納税義務者が留意すべきこと

第5次医療法改正にともない改革された医療法人制度により、出資持分の定めのある医療法人は平成19年4月以降は設立できなくなりました。この影響により、今後は、共同経営を行う病医院が増加することも予測されます。
親子間や夫婦間などが共同して病医院を経営する場合の納税義務者の判断などについては、複雑なケースもありますので、留意すべきことをしっかりと抑えることが大切です。

1.所得税の納税義務者の範囲について

所得税法によって個人の所得税を納めなければならないと定められている納税義務者は、以下のように区分されており、その区分に応じて所得税の課税対象となる所得(課税所得)の範囲が定められています。

■居住者

居住者とは、日本国内に住所を持っているか、もしくは、現在まで引き続いて1年以上居所を持っている人です。居住者は、その人のすべての所得について所得税を納める義務があります。一般的に、ほとんどがこのケースに該当します。

■非居住者

非居住者とは、居住者以外の個人のことで、国内に住所および居所を有しない者、国内に住所を有せず、かつ、居所を有する期間が、現在まで引き続いて1年未満である者が該当します。日本国内で生じた所得に限り、所得税を納める義務があります。

■非永住者

居住者のうち日本国籍がなく、かつ、過去10年以内の間に国内に住所、または居所を有する期間の合計が5年以下である人を非永住者といいます。非永住者は、国内において生じた所得の全部と、これ以外の所得で日本で支払われたもの、または国外から送金されたものについて所得税を納める義務があります。

2.親子間や夫婦間などが共同で経営する場合の納税義務者

事業所得の申告納税者は、事業の名義人や財産の所有者に関係なく、その事業を実質的に経営し収益を享受している「事業主」がなることになります。

■親子などによる共同経営の場合

基本的に各人をそれぞれ事業主とすることは認められません。単に場所を共同利用しているケースで、収支が明確に区分されているときのみ各人を事業主として取り扱うことができます。
一般的な共同経営においては、各人のいずれかを事業主と判定して、その事業所得を計算することになります。子供、配偶者は専従者給与として適正額をもらうことになります(青色申告条件のもと)。

■事業所得の申告納税者は、事業の名義人や財産の所有者に関係なく、その事業を実質的に経営し収益を享受している「事業主」がなることになります。

親子・夫婦など生計を一にする親族間における「事業主」が誰であるかは、その事業の経営方針の決定に支配的影響力を持つと認められる者をもって推定することを原則としています。
しかし、生計の主宰者以外の者が医師・歯科医師・薬剤師などの自由職業者で、生計の主宰者と一緒に事業に従事している場合は、次の条件を満たしていれば、主宰者と親族とを別々に申告納税者とすることができます。

1)親族と主宰者との収支が別々に区分されていること
2)財産の帰属が明確となっていること
3)親族の従事状態が主宰者に従属していると認められないこと

■単に診療に従事していないだけでなく、診療所の経営自体もご子息が従事していると認められるケースでは、診療所開設者の名義に関係なく、ご子息の名義で申告することになります。

これについては、実質所得者課税の原則(所得税法第12条)で「資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であって、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益はこれを享受する者に帰属するものとして、この法律を適用する」と定められています。

3.贈与又は相続して取得した場合の納税義務者

名義変更が無償で行われた場合は、前経営者に帰属していた財産には贈与税が課税されます。

■父親が経営するクリニックの名義を、息子に名義変更した場合

病医院などの経営者の名義変更が、無償で行われた場合には、これまで、前経営者に帰属していた財産に贈与税が課税されます。

新経営者が引き継いだ債務の合計額が、引き継いだ事業用資産の時価の総額を上回る場合、逆に、その差額は、新経営者から前経営者に贈与したものとして取り扱われることになります。
又は事業承継の対象となる財産として、棚卸資産、事業用固定資産、事業用資産などがあります。後継者には引き継がせたい財産(事業用の不動産や出資金等)を贈与し、それ以外の相続人には一定の金額の財産を贈与すれば、生前に意思を明確にした財産分けをすることができます。これまで高い贈与税が課せられていましたが、精算課税贈与で可能となりました。

まとめ

“納税義務者は誰か”
生計を一にしている親族間における事業で「生計を主宰している者」は実際には親子間であれば親が事業主、夫婦間であれば夫が事業主となっている場合が多いようですが、絶対にそうでなくては認められないというものでなく、それぞれのケースに応じて事業主は決定されます。その判断が困難なケースの場合に“推定”で事業主を決定することになります。通常の場合に事業の名義人や財産の所有者に関係なく、その事業を実質的に経営し収益を享受している「事業主」がなります。共同経営で別々に納税義務者になるほうが事業所得を2人に分散できるので節税上は有利になります。
贈与、相続と事業継承まで考えて後継者に財産を引き継ぎすることが重要です。
(2009年6月現在)

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