減価償却制度の大幅改正について

税理士

岩田 修一

岩田会計事務所 所長

減価償却は「資本の再生産」のための「キャッシュ財源」として極めて重要です(減価償却の「金融効果」)。平成19年の税制改正で抜本的な改正がなされましたが、医療関係者にとっても後述するように「償却可能限度額と残存価額の廃止(所謂“残存価額5%問題”)が関係してきます。特に、高価な医療機器を導入されている病院においては相当の関連がでてくるものと思われますので、改正点をしっかりと理解することが大切です。

1「減価償却制度」の大幅な改正とその内容

減価償却制度と減価償却遺産の要点をしっかり理解することが大切です。

■減価償却制度について

設備投資の促進を図り、国際競争力を高めるため、税制の国際的なイコールフィッティングを確保することが重要だといわれています。こうした観点から平成19年度税制改正で抜本的な見直しがなされました。歴史的な経緯からみれば約40年ぶりの大改正となっています。減価償却制度の改正内容の主なポイントは「償却可能限度額と残存価額の廃止」と「250%定率法の新設」の2点です。

■償却可能限度額と残存価額の廃止

固定資産は、長期にわたって使用するために、取得時の費用は一括計上とせずに、使用する期間に応じ、何年かに配分して費用に計上することになっています(これが「減価償却費制度」の根源です)。その際、一般的には、法人税法が定める法定耐用年数を用いることを基本としており、取得価額をその年数に応じて定率法や定額法で償却しています。
この減価償却費制度に関して、主要国では設けられていない「償却可能限度額(取得価額の95%)」があることが、かねてより国際競争力のハンディキャップになっているとの指摘がなされていました。
そこで、平成19年4月1日以降に取得する減価償却資産については、償却可能限度額及び残存価額を廃止し、耐用年数経過時に1円(備忘価額)まで償却できるようになりました。

■「250%定率法」の新設(創設)

定率法の算定方法として「250%定率法」という考え方が導入されました。これは、定額法の償却率(1/耐用年数)を2.5倍した率を償却率とする定率法により償却費を計算し、この償却率が一定の金額(残存年数による均等償却の償却費)を下回る事業年度から残存年数による均等償却に切り換えて、耐用年数経過時に1円まで償却する方法です。
病医院は、償却可能限度額などの廃止により、会計上の利益は目減りしますが、税金面でのメリットが受けられるほか、減価償却費は現金支出をともなう費用ではないので、キャッシュフローにはプラスに働きます。この改正により、設備投資の費用の早期回収(償却)が可能になり、新規設備投資が促進され、病医院の生産性向上が期待できることになります。

■減価償却資産について

従前の償却方法については、その計算の仕組み自体は維持され、その名称が「旧定額法」「旧定率法」などと改められました。平成19年3月31日以前に取得した資産の場合、前事業年度までの各事業年度においての償却費の累計額が、原則、取得価額の95%相当額(従前の償却可能限度額)まで到達している減価償却資産については、その到達した事業年度の翌事業年度(平成19年4月1日以後に開始する事業年度に限る)以後の各事業年度において、以下の算式により計算した金額を償却限度額として償却を行い、残存価額1円で償却できるようになりました。

なお、平成19年3月31日以前に取得し、平成19年4月1日以後に事業の用に供した減価償却資産については、事業の用に供した日、すなわち19年4月1日以後に取得したものとみなし、新たな減価償却の方法を適用することになります。

2.償却法の新旧比較

医院経営者として、変わっていく医療業界を含む企業関連の減価償却制度を見越して対応をする必要があります。

「数式」をベースとした説明ではわかりにくいと思われますので、財務省で公表されている「償却法の"新旧比較"のイメージ図」(次表)をもとに解説しましょう。
イメージ図をみると、改正後の太線(グレー)は、従来の償却方法である細線(オレンジ)とは異なり、100%償却可能であることを具体的に示しています。
償却率の改正前と改正後の違いは経過年数10年までのグラフ線の違いで、明確に相違を認識できます。

まず、減価償却制度のなかには「特別償却制度」というものが多数存在しています。これは戦後のいわゆる「シャウプ勧告」で戦後新たにスタートした我が国の法人税法体系のなかで、関係団体や業界の要望、配慮、及び行政上の政策的誘導の見地などの観点から、本法規定以外の例外措置が「租税特別措置法」という臨時措置法で設けられ、通常は3年の「時限立法」であったはずの臨時手当が事実上(一部の例外的な事実を除く)恒久化してきたという実態があります。そして、この結果が極めて複雑で、各個別業界とのしがらみから離れられずに今日まできています。
しかし、こうした特別税制措置も「医療界の特殊事情」とも思われる特別償却制度(次表)なども他の業界と同様、過去の事情や論理ばかりでなく、「グローバルスタンダード」の観点から見直される可能性が有るかも知れません。

つまり、今後、こうした「危機感」と「座標軸」をもって医業経営を行わなければ、生き残る病医院にはなり得ないと考えます。今回の「減価償却制度の改正」を機に、医業経営のあり方を見直してみるのもよい機会かと考えます。

まとめ

減価償却制度は「資本の再生産」、即ち、設備更新投資の為の“キャッシュ財源”を確保する意味で、“ゴーイングコンサーン”企業にとっては、会計・税務上大変重要な制度です。そう言う意味で、今回の改正は医業界のみならず産業界全体にとって大変重要な改正であることをこの際、よく理解じていただきたいと思います。
(2009年3月現在)

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