大森 広司 プロフィール
住まい研究塾主宰。『SUUMO新築マンション』、『SUUMOマガジン』、『注文住宅』、『Good リフォーム』、オールアバウト「マンション入門」など情報誌やネットで住宅関連全般にわたって取材・執筆活動を続けている。著書に『はじめてのマイホーム 買うときマニュアル』『マンション購入 完全チェックリスト』(ともに日本実業出版社)、『新築マンション買うなら今だ!』(すばる舎)などがある。
住宅ローンを借りるときに、どの金利タイプを選べばよいか悩む人も多いでしょう。現状では金利が過去最低水準といえる低さとなっており、特に変動型は1%未満の超低金利で借りられるケースが少なくありません。ただし変動型はその名のとおり借りてからも変動するので、金利が上昇するリスクがあります。
金利上昇リスクを避けるには、全期間の金利が固定されている固定型を選ぶのが確実です。ただし、固定型は変動型に比べて金利が高めになります。今なら固定型も低水準とはいえ、民間ローンでは2%前後が一般的となっており、変動型より1%以上高いケースが大半です。
例えば3000万円を35年返済で借りたとすると、0.775%の変動型で借りると当初の毎月返済額は8万円強で済みます(ボーナス時返済なしの場合。以下同)。一方、2.0%の固定型で借りた場合の毎月返済額は10万円弱になり、変動型とは2万円近い差です。これだけ違うと、やはり変動型で借りたいと考える人も多くなるのではないでしょうか。
しかし変動型の場合、途中で金利が上がると話が一転します。仮に5年後に金利が2%アップしたとすると、6年目からの毎月返済額は10万円を超え、固定型と逆転するのです。
さらに、その後金利が変動しなかったとしても、11年目にも返済額が上がります。これは変動型の金利と返済額の見直しルールによるものです。
一般的な変動型は金利を半年ごとに見直し、返済額は5年ごとに見直します。返済額を見直す際に、金利上昇による負担の急増を避けるため、「直前の返済額の1.25倍を上限とする」というルールがあるのです。
上記のケースでは金利が2%アップしているので、この1.25倍ルールで6年目からの毎月返済額が抑えられています。そのため、さらに5年後の11年目から、金利に見合った本来の返済額に修正されて金額がアップするのです。
結局、このケースでは11年目以降の毎月返済額が11万円近くとなり、その後金利が変わらなければトータルの総返済額が固定型より200万円近く増えてしまいます。金利が急に2%もアップする可能性は低いかもしれませんが、徐々に上昇しながら2%前後アップすることはあり得ない話ではありません。
そこで、変動型のメリットを活かしつつ金利上昇のリスクを抑える借り方として、変動型と固定型をミックスする方法があります。これは借入額を半分ずつ変動型と固定型に分けて借りる方法です。銀行によっては分ける比率を自由に設定できるケースもあります。
例えば変動型と固定型を1500万円ずつ借りた場合、当初の毎月返済額は約9万円と、変動型のみに比べて高めです。しかし5年後に変動型が2%アップしても、毎月返済額のアップは約1万円で済みます。その後、11年目にも返済額がアップしますが、35年間の総返済額は固定型で借りたケースより100万円弱の増加に抑えられる計算です。
最近は銀行側もこの金利ミックスに力を入れるケースが増えており、ミックスすると通常より金利を引き下げてもらえる場合もあります。変動型と固定型で迷った場合、半分ずつ借りることも検討してみてはいかがでしょう。
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作成日:2015年1月29日