"2人事業主"における共同経営の留意点

クリニック経営の選択肢として「共同経営」があります。共同経営には、「個人クリニックを経営する場合」と「医療法人を経営する場合」があり、医療法人の場合は、1人が理事長となり、他者が役員または勤務医として経営に参画します。個人クリニックの場合は、1人を事業主として他者を勤務医とする方法(勤務医方式)か、共同経営者間で民法上の「任意組合契約」を結び各人を事業主とする方法とがあります。「任意組合契約」による共同経営では多くの留意点がありますので、今号ではこの部分に主眼を当てて解説します。

 
 

1.民法上の任意組合とは

民法上、「組合」とは、以下に記述したように、2人以上の者が出資し、共同の目的(事業)を営むことを約することにより、その効力を生ずる契約です。

組合契約の成立要件は下記のとおりです。
①2人以上の当事者が存在していること。
②各当事者が出資していること。
③共同事業を営む目的が存在すること。
④各当事者の意思が合致していること。
また、任意組合では出資は財産の出資のほか、労務の出資も認められています。

■任意組合型(共同経営方式)の取扱い

①組合員の損益の分配
組合員の損益分配にあたっては、各組合員の出資の価額の割合に応じて分配するのが本来ですが、組合契約で任意の割合で定めることもできます(民法674条①)。利益分配についてのみを定めたり、損失分配についてのみを定めたりする場合についても、利益および損失に共通して定めたものと推定されます。
任意の分配割合として例えば、労働時間、診療報酬の金額比、患者数の比率などに基づいた分配割合とすることが考えられます。

②所得税法上の納税義務者
任意組合とした場合、任意組合には法人格がありません。開設者が誰であろうと関係なく、出資の割合で各人が納税義務を負うことになります。任意組合には課税されません。組合の所得は、組合員の出資等に, 応じて各組合員の所得に分解し、各組合員の個人所得として課税されることになります。したがって、各人それぞれが組合の所得と任意組合以外の所得との損益通算を行うことができ、租税特別措置法26条(概算経費率)を適用することもできます。

2.所得税法上の利益または損失の額の計算方法

総収入金額等の計算は下記(1)による方法が原則です。組合事業に係る収入金額、支出金額、資産、負債等の状況を明らかにしなければなりませんが、できない場合、継続適用を前提に下記(2)と(3)の方法が認められます。

3.共同経営方式と勤務医方式の納税額の比較

<前提条件>
収入金額:5,000万円必要経費:2,100万円(実額)
措置法26条適用 勤務医は給与1,500万円と仮定

<結論>
共同経営方式の場合の税額は196万円、勤務医方式の場合の税額は総額570万円となり、大幅な節税効果が期待できます。

4.任意組合の運営上の注意点

任意組合に限らず、共同経営においては経営を続けていくうちに意見が対立することがあります。そういった対立を防ぐために、事前に協議を重ね各組合員の損益の分配割合を定めることがとても重要です。

税法上も税金の計算は分配割合の定めに基づいて行うことになりますので、税務上の証拠書類としても重要になります。実務上は組合総会の議事録等に損益の分配割合を明文化し、各組合員が自署押印することが必要です。

まとめ

病医院を取り巻く環境は年々、厳しくなる状況にあります。そういったなかで、共同経営による開業は、1人での開業よりも資金調達が容易になることや、同じ診療所内で複数の医師の診断が可能になるなど、より信頼性が増すことは大きなメリットになり、他診療所との差別化を図ることができます。
また、共同経営は節税効果を期待できることや、複数の医師によりリスクの分散ができることも大きなメリットでしょう。
したがって、これからは"一人医師"による経営だけでなく、複数の医師による共同経営の選択肢も念頭に置く必要があるのではないかと思われます。
(2013年9月現在)

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