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伊東 順二/Junji Ito 1953年長崎県生まれ。早稲田大学仏文科大学院修士課程修了、仏政府給費留学生としてパリ大学、及びエコールド・ルーブルにて学ぶ。1983年日本帰国まで、フランス政府給費研究員として、フィレンツェ市庁美術展部門嘱託委員(1980〜)、「フランス現代芸術祭」副コミッショナー(1982)などを歴任。その間、「芸術新潮」での連載(1981開始)などで「ニューペインティング」を日本に紹介。帰国後、美術評論家、アート・プロデューサー、プロジェクトプランナーとして、幅広く活躍中。株式会社JEXT代表取締役。1995年「第46回ヴェネチア・ビエンナーレ」日本政府館コミッショナー。1997年パリ日本文化会館オープニング企画「デザインの世紀」展コミッショナー。2000年 文化庁メディア芸術祭企画展<JAM3(ジャムキューブ)>プロデューサー(〜2001)など、展覧会多数。2002年「フランス文化芸術勲章(シュバリエ勲章)」授章。

アートな生活とは、自分の好みが集約された空間で暮らすこと!

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 意外かもしれませんが、日本人は、常に日々の暮らしの中にアートを取り入れてきた民族。茶の湯や浮世絵など、大衆が身近にアートを捉えていたんです。教会や王室などと結びついてアートが発展し、アートと生活の距離が遠かった西洋が、19世紀になってそんな日本に出会って驚いた。その衝撃がアール・ヌーボーなどを生んだわけです。でも日本は反対に、明治以降、西洋美術を輸入することによってアートと生活の距離を遠くしてしまった。

デザインもすばらしいアート

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 いつの間にか日本人は、アートを高尚な絵や彫刻だと思ってしまっている。でも、デザインもアートなわけで、ポスターやクルマもみんなアート的な要素を持っている。それらをうまく生活に取り入れていくことが、アートがある暮らしということになるんです。たとえば肉、魚、野菜を盛る器は、それぞれ違う質感が必要ですね。そういう日常的な趣味の中で自分の好みに合うものを選んでいく。“自分の好みや自分の生活がこうだから、こういうものが必要なんだ”という気持ちをはっきりさせてみたらどうでしょう。自分が素の状態で好きだったものを生活に持ち込むことで、自分の原点がわかってきます。まずお気に入りのものがあったら置いてみる。そして、それから空間へと発展させていく。家に自分を再生させるために帰るという感覚を持つためには、自分の好みが反映されている空間が一番いいに決まっている。生活とアートの結びつきという点では、それが一番の理想です。

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自分なりの審美眼をしっかり持つ

 陶芸家、料理人としても高名な書家、魯山人。彼の活動の原点は「美」と「食」です。おいしいものが食べたいからつくる。それを美しい器に盛りたいから陶芸とくっつける。それが評判になって、料亭までつくってしまう。つまり自分の趣味を、生活にそしてアートに結びつけたわけです。自分のアート感覚と住空間との接点を探して、自分の家に求めていく。結果、その空間が愛しくなる。それが、魯山人の言う“生活が芸術になること”です。生活の中にアートを取り入れるということは、自分の生活全体に自分なりの審美眼を持つということなんです。

「魯山人の宇宙」展 2003年4月26日(土)−6月29日(日) 笠間日動美術館 http://www.nichido-garo.co.jp/museum/

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