資金管理は「キャッシュ・フロー」重視で

税理士

石川 誠

石川会計事務所 所長

最近では「キャッシュ・フロー計算書」が重要視されるようになりました。キャッシュ・フロー計算書は、貸借対照表や損益計算書に続く第3の決算書ともいわれる資金収支表で、決算書ではわからない資金の流れを表します。今月号ではキャッシュ・フローを重視した資金管理のポイントなどを解説します。

1.「資金運用表」「資金繰り表」の重要性

損益計算書では「発生主義」といって、役務の提供をした時点で収益や費用を認識します。

病医院においては、患者を診た時点で窓口収入を計上し、社会保険診療報酬は2か月間未収ながらも収入として認識することになります。つまり、収益を認識したにもかかわらず、お金は入金されていないということが起こることになります。いわゆる「勘定あって銭足らず」の状態です。この状態が運転資金の余裕を超えると資金ショートとなり、借入金の返済に支障をきたすと、経営破たんすることもありえます。そうならないためにも「資金運用表」や「資金繰り表」などを確認し、しっかり資金計画を立てて経営をする必要があるのです。

(1)資金運用表

一定期間の資金の調達(どこから)と運用(何に)の関連を観察、分析する計算書です。計算した増減数値を資金の性質によって分類し、期中において資金をどこからどれだけ調達し、それを何にどれだけ運用転嫁したかを分析します。
それによって資金調達と運用使途の適否を判定し、財務の安全性を高めることに貢献します。

(2)資金繰り表2

一定期間の収入と支出の予定から資金の流入と流出を予測し、運転資金の過不足を的確に把握するために作成する現預金の資金繰りを計画した計算表のことです。資金不足が予想されるときは事前にその手当てを計画しなければ当然資金ショートを起こします。「資金運用表」とともに資金ショートを排除・回避して財務の安全性を高めることに貢献します。

2.キャッシュ・フロー計算書とは

キャッシュ・フロー計算書では、業務活動、投資活動、財務活動の3区分における資金の動きが把握できるようになります。

キャッシュ・フロー計算書を作成するためには、直接法と間接法があり、経営管理に役立てるには直接法のほうがふさわしいといえますが、相応の手間とコストがかかることから間接法が現実的と考えられます。

(1)直接法と間接法

直接法とは、医業収入や材料の支出など、主要な取引ごとにキャッシュ・フローを総額表示する方法をいいます。
間接法とは、税引前当期純利益に、非資金損益項目、業務活動に係る資産及び負債の増減並びに「投資活動によるキャッシュ・フロー」及び「財務活動によるキャッシュ・フロー」の区分に含まれるキャッシュ・フローに関連して発生した損益項目を加減算して「業務活動によるキャッシュ・フロー」を表示する方法をいいます。

(2)業務活動によるキャッシュ・フロー

「業務活動によるキャッシュ・フロー」の金額は、病院が外部からの資金調達に頼ることなく、事業能力を維持し新規投資を行い、借入金を返済するために、どの程度の資金を主たる業務活動から獲得したかを示す主要な情報となります。「業務活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、医業損益計算の対象となった取引にかかるキャッシュ・フロー、業務活動に係る債権・債務から生ずるキャッシュ・フロー並びに投資活動及び財務活動以外の取引によるキャッシュ・フローを記載します。

(3)投資活動によるキャッシュ・フロー

「投資活動によるキャッシュ・フロー」の金額は、将来の利益獲得及び資金運用のために、どの程度の資金を支出しまたは回収したかを示す情報となります。
「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分には、以下の取引に係るキャッシュ・フローを記載します。

(4)財務活動等によるキャッシュ・フロー

「財務活動等によるキャッシュ・フロー」の金額は、業務活動及び投資活動を維持するためにどの程度の資金が調達または返済されたかを示す情報となります。
「財務活動等によるキャッシュ・フロー」の区分には、以下に係るキャッシュ・フローを記載します。

(5)キャッシュ・フロー計算書の様式例

キャッシュ・フロー計算書の様式としては、直接法と間接法がありますが、直接法が原則で間接法が簡便法というわけではありません。直接法とするか間接法とするかは、病医院の選択に委ねられます。なお、投資活動によるキャッシュ・フローと財務活動等によるキャッシュ・フローの区分は直接法と間接法の差異はありません。

まとめ

病医院の経営には多額の資金が必要となります。病院の場合は土地や建物、医療機器などに多額の設備投資が必要ですし、クリニックにおいても開業時には同様の資金が必要となります。また、開業後も運転資金などが必要になり、いかに調達するかが常に大きな課題となります。
しかも、自己資金ですべてを賄うことは困難であり、ほとんどのケースで借入金などに頼って資金調達がなされます。資金がショートしないように資金の増減をキャッシュベースでとらえる必要があり、資金管理(資金運用表、資金繰り表)の必要性がそこにあります。
(2010年7月現在)

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