概算経費率とは

税理士

石川 誠

石川会計事務所 所長

社会保険診療報酬に係る経費は、実額計算のほか、概算経費率により計上できます。概算経費率を用いると多くの場合、有利な納税を行うことができますが、必ずしもそうでない場合もありますので、適用する場合の留意点などを理解することが大切です。

1.概算経費の特例とその際の留意点について

概算経費の特例は、社会保険診療報酬の年額5,000万円までを4段階に区分して、それぞれの経費率を乗じて所得を計算する仕組みです。適用したほうが税金面で有利になるケースが多いですが、適用する場合には、以下の3点に留意する必要があります。

■社会保険診療報酬は年間5,000万円以下?

社会保険診療報酬が年間5,000万円以下の場合、概算経費率によって所得計算をすることができます。しかし、12月末の診療が終わらないと、超えたかどうかは正確に判断できません。5,000万円を1円でも超えると、適用できなくなり、所得計算に大きな影響を与えます。超えた場合も想定して、その対策を同時に考えておく必要があります。

■専従者給与を必要経費に算入しても大丈夫?

青色申告の場合、家族に支払う給与は、届け出により専従者給与として必要経費に算入することができますが、概算経費率を用いたケースのほうが、有利になることがありますので、十分検討する必要があります。また、支払った後で、概算経費のほうが有利だったとしても、専従者給与(源泉所得税を支払済み)を取り消すことはできません。専従者給与にかかる所得税や住民税の金額も考慮し、必要経費への算入を検討する必要があります。

■自由診療収入がある場合はどうするの?

概算経費率は、社会保険診療報酬が5,000万円以下のときに選択することができますが、自由診療収入がある場合は、必要経費を社会保険診療と自由診療のそれぞれにかかる固有経費と、共通経費とに分けて、さらに共通経費は按分して所得計算をします。従って全体の収入に占める社会保険診療収入の割合や、それにかかる固有経費の額によって、有利不利の関係が変動しますので、個別に判断しなければなりません。

2.電子計算機を取得した場合

所得税額の特別控除は、概算経費率を用いた場合でも適用できます。

1台120万円以上の特定の器具及び備品を取得した場合、取得価額の7%相当額の税額控除(租税特別措置法第10条の3第3項)は、概算経費率を用いて所得計算をしている場合でも、その年分の事業所得に係る所得税額の20%相当額を限度に適用することができます。
一方で、租税特別措置法施行令第18条には、社会保険診療報酬の所得計算の特例を適用する場合、特別償却等を必要経費に算入することができない旨が規定されています。これは、重複して経費算入をすることを排除するための規定で、所得税の税額控除までを排除しているものではありません。

まとめ

確定申告のために所得を計算する方法において、時代の変遷とともにほとんどの概算計算は廃止され、実額計算でしか認められなくなりました。しかし、社会保険診療報酬に対する概算経費率は選択する事が出来るものとして今も認められています。冒頭にも記述しましたがメリットになる場合とデメリットになる場合があります。微妙なケースではその適用には専門家に相談する事をお勧めします。
(2009年7月現在)

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