税務の専門家がポイントを解説 TKC税務講座

[特別編] 住宅取得等資金に係る贈与税の非課税特例 子や孫が住宅を購入・建築しようとする際、親や祖父母が援助するのを、税制がバックアップしています。その税制のポイントを解説いたします。

税理士法人今仲清事務所 税理士 今仲 清

「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例」は、住宅用家屋の種類によって非課税限度額が区分されており、適用期限は令和5年12月31日までとされています。両親や祖父母から住宅を取得するための資金の贈与を令和5年12月31日までに受けて、原則として令和6年3月15日までに住宅用家屋の取得等をした場合は、最大1,000万円まで贈与税が課税されない画期的な制度です。

[1] 省エネ・耐震・バリアフリー住宅は最大1,000万円まで非課税

直系尊属からその年1月1日現在18歳以上の直系卑属に対して一定の住宅用家屋を取得するための資金又は一定の住宅の増改築や大規模修繕のための資金の贈与があった場合には、その贈与を受けた住宅等取得資金のうち省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性を備えた良質な住宅用家屋の場合については、令和5年12月末までの住宅取得等資金贈与について1,000万円まで贈与税を非課税とすることとしています。

[2] 一般住宅は最大500万円まで非課税

省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性を備えた良質な住宅用家屋以外の一般住宅については、令和5年12月末までの住宅取得等資金贈与について500万円まで贈与税が非課税とされます。

[3] 適用対象住宅用家屋の床面積は240m²以下

住宅取得等資金に係る贈与税の非課税特例の適用対象となる住宅用家屋及び増改築は次のようなものとされていますが、東日本大震災の被災者を除いて適用対象となる住宅用家屋の床面積については240m²以下とされています。なお、別の制度である相続時精算課税制度の住宅取得等資金贈与の特例については、240m²以下という住宅用家屋の面積制限はありません。

<住宅取得等資金贈与の対象となる住宅用家屋及び増改築>
1 1棟の家屋・・・床面積50m²以上(又は40m²以上)240m²以下
区分所有建物・・・区分所有部分の床面積50m²以上(又は40m²以上)240m²以下
2 床面積の50%以上が専ら居住用に供されていること
3 日本国内に所在すること
4 新築又は、建築基準法施行令第三章及び第五章の四の規定又は国土交通大臣が財務大臣と協議して定める地震に対する安全性に係る基準に適合する家屋であること(登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以降の家屋については、新耐震基準に適合している家屋とみなす。)
5 土地(借地権)のみの取得は適用対象外
6 工事費用が100万円以上で増改築後の床面積50m²以上(又は40m²以上)240m²以下の一定の増改築等も対象となる
<住宅取得等資金贈与の対象となる増改築や大規模修繕等の工事>
増改築・大規模修繕等の工事
単独家屋
  1. 1増築、改築、建築基準法第2条第14号に規定する大規模の修繕又は同条第15号に規定する大規模の模様替
  2. 2家屋の一室(居室、調理室、浴室、便所その他の室)の床又は壁の全部について行う修繕又は模様替
区分所有家屋
  1. 1家屋のうちその者の区分所有する部分について、次のいずれかのもののその過半について行う修繕又は模様替
    1. (イ)主要構造部である床及び最下階の床又は階段
    2. (ロ)間仕切壁の室内に面する部分
      (間仕切壁の一部について位置の変更を伴う修繕又は模様替に限ります。)
    3. (ハ)主要構造部である壁の室内に面する部分
      (遮音又は熱の損失の防止のための性能を向上させる修繕又は模様替に限ります。)
  2. 2家屋のうちその者の区分所有する部分の一室(居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関、廊下)の床又は壁の全部について行う修繕又は模様替え

(注)家屋について行う建築基準法施行令第三章及び第五章の四の規定又は国土交通大臣が財務大臣と協議して定める地震に対する安全性に係る基準に適合させるための修繕又は模様替も含みます。

[4] 受贈者は合計所得金額2,000万円以下の者に限る

父又は母、祖父母、曾祖父母などから住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例の適用を受けることができる子、孫、ひ孫などの受贈者は、その年1月1日現在18歳以上で、住宅用家屋等の床面積が50m²以上240m²以下の場合はその年の合計所得金額が2,000万円以下の者に限りますのでご留意下さい。

[5] 合計所得金額1,000万以下の者は床面積40m²以上が適用対象に

新型コロナウイルス感染症対策として、ファミリー層以外の在宅が増え単身世帯等のマイホームの需要があるとして、令和3年度税制改正により、受贈者が贈与を受けた年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円以下である場合に限り、床面積要件の下限が40m²以上に引き下げられました。この取扱いは、暦年課税及び相続時精算課税のいずれにも適用されます。

<3つの贈与制度>

<3つの贈与制度>

※A:一般住宅
※B:省エネルギー性・耐震性・バリアフリー性を備えた良質な住宅用家屋
※1 令和6年1月1日以後の贈与については110万円の基礎控除分を加算しない。
※2 令和6年1月1日以後の贈与については相続開始前3年以内が7年以内となる。
※3 令和6年1月1日以後は、相続時精算課税制度に基礎控除が創設され、暦年課税制度の相続前加算期間が3年から7年に延長されます(別ページ「贈与税改正と生前贈与による対策」参照)。

※本サイトに掲載の内容は、令和5年6月現在の法令に基づき作成しております。

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