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一生懸命、自分なりに 京都を代表する料亭として知られ、創業時の佇まいを今に残す瓢亭(ひょうてい)。長い歴史の中で、多くの文人墨客や時の経済人に愛されてきました。その十四代目である_橋英一さんに伺いました。

肩肘張らずに自然体で

写真 瓢亭の庭と厨房を遊び場として育ち、小学生の頃には、すでに包丁を持って店を手伝っていた高橋さん。
 「店を手伝うのも修業に行くのも当たり前。でも父親から『跡を継げ』と言われたことはありませんでした。私が28歳の時に父が亡くなって、姉たちや親戚からおまえが跡取りだと言われて、改めて『そうか』と思ったくらいです」
 400年近くも続く老舗を担うことは、どれほどのご苦労なのでしょうか。
 「先代からいただいたものを次の代に、ほんの少しでも良くして渡す。一生懸命“自分なりにできること”をやっているだけです。ドラマチックな話がなくて、すみません」と逆に気を遣われる高橋さん。まさに「自然体」の一言です。
 「“肩肘張らずに自然体で”を大事にしていますね。背伸びして自分を飾ってもしんどいだけですから」
 老舗という言葉にこだわっていたのは、私たちの方かもしれません。

「らしさ」と「感性」

写真 「料亭は日本文化の集大成だと思います。お客様が玄関を入られて、庭を愛(め)でながらお部屋に・・・。するとそのお部屋には四季の室礼(しつらい)がしてあります。季節の花が生けてあり、時候のお軸が掛けてある。料亭はハレの場ですので、日常とはちょっと違うおもてなし・・・でもあまり仰々しくしてはいけません。“自然なもてなし”でいかに満足していただけるかが大切なのです。行き過ぎず、けれど足らないことのないように」
 高橋さんは、200種以上の茶花を育て、お座敷の花を、すべてご自身で生けておられます。
 「瓢亭らしさというのは、料理の一品一品にではなく献立全体に、そしてお座敷の雰囲気や店の者のおもてなしの中にあるのではないでしょうか。代々受け継がれてきた『らしさ』とは教えられて学ぶものではなく、『感性』で受けとめるものなのだと思います」

「伝統」と「革新」

写真 「古典的なものや伝統は守りながらも、常に“革新”は必要です。革新とはすなわち勉強の繰り返しです」
 その成果は、瓢亭の料理を確実に変えています。
 「私が一番大切にしているのは出汁(だし)です。うちの出汁の取り方が、私が子どもの頃と変わっていないことに何か自分の中で納得がいかないものがありましてね。素材から試行錯誤を重ね、今の出汁にたどりついたわけです。」
 高橋さんの「京料理の枠」とはどのようなことなのでしょうか。「京料理とは、精進、懐石、有識、おばんざいの4つの料理がミックスされたものです。私は中でも懐石料理の基本であるお茶の料理に“枠”をおいています」
 陶芸にも造詣の深い高橋さん。貴重な骨董でも、お店でのおもてなしに「使う」のが高橋流。「うちの若い者には“器は本物をみろ”と言うんですね。目を養って成長してほしい。器によって料理の映え方も違います」

謙虚に、謙虚に

写真 最後に、高橋さんが大切にされている言葉をうかがいました。
 「私の母は松下幸之助さん(松下電器創業者)を、たいへん尊敬していまして『“実るほど頭を垂れる稲穂かな”やで』と、よく言われたものです。『謙虚に、謙虚に』と言われて育ったせいか、誰に対しても上から物を言うということができません。店の若い者にもそうなんですよ」
 そう言って、また静かに微笑まれる高橋さん。内からにじみ出る素晴らしい人間性がそのままお店に映し出されている・・・そんな瓢亭だからこそ、これからも真の“おもてなし”を求めて、様々な人に愛され続けることでしょう。