交際費と隣接費用の考え方

自然増収が伸び悩んでいる現状では、これまで以上に交際費を使って何らかの対策をしようとする病医院が増えてきます。しかし、交際費は税務調査においても厳しく調査しますので、トラブルのないように正しい理解が必要となります。今回はそのポイントを解説します。

1.交際費の判断基準と家事費の区別について

交際費課税の趣旨は、社用族による無駄使いを抑制することのほかに、大企業が豊富な資金力を利用して、得意先を接待し、他の中小企業よりも優位に取引することを抑制することにあります。

■交際費等に該当する三要件

●(支出の目的)「交際費、接待費、機密費その他の費用」
●(支出の相手先)「得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対し」
●(行為の形態)「接待、きょう応、慰安、贈答その他これに類する行為」
支出の相手先には次のようなものが考えられます。
・患者、連携関係のある大学病院、病医院、薬局、出入り業者などのような直接的な取引関係者
・出身大学、医師会関係者などのような間接的な利害関係者
・勤務医、看護師、職員、事業専従者等のように病医院内部の利害関係者

■「家事費」と「交際費」の区別について

個人が支出する費用には
(1)自己の生活費などのような「家事費(家事上の経費)」
(2)医院併用住宅の減価償却費、火災保険料、水道光熱費などのように家事上の経費と事業上の経費が混在している「家事関連費」
(3)「事業上の経費」
の3つにおおむね区分されます。
事業所得の計算上、(1)と(2)の家事上の経費相当額は必要経費とはなりませんが、(3)及び(2)の事業上の経費相当額部分は必要経費となります。ゆえに、接待の相手方、接待の理由などから見て専ら業務の遂行上直接、間接に必要と認められるものは必要経費に算入することができます。
したがって、いわゆる事業主である院長自身の自己接待費、院長自身の家族との飲食費、事業遂行上で関連性が希薄な親族や友人との会食代などの私的な接待交際費は、上記(1)の家事費に該当し、当然必要経費には算入できません。

2.交際費と隣接費用

次のケースは隣接費用として、交際費の範囲に含まれませんので、区分を明瞭にしておくと節税となります。

■交際費等の名義で支出した金銭が「給与等」と判定されるケース

支出の目的等を勘案した場合、給与の性質を有すると判断される場合は、交際費ではなく給与等となります。
給与等と判定される場合
●常時支給される昼食等の費用
●自社の製品、商品等を原価以下で従業員に販売した場合の原価に達するまでの費用
●機密費、接待費、交際費、旅費等の名義で支給したもののうち、その法人の業務のために使用したことが明らかでないもの

■「福利厚生費」と「交際費」との区分について

支出の目的、対象、金額の多寡によって判断されます。
●支出の目的が、福利厚生にあたるかどうかで判断します。
福利厚生のための支出には、基本的に接待・きょう応などに類する行為がかなり多いので、注意が必要です。
●支出する相手方が、特定の従業員であるか、従業員全般であるかで判断します。
●支出する費用の額が、福利厚生のために、通常、必要とされる額であるかどうかで判断します。
例えば、従業員の慰安旅行のためにかかった費用が、社会通念上、通常、必要とされる額ならば、福利厚生費となります。

■交際費か隣接費かを判断する場合の注意点

その費用が交際費になるのか、それとも隣接費用になるのかは、支出の目的、相手先、内容等をよく吟味した上で判断します。

3.税務調査等に対する留意点について

留意すべき点としては、領収書がもらえない場合などは「支払報告書」「支払証明書」を活用し、会議が行われた場合はきちんと議事録を作成します。また、各種規定を整備しておくことも重要なポイントとなります。

■支払報告書の活用

とくに飲食代については、「いつ、どこで、誰が、誰に、何のために支出するのか」を明確にすることが重要であるため、「支払日、支払先、支払額、支払いの事由、参加者(自院と相手先)」を記載する「支払報告書」を活用し、その内容を記録に残しておきます。
また、会議や打合わせについても、議事録を作りその内容を記録しておくことで、後日、その内容を見れば飲食代がなぜ必要であったのかが説明できます。

■支払証明書の活用

冠婚葬祭の支出など通常領収書等がもらえない支出は、「支払日、支払先、支払額、支払いの事由、請求書等の交付を受けられなかった場合の理由及び支払先の住所」を記載する「支払証明書」を活用します。この場合、その支払いについての、事実関係を明確にするために、礼状、案内状、招待状等を、支払証明書に添付しておきます。

■規定の作成・整備

慶弔見舞金については、慶弔規定を作成し、社会通念上妥当な金額をあらかじめ決めておきます。また、接待交際費の有効活用などを図るためには、交際費規定を作成しておくことも1つの方策となります。
平成21年度の税制改正では、「1人あたり5,000円以下の飲食費」について、損金算入が認められることとなりました。しかし、それ以外の部分は、個々のケースごとにその実態をみて判断することが必要です。

まとめ

(1)「交際費」の範囲をしっかりと認識することから出発しなければなりません。
(2)「事業に関係ある者等」には直接に取引関係のある者だけでなく間接的に利害関係のある者、及び役員、従業員、出資者等の事業の内部の者も含まれます。
(3)交際費と①寄付金 ②福利厚生費 ③給与等の区分が曖昧でその範囲が不明確な範囲、区分を明確に峻別することです。
(4)個人費用が混入しないように防止しておくことです。
(5)支払明細を記入した支払証明書等や記録等の支出証拠を整備することによって支出事実を立証することです。
(2009年11月現在)

〜ドクターのための豊富なTKC税務講座一覧〜

他にも医業経営に役立つ情報が満載です。様々な税務講座をご用意しております。
「+」をクリックすると内容を一覧できます。

医院経営について

会計
戦略
税制
その他