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日比野 克彦/Katsuhiko Hibino アーティスト。1958年岐阜市生まれ。東京芸術大学大学院修了。在学中に第30回ADC賞最高賞受賞、以後絵画、映画、舞台美術、パブリックアート、商品デザインなど多岐にわたり活動を展開。近年は各地で一般参加者とその地域の特性を活かしたワークショップを行っている。2002年FIFAワールドカップのホストシティポスターでは国内10都市の地域性を表現し話題を呼んだ。

本当に自分が気に入った物、それで満たされた部屋こそ最も居心地の良い空間!

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写真上、下/雑誌「セサミ」の連載企画で、子ども部屋をレイアウトし直した。散らかっていたおもちゃを置きかえるだけで、部屋がアートスペースのような空間に変貌する。 (撮影:達川清 協力:セサミNo.105、No.106/SSコミュニケーションズ)

自分の好きな物を部屋に持ち込む。それが自分のアートになる。

 家や部屋というのは実際暮らしている場だから、自分が気に入って買ってきた物でどんどんいっぱいになってくる。つまり「器」があるから部屋になるのではなくて、自分の好きな物を持ってくるから自分の部屋になるんです。アートや絵を部屋に持ち込むことはもちろん、自分で選んで買ってきた歯ブラシやティッシュペーパーやボールペンを無造作にテーブルの上に置くことも部屋の重要なファクターであり、その人のアートなのです。
 インテリアの素晴らしい家があって、そこのカーペットなどを借りてきたとしましょう。その部屋は一時は美しいかもしれません。でも半年もすればグチャグチャになる。けれどもそのグチャグチャが自分の空間作りなのです。雑誌やTVドラマにでてくるような部屋できれいに暮らすことより、自分の好きな物に囲まれているほうが居心地は断然いいはず。住むとは日常ですから自分のふだんしていることが喜びになっていかなければならないんです。
 僕の作品を、日本で買う人は少ないんです。どう飾ったらいいか分からないのでしょう。掛軸だったら床の間に飾る、というふうに決めてしまっていて。それにくらべて美術作品をたくさん集めているフランス人というのは、本の上にも誰かの作品をポンと置いちゃったりする。それができるのは、たとえば同じ本を買うにしても「このパッケージがいいな」というこだわりがあるからです。
 日本人はリフォームや部屋作りが好きなのに、借り物や高価なものを買ってきて置いてしまう。せっかくの部屋に自分のこだわりが見えないんです。

そこにある物を見立て直す、それだけで見え方が全然違ってきます。

 部屋を作る際に新しい物を取り入れるのではなく、見立て直すことが大切です。部屋にはすでに物が溢れているわけだから、新しい物を持ち込む必要はない。それより溢れている物を見立て直すことで、全く違う空間になるんです。
 子ども部屋にあふれるおもちゃも、並べ直したり組み直したりしてレイアウトをし直すだけで随分見え方が変わるのです。自分で選んだ物をまず大事にする。それについて家族で会話をする。すると、もうそれは手放せなくなり、その家の物になって価値が生まれてくるんです。会話のないアートなんてあり得ません。寡黙なだけではイメージは膨らまないのです。
 物は所詮は物質。ですから会話を通してそこに暮らす人々の物語を入れていかないといけない。そうすることで、その空間が少しずつ居心地の良いものへ変わっていくと思います。アートでも家の物でも、会話をしてみんなでイメージを共有していくことが、自分たちの空間をつくるために必要なことです。