病医院のコスト管理の基本
管理可能費・不能費に分けて検討しよう

税理士

田島 隆雄

田島会計事務所 所長

診療報酬のマイナス改定やクリニック開業件数の激増など、病医院経営を取り巻く環境は年々、厳しさを増しています。そうしたなか、安定した医業経営を実現するためには、適切な「コスト管理」が欠かせません。今号では、病医院のコスト管理の考え方や有効活用のあり方などを解説します。

1.「コスト管理」で費用を有効に投入する

コスト管理は、経営資源の管理でもあるのです。

病医院の費用には、収益に直接関係する「直接コスト」と、間接的に関係する「間接コスト」があります。

直接コストや間接コストは医業収益を獲得するために不可欠なものですが、なかには、未回収貸倒れや期限切れの医薬品在庫など、医業収益にマイナスをもたらすものもあります。
また、コストは収益によって比例的に増減する「変動費」と、収益の増減とは関係なく一定に発生する「固定費」に区別する(下図参照)ことができます。

病医院は医業収益を獲得するために、経営資源といわれる「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」「時間」を投入します。そこで得た収益と投入した費用の差が利益となり、この利益を再投資して継続的な病医院経営を展開することになります。利益をより大きくするためには、適切な「コスト管理」で、費用を有効に投入することが重要です。コスト管理は、投入する費用を意識的・計画的にコントロールすることを意味します。これにより、経営が安定し、より喜ばれる医療サービスを提供することができるのです。
適切なコスト管理を行うためには、マネジメントツールであるPDCA(計画:Plan、実行:Do、評価:Check、改善:Action)を活用し、改善効果を上げることも必要です(下図参照)。コスト管理は、経営資源の管理でもあるのです。

2.管理可能費・不能費のコントロール

病医院の費用は「管理可能費」と「管理不能費」に定義づけることができます。

管理可能費は、比較的容易にコントロールできるものです。管理不能費は人為的にコントロールすることが難しい性質を持つ費用のことです。広義な概念では「すべての費用はコントロールできる」ということで、管理可能費に位置づけられることもありますが、制度的、システム的に考えると、この2つに区分することが一般的です。
変動費は、変動幅が固定的との理由から管理不能費に位置づけられることもありますが、経営的に考えれば管理可能費ということになります。固定費は、コントロールできるものとできないものがあるということで、管理可能費と不能費にわけられます(下図参照)。

(1)管理可能費のコントロール

実務において、管理可能費をどのようにコントロールするかについては、図表1の通りです。

(2)管理不能費のコントロール

たとえば、地代家賃は、賃貸契約を締結すると、その契約期間中は、決められた月額賃料を変更することができません。また、電気代についても、ワット数や照明器具の大きさで、ほぼ、一定の費用が発生します。このように、管理不能費は人為的にコントロールすることが難しい性質を持っています。
しかし、前提要件を変更することができればコントロールできるともいえます。たとえば、地代家賃の場合、借用面積を拡大、または縮小、病医院の場所の変更、賃料の値下げ交渉などを行い、発生する費用額を増減することができます。つまり、管理不能費でも理事長や院長が、思い切った意思決定を行うことで、コントロールすることができるということです。図表2に管理不能費の一般的科目分類を示します。

3.コスト管理はスタッフ全員で取り組む

コストを管理するということは、病医院の経営資源を管理することでもあります。

病医院全体のコストを、1人のスタッフで管理することは不可能です。管理可能費については、理事長や院長、その奥様、事務長らが中心となり、政策的、意識的に決定し、管理することが一般的です。しかし、管理不能費は、時間の経過とともに発生する費用が多いため、仮に管理者が不在の場合には、その費用科目が自然発生的に1人歩きする性格を持っています。
たとえば、不要な時間やスペースで照明がついたままだとします。すると、スタッフの誰かが気が付いて消灯しないかぎり、電力は消費し続けることになります。全スタッフがコスト管理者になってこそコストコントロールは成功します。そのためには、コスト意識についてのスタッフ教育も重要になります。
コストは、病医院が提供する医療サービスを支える重要なものです。つまり、そのコストを管理するということは、病医院の経営資源を管理することでもあります。自院の経営資源の有効活用が、コスト管理の基本なのです。

まとめ

病医院のコストは、医業収益の構成要素ともなっており、コストのかけ方により医業収益に影響を与えるものです。
また、最終的な利益にも左右するという関係にあります。 このことから、病医院の経営資源をどのように効率的・重点的に配分するかということが、コストマネジメントの命題となります。 従って、理事長、院長先生等がもう一度自院の決算書を閲覧し、医業収益を高めるためのコスト分析を行い、有効に役立てていただければ幸いです。
(2012年5月現在)

〜ドクターのための豊富なTKC税務講座一覧〜

他にも医業経営に役立つ情報が満載です。様々な税務講座をご用意しております。
「+」をクリックすると内容を一覧できます。

医院経営について

会計
戦略
税制
その他