮 。そのほかにも店舗を兼ねた物件で暮らす人々を紹介する『HOME SHOP style』などの著書がある。東京都下と福岡のフラットハウスで2拠点生活を送りながら、古家の再生やCDのリリースなど多彩な活動を展開している。

カスタマイズして、ずっと“自分らしく”暮らす
ファミリー スイート

仕切りのない大空間だから、将来のリフォームにも自在に対応できるファミリー スイート。将来の家族の変化にあわせて、次世代まで末永く住み継ぐことができます。「住みながら楽しくなる暮らし」、ファミリー スイートで自由に描いてみませんか。

自宅で料理教室を開く

開放的なカフェをオープン

記事一覧

おもてなし夫婦ユニット
「てとてと」さん

「場」×「食」がうみだすコミュニケーション。

小野リサさん

「音のある暮らし」が家族をつなぐ。

安藤僚子さん

ようこそ!「おうちアトリエ」へ

ニコライ バーグマンさん

「食事」と「花」が家族時間の中心

野沢和香さん

毎日を自分らしく!家ヨガライフ

SHIORIさん

キッチンが“顔”になるリビング

平野啓一郎さん

"好きな自分"になれるリビング

特別編

インテリアから発想するファミリー スイート 「“日常がいちばん幸せ”になる家」

導入編