減価償却を理解し資金の把握に活かす

税理士

大田 篤敬

ビジネスサポート大田事務所 所長

減価償却とは、企業会計に関する購入費用の認識と計算方法の1つです。長期間にわたり使用する設備投資に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きです。
今回は、その制度について解説します。

1.減価償却は費用配分する手続きです

減価償却とは、企業会計に関する購入費用の認識と計算方法の1つです。

長期間にわたり使用する設備投資に要した支出を、その資産が使用できる期間にわたって費用配分する手続きです。
たとえば、クリニックを開業する場合には初期投資が必要になります。テナント開業の場合にも内装費用や上下水道工事や電気工事が必要になります。また、診療用の医療機器等を揃えなければなりません。これらは薬品のように一度使用するとなくなるという性質のものではなく、ある程度の期間、使用することができます。これをどのように費用配分するのかという手続きが減価償却という制度です。

減価償却の3つの側面
1.費用配分

会計では、1年基準(One Year Rule)というものがあり、1年ごとに収入から費用を引いて利益を計算することになっています。これを損益計算書(P/L:Profit & Loss Statement)といいます。初期投資のように何年も使用できるものは、その使用できる期間に分けて費用として計上するという当たり前の方法が減価償却という制度です。

2.資産評価

投資した資産は財産として残ります。事業体の財産の額を表現したものを貸借対照表、バランスシート(B/S:Balance Sheet)と呼びます。
財産は時の経過とともに値打ちが下がっていきます(美術品や骨董品のように値打ちが下がらないものもあるが、会計上は非減価償却資産と呼び区別する)。
この時価を測定するのに、費用化した減価償却分だけ減らせば時価が表現できることになります。

3.資金回収

毎期、減価償却費の費用として計上される金額は、お金の支出をともなわない経費です。したがってキャッシュフローの計算では、その減価償却費の計上分だけ資金が手元に残る計算になります。ただし、初期投資の段階で銀行などの金融機関から借入をしている場合、その返済額は、先ほどの損益計算書に現れてきませんから注意が必要です。このようにキャッシュフローを計算し可処分所得を計算する場合には、税引き後利益に減価償却費を加算し、借入金の元本返済額を差し引いて計算します。したがって、減価償却制度を理解すると、財務諸表の意味もよく理解でき、利益として計上している金額と手元の可処分所得の違いなどを読み取ることができます。

2.減価償却費の計算方法

資産ごとに耐用年数を法定し、事業者が届出た方法で計算することになります。

減価償却費をどのように計算するのかは、会計的に色々な考え方があります。しかし、税務上は、その資産ごとに耐用年数を法定(法定耐用年数)し、減価償却の方法も定められた「定額法」「定率法」「生産高比例法」のなかから、事業者が届出た方法で計算することになります。
たとえば、鉄骨鉄筋コンクリートで建築した病院の建物では、39年が法定耐用年数となり、現在建物については定額法しか税務上認められていません。

このように実際に減価償却費を計算するのは極めて困難になっています。特に定率法の場合には、以前のように未償却残高に定率をかけるのではなく、改定償却率および保証率との有利不利を計算して、減価償却費を計算しなければなりません。ただし、TKCの減価償却費の計算ソフトでは法定償却限度額を自動的に選んで計算してくれます。また、決算時点で翌期および10年後までの減価償却費の予測を自動的に計算することができます。

3.少額減価償却と特別償却制度

少額減価償却資産の損金算入と特別償却ついては以下の通りです。

少額減価償却資産は一括処理できる

10万円未満の少額の減価償却資産を購入した場合には、上記のような処理ではなく、購入時に一括して費用に処理することができます。また、10万円以上20万円未満の資産の場合には、3年間均等償却で費用化することができます。
一方、中小企業者等(青色申告法人で資本金1億円以下の法人や個人事業者)に該当する場合は、平成24年3月31日までの取得した30万円未満の減価償却資産については、年間300万円を限度として、全額を損金算入することができます。

医療用機器の特別償却制度とは?

現在、医療用機器で特別償却制度の中で使用可能なのは、「中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却」(措置法42の6、10の3)です。
中小企業者等が、平成24年3月31日までに、取得価額160万円以上の機械装置や「電子計算機」「デジタル複合機」である取得価額120万円以上の器具備品や一定のソフトウエア等を取得した場合には、税額控除との選択で100分の30の特別償却制度があります。ただし、平成23年4月1日以降終了する事業年度からは、適用額明細書の添付が義務付けられていますので注意が必要です。

まとめ

今回は、減価償却の意義を中心に解説しています。減価償却を理解すると、財務諸表の内容の理解が深まると思います。尚、医療用機器については、クリニックで使用する大半の機器(例えば、歯科用のチェアー等)の税務上の取扱いは、「機械」に該当せず、「器具・備品」に該当します。従って特別償却の対象は、クリニックでは、取得価額120万円以上の電子計算機やデジタル複合機や一定のソフトウエアなどに限られる傾向にあります。税務上の取扱いは注意して顧問の税理士に相談してください。
(2011年12月現在)

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