病医院の役員、理事の報酬の基本

法人税法上、役員に支払われる給与のうち損金に算入される給与は、「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」のうち適正な部分とされています。法人税法の取り扱いを熟知し、一定の手続きを踏んで慎重に役員報酬を決定しなければなりません。今回は法人税法の基本的な取り扱いについて解説します。

1.法人税法上の役員報酬の取り扱い

法人税法に即した役員給与を支給しなければ、法人税法上、損金として認められません。

(1)医療法と法人税法の役員の範囲の違い

医療法では、「医療法人には、役員として、理事3人以上及び監事1人以上を置かなければならない。(医療法46の2(1))と定めています。したがって医療法上は「理事」と「監事」が役員に該当します。
法人税法上の役員とは、理事、監事、及び医療法人の使用人(職制上使用人としての地位を有する者に限る)以外の者で、その医療法人の経営に従事している会長、相談役、顧問役等をいいます。
<注> 医療法人は、同族会社の規定は適用されず、同族会社のみなし役員規定の適用はありません。

(2)使用人兼務役員

法人税法は、使用人兼務役員を、役員(理事、理事長その他政令で定めるものを除く)のうち、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事するものと定めています。
具体的には、次のすべての要件を満たす必要があります。

(1)理事長、専務理事、常務理事以外の役員であること
(2)院長、部長、課長その他法人の使用人としての職制上の地位を有すること
(3)常時使用人としての職務に従事する者であること。

(3)法人税法上の役員給与

法人税法では、損金算入が認められる役員給与の3類型として以下の様に定められています。

(4)過大役員給与

役員給与に該当するものは、原則として損金の額に算入しますが、そのうち不相当に高額な部分は、損金の額に算入しないこととなっています。

(5)未払金の取扱い

法人税法上の債務確定基準の要件を満たし、未払金の計上が租税回避目的ではなく、資金繰りの関係から生じたもので短期間に解消されるような合理的な理由がある場合には損金として認められますが、支給額を未払金に計上して長期間支払われないような場合には認められません。

2.役員報酬等の決定手続き

役員給与のうち、形式基準を満たさないものは法人税法上損金として認められません

(1)医療法と法人税法の役員の範囲の違い

役員報酬、賞与、その他の職務遂行の対価としての医療法人から受ける財産上の利益について次に掲げる事項は、定款にその事項を定めていないときは、社団の場合には社員総会、財団の場合には理事会の決議により決定します。なお、役員給与のうち、形式基準を満たさないものは法人税法上損金として認められませんので、社員総会及び理事会の議事録を証拠書類として備えることが大切です。

社団法人では社員総会において報酬限度額の決議を採っておき、各事業年度の各人別の実際の支給金額の決定については理事会決議に一任するケースが一般的です。

ケーススタディ Case study
  • Q-1

    理事長の役員報酬を引き上げたいと思いますが、過大な役員報酬は法人税法上損金にならないと聞きました。いくらぐらいまでなら損金になるのでしょうか。
  • A-1

    役員の職務内容、法人の収益状況、同種同規模法人の給与の支給状況等に照らして不相当に高額な役員報酬の額は損金になりません。分相応に高額かどうかの判定は、実質基準・形式基準に基づいて行われます。個々の事情によってことなりますので、一概には断定できません。
  • ・実質基準による判定((1)~(4)を総合勘案)
  • (1)職務の内容が相当であること
  • (2)その医療法人と同種の事業を営む法人で、その事業規模が類似するものの役員に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合には、その超える部分の金額
  • (3)その医療法人の収益状況
  • (4)使用人に対する給料の支給状況
  • ・形式基準による判定
  • 定款あるいは総会の決議により、給与の限度額を定めているとき、その限度額を超えて支給されたその超える金額
    • Q-2

      医科大学に在籍している理事に対して役員報酬を支払っているが、これは損金算入することができますか。
    • A-2

      医科大学に在籍中の理事であっても、税法上の役員に該当します。しかし、役員報酬については勤務実態に即して支給されるものであり、理事の地位のみによって支給される役員報酬は、損金の額に算入されることはできないと考えられます。

    (役員報酬については、その勤務実態に応じて、支給額が適正であるかどうか判断されます。役員としての職責を遂行できる状態であるか、その者の知識、経験、役員としての就任期間、勤務状況、勤務内容等からみた同人のその会社の経営に参画する程度、他の使用人に対する給与の額などから、客観的に判断する必要があります。

まとめ

役員報酬は正しい手続きを踏み、税法上認められている形で支給することが大変重要となります。まずは、以下のポイントをおさえ、実際の支給の際には専門家に相談されるなど慎重に決定されるのが良いでしょう。
・役員報酬は定期、定額で支給する。
・賞与は事前に税務署に届出を提出する。
・勤務の実態に応じた役員報酬を支給する。
・同種同規模の法人と比較し、相当な額を支給する。
・社員総会、議事録で決議した記録を残し、それに従った役員報酬を支給する。
(2011年11月現在)

〜ドクターのための豊富なTKC税務講座一覧〜

他にも医業経営に役立つ情報が満載です。様々な税務講座をご用意しております。
「+」をクリックすると内容を一覧できます。

医院経営について

会計
戦略
税制
その他