クリニック経営に役立つ数字の見方!
効率的に利益を得ていますか?
─①収益性分析─

クリニックが安定経営を維持していくためには、自院の経営状態を"数字でしっかり分析することが必要不可欠です。
そもそも収益性とは、クリニックの"収益力"を意味します。医業収益高が上がっても利益率が下がることのないように適切な利益管理と、過剰資産を抱えることなく資本回転率を高めるような総合的な資本資産管理を行うことが大切です。
今号では「収益性」について解説します。

1.財務分析ってどうして必要なの?

財務データを活用して、さまざまな角度から自院の強みや問題点を把握し、適切な意思決定、経営判断に欠かせないものです。

経済成長の低迷で国の税収が落ち込むなか、高齢化の進展や国民の生活習慣、疾病構造の変化などにより国民医療費は年々増大しています。国の財政状況は厳しさを増すばかりです。クリニックの収入の根幹である診療報酬も平成24年度改定において、全体改定率プラス0.004%という結果でした。また国会では消費増税法案が審議されており、仮に法案どおりに税率がアップすることになれば、クリニック経営に大きな影響を与えることは間違いありません。
このような環境のなか、クリニックが安定経営を維持していくためには、自院の経営状態を"数字"でしっかり分析することが必要不可欠です。経営状態については、自院の決算書(貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書)をはじめとする「財務データ」から簡単に知ることができます。この財務データを活用して、さまざまな角度から自院の強みや問題点を把握し、分析するのが「財務分析」で、適切な意思決定、経営判断に欠かせないものです。

2.分析手法には「実数法」と「比率法」がある

財務分析の手法には次のようなものがあります。

これらの分析数値は「収益性」「生産性」「安全性」「成長性」などの領域から判断します。同規模同診療科クリニックの財務データは、中医協の「医療経済実態調査」や厚労省の「病院経営管理指標」、「TKC医業経営指標(M-BAST)」などから入手できます。M-BASTの経営分析体系は<参考:M-BASTの経営分析体系>となります。

3.収益性ー効率的な経営か否か?

そもそも収益性とは、クリニックの”収益力“を意味します。

クリニックの経営活動に必要な資金として投入された資本(総資本のこと。総資本=負債+資本)で、どれだけの成果(利益)を獲得できたかを示します。
その代表的な判断指標として「総資本医業(経常)利益率」があります。調達した資本を最大限に活用して利益率を高めることにより経営効率は向上します。
また、「総資本医業(経常)利益率」は、「総資本回転率」と「医業収益高医業(経常)利益率」に分解することができます。<参考:経営分析表>

「総資本回転率」は、投下された資本が医業収益として何回回収されたかを示す比率で、この比率が高ければ高いほど、資本効率がよいことを現します。一方の「医業収益高医業(経常)利益率」は、医業収益高に占める医業(経常)利益の割合で、この数値が高いほど、経営活動の効率がよいと判断できます。収益性の数値が低い場合は、「資本効率が悪い」または「利益率が低い」という2つの側面に行き当たります。

4.特に重要な収益性分析の指標とは?

クリニック経営に重要な指標は、「総資本医業(経常)利益率」です。

これを高めるには、「総資本回転率」と「医業収益高医業(経常)利益率」の向上が重要です。
「総資本回転率」の改善には、医業収益の増収と総資本の圧縮が考えられます。医業収益の急激な増収は期待できないので、総資本を圧縮することを検討します。回転率の低下は、検査頻度の少ない医療機器、医薬品在庫の持ち過ぎなどが原因です。これらを整理、処分することで資産が圧縮できます。貸借対照表の見直しを検討してください。
「医業収益高医業(経常)利益率」の維持・向上には、無駄な経費の削減と収益がアップしても利益率が下がらないように的確な利益管理が必要です。医業収益の増減にともなう費用として、医薬品費・診療材料費・検査委託費など(変動費)や給与費・水道光熱費・減価償却費・地代家賃・賃借料など(固定費)の医業収益に占める割合について、M-BASTなどの他のデータとの比較が有効です。ちなみに、給与費比率を引き下げるには、残業を減らすなど、1人当りの効率(生産性)を上げること、材料費比率を引き下げるにはジェネリック薬品を含む効用と仕入価格の検討が必要です。
なお、この「総資本回転率」と「医業収益高医業(経常)利益率」は背反関係になりやすいので、注意が必要です。しがたって、医業収益高が上がっても利益率が下がることのないように適切な利益管理と、過剰資産を抱えることなく資本回転率を高めるような総合的な資本、資産管理を行うことが大切です。

まとめ

収益性分析は、クリニックの資本効率と経営活動の効率を判断する指標です。
少ない投下資金で最大限の利益を獲得することが経営の鉄則と言われています。
開業計画を策定する際、どのような診療行為を計画しているのか、その診療行為になくてはならないモノやヒトなのか、なくても問題ない若しくは外注委託でも診療行為に困らないモノやヒトなのかを採算面から検討を行い、必要資金の算定を行うことが重要です。
(2012年9月現在)

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