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人間の「笑う」能力と「すまい方」「笑い」は万能特効薬

写真 日本古来の文化の中に、現代のマンションライフに通じる知恵を再発見する当連載。第4回は「人間関係」をテーマに「笑い」を考えます。
 日本笑い学会。「笑い」のやわらかさと「学会」の堅いイメージの組み合わせが、何とも不思議ですが、会長の井上宏さんは、心身の健康、そして、よりよい人間関係をつくるために、いかに「笑い」が大切かを教えてくださいました。

健康に効く!

 「人間は元気に仲間と助け合って生きるために、笑う能力を身につけたのだと、私は思います。笑うと元気になるとか、人間関係が円滑になるというのは、誰でも経験的に感じていることでしょう。私たちの目的は笑いの研究と、もっと笑うことを世の中に訴えることです」
 と、おっしゃるのは「日本笑い学会」会長の井上宏さん。最近、笑いと健康に関する医学的な研究も始まり、そのせいか医師のメンバーが増えているそうです。
 「笑いが免疫細胞を活性化させるとか、血糖値を下げるとか、色々と興味深い結果が報告されていますね」

「お笑い」より「笑い」

写真 「お笑い」の町大阪には「笑い」があふれています。そこには、商人の町として栄えた歴史が関係しています。 「大阪の商人はしんどい場面に直面したときにね、『泣いてる暇があったら、笑(わ)ろてこませ』という言い方をするんです。人間、クヨクヨしていると気持ちが落ち込むばかりでしょ。笑うというのは生き抜くための知恵ですよ。苦しいときでも、笑うと心がゆとりを取り戻すのです」
 また、笑いは商人同士のつきあいにも重要な役割を果たしました。
 「商売につきものの交渉ごとも、冗談でなごませながら進めていくのは、商いを成就させるテクニックというわけです」

笑われるか、笑わせるか

写真 「大阪の商売人は自分の失敗を披瀝して笑いをとることで、親密な関係を作ろうとする。コミュニケーションとしては、なかなかの高等戦術です」
 上下関係が厳しいタテ型社会、侍の社会では笑いの質も違ってきます。
 「自分の権威や立場が笑われる、と警戒感を持つ人が多いです。また侍は厳粛であることが大切なんです」
 しかし、そんなタテ型社会でも笑っていい時や場所が設けられました。それが無礼講であり、祭りの間は権力風刺も許されるという慣習でした。

「笑う奇祭」

 山口県防府市に「笑い講」という珍しいお祭りがあります。発祥は鎌倉時代。800年も続く神事です。
 「参加者が順番に榊を持って大笑いをする神事なのです。人間が笑うと自然の神様も笑ってくれて、恵みがもたらされるという信仰だと思います。そもそもは天の岩戸の神話ですね。800年の間には、凶作の年が幾度もあったでしょう。でも『笑い講』はずっと続いてきた。笑うことが人々にもたらす効用を、経験上よく知っていたからに違いありません」写真

笑育のススメ

 「人間の笑う能力は潜在能力であって、成長過程で開発される必要があると私は考えています」
 子どもの笑いが育つのは家庭。でも核家族という現状では、とても危うく見えると井上さんは指摘されます。
 「笑いというのは、大勢で賑やかに揃って笑うのが楽しいのです。特に家族のなかは一番屈託なく笑える環境ですよね。家族で一緒に笑う機会が少なくなっているのは由々しきことです」
 まず、おとなが率先してどんどん笑いましょう。そうすれば、子どもたちは安心して笑うことができます。

祖父母の出番

 「年末年始には子どもと孫が皆、我が家に集まりますが、みんなで笑う機会は意外とありません」
 そこで井上さんが考えついた仕掛けは、親子孫三代全員での餅つき大会でした。
 「大成功でしたよ。いや、餅つきとしては失敗の連続ですが。孫たちは、転げまわって笑ってました」
 家族みんなで大笑いという経験をしたそうです。
 「親の世代は何かと忙しい。ならば、じいさんばあさんが孫を笑わせる役目を買って出るべきですね」

笑いを共有

 日常生活へのアドバイスをお聞きすると、笑顔で挨拶が大事、という答えが返ってきました。
 「ただ言葉で挨拶しても、表情がツンとしてたらダメなんです。出会ったらまず、笑顔。言葉はいりません」
 マンションで住民が集まるイベントがあるなら、落語会などみんなで笑える企画がお勧め。
 「笑いを共有すると親密感が生まれます。楽しく笑って、ご近所づきあいが円滑になるなんて、こんないいことはないですよ」
 まず、あなたから笑うことが大切なのです。

写真プロフィール
井上宏 いのうえ・ひろし
1936年大阪市生まれ。
関西大学名誉教授。日本笑い学会会長。
専攻はメディア社会学、コミュニケーション論、笑い学研究。
著書に『笑い学のすすめ』など多数