gm マンション考 Vol.19
アイ・レベルの風景
『グランドメゾン杉並シリーズ』では、野外からはもちろん、
屋内からも四季折々の美しさが楽しめるように、風景がデザインされている。

アイ・レベルの風景

人の視線で見える風景をデザインする。
人が立ったとき、その視線の先に何が見えるか。グランドメゾンに暮らす方にも、近隣の方にも、心地よい風景=まちなみをつくりたい。建物から、まちなみへ。新しい時代は始まっている。
語り手紹介
左から、
積水ハウス株式会社 東京マンション事業部
設計課 課長代理 一級建築士 夛田 昇太郎
建築課 課長 一級建築士一級建築施工管理技士 細田 修
販売課 課長 宅地建物取引主任者 伊藤 哲一
企画4課 課長 宅地建物取引主任者 小松 喜生

千戸超の街を、人の視線で計画する。

◼ 東京テラス

  • 「赤レンガ塀」と「既存樹」

    この地にあった「赤レンガ塀」と「既存樹」を継承し、新たな風景を創造。

  • ツリーハウス

    樹木のある風景が楽しめるツリーハウス。

  • 寛ぎのスペース

    眺めを考慮しながら寛ぎのスペースを設置。

  • カフェラウンジ

    視線の先に美しい風景が広がるカフェラウンジ。

 『東京テラス』は、青山学院大学跡地に誕生した総戸数1036戸の大規模マンション。大学当時の赤レンガ塀や既存樹約100本を継承した四季を彩る豊富な植栽計画など、環境創造型プロジェクトとして話題を呼びました。
 「最初にこのプロジェクトに取り組んだ時、約1000戸という全体ボリュームをできるだけ感じさせなくするためには、建物をどのように配置するかとても悩みました。建物を上からではなく、人の目線でどう見えるか?様々な角度から何度も検証することで、最終的な形になりました。エントランスは道路から大きく引きをとり、建物が大きな既存樹越しに見えるようにしてボリューム感を緩和、また建物をV字配棟にすることで、威圧的ではない変化のある景観が生まれます。」(夛田)
「全戸同じ南向きにしないの?と、お客様からよく質問されました。V字にすることで、まとまった緑地帯が生まれたり、変化のある風景ができたり、いいことがいっぱいあるんですよと何度もご説明し、最終的には共感いただけたと思います。」(伊藤)
 「V字の建物は一般的な板状の建物と比べ、建設工事も難しい点が多いのですが、苦労する分、最終的にはいいものが残せると思い取り組んでいます。」(細田)
 「もうひとつのポイントは、この地の象徴であった赤レンガ塀と既存樹を受け継いだことだと思います。まちに愛されたものを継承したうえで、新たなまちなみを創り出すことができたと思っています。」(小松)
 『東京テラス』は、私たちのまちなみにたいする想いを評価いただき、「2006年度グッドデザイン賞」を受賞しました。

2006年度グッドデザイン賞

この地の財産である既存樹を継承する。

 『グランドメゾン杉並シーズン』では、東京テラスで実践したV字配棟や既存樹を生かした景観づくりといった考えを受け継ぎました。計画地は高等専門学校の跡地で見事な既存樹が多数残っていました。その財産をどう受け継ぎ、活かすことができるのかが大きなテーマでした。
 「最初にこの土地を見たとき、校庭にあった見事な既存樹をどう残し、配置するか?そこから考えることが設計のスタートでした。」(夛田)
 「学校当時の開放的だった風景が、壁のような高い建物が出来て遮られてしまうのではないかという、ご近隣の方の不安に対し、どう応えるか?その責任の重さをひしひしと感じました。」(小松)
 「当初から、周辺のまちなみに調和させたいという想いがありました。既存樹をできるだけ残し森の中に建つイメージにしたかったんです。もちろん事業ですから効率を追求する必要がありますが、最初から決意をもって設計すれば、両立することはできると思います。」(夛田)
 「南側は道路に面していますが、もともと歩道がなく、学校の塀がぎりぎりまで建っていました。そこで、建設にあたり『陽だまりの小道』という遊歩道を設けることにしました。遊歩道の位置は、もともと学校の敷地内ですから、既存樹がたくさんあり、その既存樹をなるべく残しながら、遊歩道を設けたんです。」(伊藤)
 「今では、居住者だけでなくご近隣の子どもたちやご夫婦が、花を眺め、幹をさわったりして、楽しそうに歩いている姿をよく見かけます。ご近隣の方にも喜んでいただけてとても嬉しく感じます。」(小松)
 「北側の敷地内にはイチョウ並木がありますが、秋には銀杏を近隣の方が拾いに来られました。敷地内でも壁で閉じず地域に開放された引きを設けることで、地域の方との交流が生まれるようになりました。」(細田)

V字配棟概念図

V字配棟概念図板状の配棟をV字に配棟することで、奥行きのある緑地スペースや風の通りが生まれ、周囲に対する建物のボリューム感も軽減されます。

◼ グランドメゾン杉並シーズン

  • エントランス

    樹々に囲まれた空間が心を癒す、道路から引きをとったエントランス。

  • 石積み

    年月とともに風合いを増し「経年美化」していく石積み。

  • 遊歩道「陽だまりの小道」

    道路に面した場所に既存樹を残して遊歩道「陽だまりの小道」を設置。

 「建設中に、ご近隣の学校の関係の方から、桜の木を引き取って欲しいという申し出があったんです。その学校は改築のために、どうしても思い入れのある桜の木を切らなければいけないという状況でした。たまたまご覧になったチラシ広告で、ここならこの桜の木を大切にしてくれる、と思っていただいたそうです。」(小松)
 「立派な木で運搬に苦労しましたが、ご近隣の協力もあり、移植し根付かせることができました。積水ハウスなら桜の木を大切にしてくれると思っていただいたことは、我々のまちなみに対する想いがすこしづつ浸透しているということで、大変嬉しく思います。」(細田)
 「お住まいになる方にとって快適な住まいであることに加え、地域の方にも喜んでいただけるまちなみをつくりたいと思い取り組んでいます。販売を担当する我々も、このようなグランドメゾンの思想を、お客様にお伝えしていきたいと思っています。」(伊藤)

 『グランドメゾン杉並シーズン』は、都市における自然との共生の新しい方向性を示したとご評価いただき、「平成19年度日本不動産協会業績賞」を受賞しました。
 グランドメゾンに暮らす人、グランドメゾンがあるまちにとって、何が大切か。私たちの設計はそこから始まります。
 土地やまちに尊敬と愛着を払い、今ある自然をできる限り守り残し、新たに手を加えデザインすることで、人やまちに寄り添うより豊かな風景を創り出すこと。
 私たちは、いつも視線の先に、美しい風景がある、豊かな未来が見える、やさしい暮らしを提供し続けたいと思います。

  • 寄付された桜

    寄付された桜

  • 平成19年度日本不動産協会業績賞

※ ここに掲載の情報は2008年時点の情報に基づいています。