リース関連税務で注意すべき点

税理士

丹羽 篤

コンパッソ税理士法人 代表社員

開業時や高額な設備投資などの際には、自己資金や銀行からの借り入れなどによる設備購入のほか、リース取引の活用があります。
リース会計基準の改正で、平成20年4月1日以後に締結したリース契約については、新しいリース税制が適用されることになりました。リース取引に関する消費税の取り扱いは大きく変更されましたが、原則としての売買処理のほか、税務計算上は、従前の賃貸借処理も認められ、損金(経費)算入額も従来と大きな違いはありません。今回はリース関連税務について解説します。

1.「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の違い

広く賃貸借取引を「リース」と総称しますが、「ファイナンス・リース」 と「オペレーティング・リース」に大別されます。

ファイナンス・リースとは、リース会社がユーザー(借手)に代わって機器等を購入し、一定期間ユーザーに賃貸するものです。オペレーティング・リースは、それ以外のものです。一般的に前者を「リース」、後者を「レンタル」といいます。
リースは、借手が指定する機器等をリース会社が購入し賃貸するので中途で解約できません。借手が全面的に利用し、購入費や金利、固定資産税、保険料など総費用の合計額(90%以上)をリース期間で分割して負担します。維持、補修費用も借手が負担します。賃貸期間は比較的長期になります。
レンタルは、週・月の短期契約が主で、途中解約が可能です。対象機器はレンタル会社の在庫から選択するため、高額医療機器などは対象になりにくく、事務機器などが主です。賃借料は比較的低額で、メンテナンス費用はレンタル会社が負担します。

2.リース取引の費用(損金)の計算

リース取引は原則、売買取引とされましたが、従来どおり賃借料(リース料)として経理した場合も、売買による償却費と同様に損金として扱われます。

■売買取引とした場合

●貸借対照表にはリース総額を有形(無形)固定資産の「リース資産」に、未払いのリース代金を「未払金」(1年超の部分は長期未払金)というリース債務に計上します。
●次のリース期間定額法により償却限度額を計算し、減価償却費を計上します。

※1:リース支払額の総額で残価保証額があれば控除。リース料のうち利息相当額が区分できれば控除し、別途期間対応で損金計算。
※2:1月に満たない端数は1月。
●減価償却の方法はリース期間定額法のみですが、リース期間が相当に短く、所有権が移転(売買)したものは、他の購入した固定資産に借手が適用している減価償却方法に従い償却額を計算します。

■賃借料とした場合

●レンタル取引と同様、リース料として支払いの都度、損金経理します。通常のリース取引であることが確認できれば税務上、適正に償却費として損金経理した金額とされます。
●リース料の支払額の合計は、リース期間定額法での償却額と原則同額となりますので、いずれの方法でも損金(経費)算入額は変わりません。

■リース取引のメリット・デメリット

主なメリット・デメリットは以下のとおりです。

<メリット>
●キャッシュフロー計算が平準化でき、資金計画上のコスト把握も容易。
●金融機関からの借入に比べて、原則、担保が不要。(初期購入資金が不要)金融機関の貸し出し枠を温存でき、余剰資金を確保できる。金利変動(上昇局面)の影響を排除できる。
●固定資産税や保険料などを個別に支払わないため、申告・納税事務等の負担が軽い。
●リース期間を法定耐用年数の70%以上にすれば、購入の場合の減価償却より短期で費用化できる。
●リース期間終了後も低額で再リースが可能となる。

<デメリット>
●途中解約ができず、所有権もないため売却できない。
●借入金返済は長期も可能だがリースは比較すると支払期間が短期。
●リースが終了しても物件の取得ができない。
●金利負担などを考慮すると購入より割高になる。
●当初資金負担がないため、採算を軽視した安易な機器導入になることがある。
●物件を所有していないのに保守、管理義務がありメンテナンス費用も負担する。
●リース資産の所有権が移動しないため、特別償却や圧縮記帳制度は適用できない。
●償却額の計算がリース期間定額法のみなので、定率法による導入早期の前倒し償却ができない。

3.リース税制の変更が他の税金に及ぼす影響について

影響を及ぼすものとして以下があげられます。

■消費税

●従来、リース取引は支払いの都度、消費税の課税仕入れとして処理されてきましたが、今改正により、リース資産の引き渡し時にリース資産の譲渡があったものとされ、売買処理、賃貸借処理ともに、リース資産の引き渡し時点でリース料全額に対する課税仕入れ(仮払消費税)を計上し、仕入税額控除を行うことになります。また、リース料のうち契約上利息相当分や保険料が明示されていれば、その部分は非課税となります。(例外につきましては、「今回のまとめ」を参照ください。)
●簡易課税制度を採用している場合は、高額な医療機器等をリースする予定があれば、事前に本則課税への移行の検討を要します。
●平成20年4月1日以後に締結されたリース契約に適用。それ以前からのリース契約やレンタルは、従来どおり支払いの都度、消費税の処理をします。

■固定資産税

償却資産課税台帳に登録されている所有者(リース会社)に従来どおり課税されます。

■租税特別措置法など

●今改正でリース取引を売買扱いとしたため、平成20年4月1日以後締結されたリース取引についてはリース税額控除が廃止されました。ただし売買取引とみなされたことにより、通常の資産の取得に対する各種税額控除の対象になります。リース取引は所有権が移転しないため、資産の取得に適用される特別償却や圧縮記帳については適用されません。
●法人税法の10万円未満の少額減価償却資産や20万円未満の一括償却資産の一時損金処理は不適用。

4.残価設定によるオペレーティング・リース

リース期間が自由に設定でき、リース料が全額必要経費になり、短期間で賃借機器などを新型に更新できるのが特長です。

リース料の総額が通常取得に要する金額のおおむね90%を超える場合はファイナンス・リースとされますが、リース期間終了後のリース物件の価格(残価)を多めに設定し、リース支払総額を低くすることにより、オペレーティング・リース扱いとする方法です。最近自動車のリースなどで目にすることも多くなりました。この場合はリース期間が自由に設定でき、リース料が全額必要経費になり、短期間で賃借機器などを新型に更新できます。ただしリース期間終了後も引き続き使用する場合は、買い取るか、再度リース契約を結ぶなど新たな負担が発生するので、トータルコストが割高になる可能性があります。リース会社や会計事務所によく確かめてください。

まとめ

所有権移転外ファイナンス・リース取引の消費税は、資産の引き渡しのあった課税期間で一括控除が原則とされていましたが、その後、国税庁ホームページの質疑応答事例で賃借人が賃貸借処理を採用しているときは、支払日の属する課税期間で分割控除処理をすることも認められました。
簡易課税から本則への変更などにより分割控除に出来る場合もありますので、会計事務所などにご確認下さい。
(2009年12月現在)

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