適切な意思決定のための予算管理

税理士

田島 隆雄

田島会計事務所 所長

病医院の経営環境は、診療報酬のマイナス改定や無床診療所件数の増加など、年々厳しくなっています。こうした状況のなかで病医院が生き残っていくためには、財務管理をしっかりと行い、健全な経営体質をつくり上げていくことが大切です。なかでも、財務管理の中心を担う「予算管理」は欠かせません。今回は、病医院の予算管理のあり方やそのメリット、留意点などを解説します。

1. 健全な財務体質をつくる予算管理

「予算管理」とは予算を立案して、明確化した病医院の方針や目標を達成させる手段の1つです。

達成可能な計画を作成し、その計画と実績を比較検討しながら、問題点を解決し、経営業績の向上や改善を図ることができます。達成可能性がない数値目標であったり、目標を立案するだけでは、予算管理と呼ぶことはできません。予算を示すものとしては具体的に、病医院の収入・支出の予算を表す「資金繰り計画表」、損益の予算を表す「損益計画表」、予算と実績を対比する「予算実績比較表」があります。
"目標なくして行動なし""予算なくして事業なし" といわれるように、予算管理は「成り行き経営」から「計画経営」へ転換するものであり、病医院の健全な財務体質を形成する上で、欠かすことのできないものとなっています。
予算は、それぞれの病医院の方針や考え方などに連動し策定されることになります。当初予算に限りなく実績を近づけることが予算管理の要点となります。

2. PDCAをまわすことが目標達成の近道

予算管理で重要なことは、単に目標と予算を立案するだけでなく、それを達成するために行動を統制することです。

そこで、「PDCA:Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(対策)」のマネジメントサイクルをしっかりまわしていくことが大切となります。

まず、「P」で予算計画を立て、「D」でその計画を実行します。そして、「C」で実行した結果を評価し、「A」で当初予算に近づけるように調整します。こうした段階的な取り組みを繰り返すことが、目標を達成する近道となります。 患者中心の医療の重要性が叫ばれて久しい近年、それらを実現するためには、安定した経営基盤が構築されていることが大前提となります。こうした意味からも予算管理は大変重要なことといえます。

3. 病医院経営における6つのメリット

病医院経営において予算管理を行うことによるメリットとして、 主に以下の6点があげられます。

4. 予算策定上の留意点

予算には「固定費予算」「変動費予算」「医業収益予算」「資金予算」などがあります。

それぞれ留意点がありますので、しっかり理解することが大切です。

(1)固定費予算

固定費は、年間を通じて医業収益の増減にほとんど左右されず、一定額で発生する性格を持っています。つまり、前年度の実績額が参考になります。意識的に変えられる予算として交際費、広告宣伝費、研修費などがありますので、必要度合いに応じて予算立てをするとよいでしょう。

(2)変動費予算

病医院の変動費の代表的なものとしては、「薬品仕入」「検査手数料」「医薬消耗品」などがあります。これらは、医業収益に増減比例する性格を持っています。計画的な仕入や価格交渉などによって、発生額を抑えることも可能ですので、十分な検討が必要です。

(3)医業収益予算

医業収益予算は「固定費」「変動費」「医業利益」の金額をカバーするものです。患者数の推移、新患割合、検査件数、平均点数などを検討し、予算測定が必要となります。

(4)資金予算

年間を通して資金繰り(お金)がトントンの状態を収支分岐点売上高(医業収益高)といいます。スタッフの賞与の支給時期には大きく資金が必要となり、比較的暇な時期の2か月後には基金等からの入金が少なくなります。このような月には、資金不足の可能性があり、銀行での短期借入を検討する必要性が生じるケースもあります。 収支分岐点売上高(医業収益高)とは、病医院の取引をすべて現金取引と仮定して、以下のように算定します。

※支出項目とは、年間の固定費や借入金返済額、定期積立金等があります。ただし、年間固定費に含まれる減価償却費は、現金支出をともなわないため、除外します。
このことから、〔限界利益=支出項目〕の関係にあり、支出項目が限界利益でカバーされるときの売上高となります。

まとめ

近年、総人口や労働人口が減少するとともに、少子高齢化が進展し、老人医療の需要増加が予測されています。こうしたニーズの高まりに対応した優良なサービスを提供するためには、まず、自院の財務体質を強化することが求められます。そして、その実現には、予算管理に基づく計画的な病医院運営が必要であり、それこそがこれからの安定的成長の前提条件です。
(2010年10月現在)

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