クリニックの経営改善

税理士

佐藤 雅紀

佐藤税務会計事務所 所長

わが国の社会保障財政が逼迫する中、2008年度の診療報酬改定で焦点となっていた診療所(クリニック)の再診料引下げは何とか食い止められたものの、病医院を取り巻く環境が厳しさを増していることには変わりがありません。 そこで今回は、クリニックが生き残り、なおかつ発展していくための経営改善についてのお話をします。

1.経営改善の視点

テーマは「利益の拡大」

ひとくちに「経営改善」と言っても、大きく分けて次のような切り口があり、それぞれについて、取り組むべき項目としてさらに様々な視点が存在します。

収入(収益)を増やす改善
費用を下げる改善
マネジメントによる業務改善

これらの項目は、終局的には「利益の拡大」をいかに図っていくかということに収斂されます。 クリニックの診療効率を上げるための業務内容の見直しといったマネジメントも、効果としては収入の増加または費用の削減につながってゆきますので、簡単に言えば、利益を拡大するには基本的には「収入の増加」か「費用の削減」のどちらかしか方法がありません。

収入を増やすためには、1日あたりの来院患者数を増やす方法、来院患者1人あたりの収入を増やしていく方法がありますが、これらの方法を実践して患者数も増え、せっかく収入が増えても、無駄な費用を支払い続けていては元も子もありません。 費用を削減するには、様々な側面から無駄な費用を支払っていないかをチェックし、可能な限りコストのかからない業務運営を常に心掛けていかなければなりません。

これらの項目について、もう少し詳しく見ていきます。

2.収入の増加を図る改善

収入を増やす方法を考えてみます。

(1) 延べ患者数を増やす
1日あたりの延べ患者数を増やすには、患者の満足度・信頼度・安心感を高め、そのクリニックが診療圏内の患者にとって必要不可欠の存在として認識される必要があります。 そのような存在となるためには、自院の強みを活かして競争力をつけ、競合する病医院に勝てるクリニックにしていかなければなりません。
また、他の病医院と連携し、紹介の促進、機能分化を行うことによって、地域医療を担う中での役割分担を明確にすることで、新しい患者の獲得を狙ってゆきます。 さらにクリニック側としては、患者数の増加に耐えられるよう、診療の作業効率を上げる努力をする必要があります。
これらを実践していくには、定期的に、診療圏分析や、患者の満足度を測るためにアンケートを実施すると効果的です。

(2) 患者1人当たりの収入を増やす
現在の診療報酬体系を把握した上で、場合によってはクリニックの診療科目を見直して、受け取れる診療報酬の枠を広げていくことを検討する必要がありますが、すぐに実践できることとして、診療報酬の回収漏れをなくすための請求漏れや未収金の削減を早急に進め、本来なら受け取れるはずの報酬を回収できていないということがないようにしていくことが考えられます。 また、保険点数の必要要件を具備した点数加算や、自費治療を多く獲得するなどの努力を常日頃怠らないようにすることで、患者一人当たりの収入の増加を図ってゆきます。

コラム Column
診療圏分析の効用

診療圏分析とは、本来自院に訪れるべき患者数について、理論上の推定(予測値の算出)を行うことを言います。
予測値と実際に来院している患者数とを比較し、予測より実数が多くても少なくても、その差異の原因を究明することによって、さらなる患者数の増加を図るための方策を検討しましょう。
診療圏分析は、その過程で自院と競合医療機関をマップ化することによって、設定した診療圏内においてどのような医療の供給体制が構築されているかといったことも副産物として把握でき、非常に有用なものです。 設定した診療圏の人口や交通網は年々変化しますので、例えば国勢調査が行われるごとや、経営に行き詰まっているときなどは定期的に行うことをお勧めします。 そしてこの分析結果を、いかにして収益の改善に繋げてゆくかが鍵となります。

3.費用を下げる改善

費用には、大きく分けて人に関わる費用と物に関わる費用とがあります。

(1) 人に関わる費用
外部に業務委託をしてコストダウンを図る方法と、現状の業務内容の見直しをして作業効率を上げる方法の2つの視点があります。
業務委託の場合には、委託業務の実施状況を測定、分析し、非効率な業務や仕様について定期的に契約内容を見直しすることで、費用の削減を図ってゆきます。
現状の業務改善を行う場合も同様に、院内の職員の業務を定期的に測定、分析を行い効率のよい方法に改善し、現状よりも少ない人員で済むようにしていきます。 特に、患者数が増えて収入が増えるということは、それだけ業務量が増えるということですから、将来の収入増に応じて現状の人員で消化できる事務量(キャパシティ)を拡大していけるような組織・体制や仕組み作りをしておくことは、非常に重要なテーマとなります。

(2) 物に関わる費用
クリニックでは様々な医療設備・医療器具のほか、什器・備品、消耗品を使用しています。
これらの物品に関しては、日々の業務に追われてなかなか余裕がない場合もありますが、時間の許す限り合い見積もりや比較検討、業者との交渉を行って購入単価を低減し、有効利用により購入量や購入頻度を見直すことによって費用の削減を図ります。

まとめ

クリニックの経営改善について、基本的な考え方や実践する際のポイントを述べてきましたが、実際に行動を起こさなければ何も改善できませんし、常に魅力あるクリニックでい続けるためには、経営改善を定期的、断続的に行い、不断の努力を怠らない姿勢が何よりも肝要であることを最後に申し添えて締めくくりたいと思います。
(2008年6月現在)

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